髭の地図(grain map / face map)を作ろう

自分で髭を剃る自剃りの準備として髭の地図(grain map / face map)を作成してみましょう。

河本孝之(KAWAMOTO Takayuki)

Contact: takayuki.kawamoto@markupdancing.net

ORCID iD iconORCID, Google Scholar, PhilPapers.

First appeared: 2023-03-04 21:54:55,
Modified: 2023-03-08 11:20:42,2023-04-17 16:18:29,2023-05-04 13:21:26,
Last modified: 2023-05-25 14:32:30.

はじめに

多くの方は「自剃り(self-shaving)」、つまり自分で(大半は自宅で)髭を剃っているわけですが、特に剃刀を使って髭を剃る場合には、顔を切ってしまう心配があります。僕は T 字剃刀を20代の前半から今年で30年以上は使ってきて、T 字剃刀で切り傷を作るなんて1年どころか5年に一回もありませんでした。しかし替刃式の直刃剃刀を使うようになって、おおよそ3月1日で二ヵ月弱の経験ですが、それでも既に三回ほど顔を切ってしまっています。何らかの止血処置をしなくてはいけないほどの事態にはなっていませんし、切ったとは言っても痛みやヒリヒリした感触はありません(アフターシェーブ・ローションを顔全体に塗布しても、特に切った場所での刺激は感じませんでした)。しかし顔を切ってしまうと、少なくとも数日は同じ個所に剃刀を当てられなくなりますし、人前に出る仕事の方にとっては困るでしょうから、できれば避けたいところです。そのための工夫として、もちろん事前に髭や肌を濡らしたり熱いタオルで温めたり、あるいはプレシェーブ・オイルを使うとか、剃刀自体の運行としてなるべく寝かせて剃るとか、色々と言われています。そして、ここでご紹介する「髭の地図(grain map / face map)」を自作するというのも、一つの工夫としてご紹介できると思っています。

剃刀の運行を説明するために顔写真やイラストへ矢印などを示した図は、もちろん昔から理容師に向けて書かれた教材とか参考書には出てきます。そういう解説のために顔写真やイラストを使って図示するのはいいとして、では自分自身の髭を自分で剃るにあたっては、そういう解説の図だけを覚えておけばいいのでしょうか。そうではありません。なぜなら、髭というものは人によって、あるいは同じ人でも年齢によって、生える場所や生える速さや生える向きが違っているからです(年齢で髭の生える向きが大きく変わったりはしませんが、その代わりに太ったり痩せたり、あるいは皮膚がたるんだり老化してくる影響から、結果として髭の向きも変わってしまう可能性はあるでしょう)。したがって、自分の髭がどういう場所に生えていて、どういう向きに生えているかは、自分で調べて把握しておかないといけません*。プロの理容師は、初見のクライアントが来店して髭を剃ることになっても、わざわざ剃るくらい生えているのですから、少なくとも眼で見て生えている場所や生えている向きを把握しながら剃れるでしょう。しかし自剃りでは、鏡に写った自分の髭を自分から見える範囲にしか顔を動かせないという決定的な制約があります(これを「欠点」と言っていいかどうかは、自明ではないかもしれませんが)。したがって、理容師が他人の髭を剃るために顔を近づけて細かいところを見ながら剃るような動作が自剃りでは難しい場合があるので、自分で自分の髭の様子を知っておき、剃っている様子を自分自身で見ながら剃刀を当てるというよりも、或る程度は自分の手の動きや角度の自覚と、剃刀が当たっているときの自分の肌の感覚だけを頼りにする必要があるでしょう。そういう剃り方をする場合に、自分の顔に髭が伸びてくるパターンを事前に把握しておくことは、事故を防ぐために有効だと言えます。

*また、丁寧に鏡で自分の髭を観察すると分かりますが、一本だけ周囲の髭とは違う向きに生えているような場合もあります。そういう例外的な向きに生えている髭があるため、どうしても一律の方向へ剃ると髭を剃り残してしまうわけで、そういう例外的な向きに生えている髭をマッピングしておくことにも意味はありそうです。どこまで細かくマッピングするかというのは、やはり人によって例外的な向きに生えている髭がどのていどあるかによって違うでしょうから、一律には決められないでしょう。下の写真は私の左頬を拡大した一部分ですが、黒い髭や白い髭があって、それぞれ生え出し方も生えてゆく向きも微妙に違っていたりします。

my own heard

なお、「SHAVE MAP」というのを紹介しているブログ記事を見つけました [Yan-tan, 2017]。これも同じ趣旨で作成されたマップのようです。細かい話ですが、英語で “map” という単語には動詞として「今後の作戦を立てる」という意味もあるので、“map (mapping)” という言葉には、髭の生え方をただ静的あるいは記述的に「こうなってます」と図示するだけではなく、「こう剃っていこう」という予定や意志を表すような意味合いも含まれると思います。それは、まずもって矢印の向きとしては順剃りの計画になるわけですが、最初に順剃りの向きが分かれば、どう剃るのが横剃りで、どう剃るのが逆剃りなのかは分かりやすいでしょう。

