2018年01月30日に初出の投稿

Last modified: 2018-02-01

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『ランド 世界を支配した研究所』(アレックス・アベラ/著、牧野洋/訳、文藝春秋、2011)

風邪をひいて自宅に閉じこもっていた事情もあって、『ランド 世界を支配した研究所』(文春文庫)をざっと通読してみた。

先に書いておいた二点、つまりウィリス・ウェアや情報セキュリティ関連の話と、科学哲学に関連する話は、はっきり言うと両方とも成果がなかった。ウィリス・ウェアの名前は本文に二回ほど出てくるが、かろうじて「言及」と言い得るていどのもので、人物像や具体的な仕事の内容は描かれていない。また、1940年代から1970年代くらいにかけてアメリカの大学を席巻していった分析哲学や科学哲学の普及に、冷戦や大学行政や社会情勢がどうかかわっているのかということも、一般人や大学関係者が RAND Corporation をどう見ていたのかという視点が欠けていて、僕の目的からするとあまり参考にならなかった。もちろん戦後の大きな事件や出来事とのかかわりについて多くを知ることはできたが、その場合でも、どうして RAND の出身者は同じ数理モデルに基づく合理化を信奉し、共有したのかという理由は分からないまま、簡単に言えば伝手だけで職場に採用されたり提案が採用されたりしていく。これではやっていることと信奉していることが矛盾している。そのあたりを具体的に彼ら RAND 出身者たちに語らせてもらいたかったとは思う。RAND では、この著作に不満があって著者を出入り禁止にしたらしいが、それはそうだろう。この内容だと、理屈は合理的でも採用プロセスは情実だったということになるからだ。

そういうわけで、長大なストーリーのノンフィクション作品としては興味深く読めたものの、たぶん再び読むことはないと思う。それに、雑な印象になるが(そして原著に対する一つの批評だったと訳者が言及しているが)、この本は6割くらいがウォールステッターの評伝と言っていい。その部分だけを抜き出して、ウォールステッターの本として出してもよかったのではないか。

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