そして、自分自身の髭が生える正確な向きを把握しておくと、実際に剃るときの「順剃りWTG: with the grain)」、「横剃りXTG: across the grain)」、そして「逆剃りATG: against the grain)」という三つの運行方向で正確に剃刀を当てられるため、効果的に髭が剃れるという利点もあります。実際にあなたの髭が生えている向きとは違う方向に剃ってしまうと、WTG, XTG, ATG の全てで、期待していたのとは違う結果になるでしょう。つまり、WTG である筈なのに XTG で剃れば肌を傷める危険があったり痛みを感じたりしますし、ATG である筈なのに XTG で剃れば十分に剃れないという結果になります。そして、XTG だと思って実際には WTG や ATG で剃ってしまうと、これもまた剃り方が足りないか、いきなり深く剃ってしまうことになります。こういうミスマッチによるトラブルを防ぐためにも、やはり自分の髭がどう生えているかを正確に知っておいて損はないでしょう。

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髭の地図とはどういうものか

こういう図を作る必要があることは分かっていましたが、参考になる資料とかメディアがないものかと探していたところ、Razor Emporium という通販サイトを運営している Matthew Pisarcik さんや、Shave Nation Shaving Supplies という通販サイトを運営している geofatboy さんが丁寧な解説ムービーを公開していました。そこで、まずは彼らの解説をご紹介します(他にも、同じアプローチを Eric Latta さんも YouTube の動画として紹介しています [Latta, 2019])。僕が実際に作成しているマップの考え方や作り方も、おおよそ彼らの説明している考え方や手順に準じています。まずは Razor Emporium のマットさんの解説からご紹介しましょう。

grain mapping

Hey everyone. Matt Pisarcik from Razor Emporium dot com, today coming to you with two weeks worth of scruff and stubble on my face that's right. You haven't seen me since my last shave off where I shaved my face, and I went ahead and shaved my goatee since then I decided to take a hiatus to do you a favor and talk all about “grain map.” What is a grain map? You may ask. So, you may have heard the term throw it around you may have heard people say, you know, you need to go with the grain or against the grain or whatever, and you're asking yourself, “I don't even know what the grain is,” if you make a mistake and go online, you may find a chart that has a generic guy's face just showing random arrows of what direction the average guy's beard may or may not grow well. Maybe you're average, maybe you're above average, maybe you're below average, but I know you're not average. You are you. You're a unique guy and so the best way to find out is to do this, you need to take a little time maybe not two weeks you probably could have told what kind of direction is with just after one week, but you need to take a little time and grow out your facial hair and really look at it. Now I've been doing this for two weeks and get into the point where I cannot wait to shave that's it and so scruffy and itchy, but that's another story. I have plenty of nice hair lengths where I can finally see some direction and some spiraling, and if you're trying to do a with the grain shave. What is with the grain? Because with the grain could be down on your cheek but check this out, I got this weird like spiral thing here where it starts to go sideways and this is going up. So, we're gonna fill out one of these together you can find this on our website at https://www.razoremporium.com/grainmap/, and we'll also have a link for that in the description below.

みなさんこんにちは。Razor Emporium のマット・ピサシックです。今日は二週間ほど髭を生やして汚い無精ひげを蓄えてから、みなさんにお目にかかっています。そう。私が髭を剃ってから、かれこれ二週間は動画を配信してなかったわけですね。最後にヤギ髭を剃ってから、私は少し髭を剃るのを中断しようと決めました。それは、“grain map” をすっかり説明するのに都合がいいからです。grain map って何だろう? そう思うかもしれませんね。そこで、あなたは周りの人たちから、彼らがこんなことを言ってるのを聞いたことがあるかもしれません。あなたは髭を剃るときに順剃り(with the grain)したり、逆剃り(against the grain)しなくてはいけないとかなんとか。それを聞いて、“grain” って何のことなんだろうと思ったりします [grain だけだと「木目」とか「米粒」という意味しかない]。そして、髭剃りがうまくいかなかったときにオンラインで調べてみると、平凡な男性の顔に色々な向きの矢印が描かれた図を見つけるかもしれません。それは平均的な男性の髭が生えたときに、そういう具合に生えたり生えなかったりする向きを示してします。あなたは、その図のような向きに髭が生えるのかもしれませんし、もっと上に向かって生えるのかもしれませんし、あるいは下へ生えるのかもしれません。でも私は、あなたの髭はきっと平均的な向きに生えたりしていないことを知っています。あなたはあなたです。あなたは他の誰でもありませんから、髭がどう生えているかを知る最もよい方法は、自分の髭の生え方を知るために二週間も髭を生やしてみる必要はないかもしれませんが、いずれにしても髭が生えてきて、自分で眺めてみて髭がどう生えているかを確かめられるには、或る程度の時間がかかるでしょう。私は二週間かかって髭の生え方が分かるようになりましたが、これは無精ひげの汚さや痒さに耐えられなくなったからでもあります。まぁ、これはどうでもいい話でしょう。ともかく十分に髭を確かめられるだけの長さになって、髭の向きとか曲がり方が分かるようになりました。これが分かれば目に沿う(with the grain)という意味も分かります。さてでは、目に沿っているとはどういうことでしょうか。それは、あなたの頬から下に向かって髭が生えているかもしれませんが、確かめてみてください。私の場合は渦巻のような変な向きになっていて、ここから始まって横向きになって、ここで上に向かっています。ですから、こういう観察をまとめるためのこんな絵を https://www.razoremporium.com/grainmap/ で手に入れてください。動画の解説文にもリンクを張ってあります。

[Pisarcik, 2018; 本稿は解説や紹介が目的なので、フェアユースの範囲内として動画から訳出し、映像の一部を利用しています]

grain mapping

次に、geofatboy さんの解説もご紹介します。地図の呼び名は違いますが、考え方はほぼ同じだと言ってよいでしょう。

face mapping

Greeting gents. I'm geofatboy for shavenation.com. If you want to get the best shave of your life, you know what you need to do? You need to map out your face. Do you know what that means? That means, figure out what direction your beard grows in. A lot of people will say about my videos, “Oh it's easy for you. You shave with the grain, then across the grain, then against the grain, because that's the way your beard grows. My beard doesn't grow like that” I would say that everyone's beard is like a fingerprint. No two are alike. So, when I do a video, all I'm doing is demonstrating the easiest way to shave it. We don't want to make it too complicated when you're first starting out, so we just want to go with the grain, across the grain, against the grain. Now, my beard, it doesn't grow like that, and yours doesn't either. I'm sure of it. Check and see. How do you check? You feel around you let your beard grow, so it's a little bit substantial, and you can feel which way it's growing. I'll go like this, I can feel that my hand is... with the grain, this way, not straight down, but this way. If I go against it, that's when I can really feel it. It doesn't go against like that, but it does like this on an angle. Okay. Same thing on this side, it doesn't grow straight down. It grows this way almost across. And then, my mustache, straight down, you want to just feel around. I think most people's mustaches they do grow straight down. You may have one that is all right, it goes in a strange direction. But most people the majority straight down. And then, here also pretty much straight down. But on the neck, it gets really crazy. And, what you should really do is draw yourself a picture of a Martian like this...

みなさん、こんにちは。私は shavenation.com の geofatboy です。あなたの暮らしでベストな髭剃りを求めているなら、何が必要でしょうか? それは自分の顔をどう剃ればいいか、計画を立てるということです。計画を立てるとはどういうことでしょうか? それはつまり、あなたの髭がどういう向きに生えているかを理解するということなのです。私のビデオを観た多くの人たちは、「ええ、あなたには簡単なことでしょう。あなたはいとも簡単に順剃りして、横剃りして、そして逆剃りできている。なぜなら、あなたの髭はそういう剃り易い向きで生えているからです。私の髭はそんな風に生えていないですよ。」と言うでしょう。ここで私は、誰の髭であろうとそれは指紋のようなものだと言っておきましょう。つまり、あなたと同じ髭の生え方をしてる人なんていないのです。ですから、私がビデオを撮影するときは、いちばん簡単な剃り方をわざと実演しているわけです。初めて自分で髭を剃るときには、誰であろうと面倒なやりかたを望まないでしょう。ですから、ともかく順剃りして、横剃りして、それから逆剃りするわけです。でも、本当は私の髭はそんな風に生えてはいませんし、あなたの髭もそんな風に生えてはいないでしょう。それは分かっています。だからこそ、自分で確かめてみましょう。では、どうやって確かめるのか? 手で自分の顔を触って感触を得てください。すると、わずかに髭があると分かり、どの向きに髭が生えているかを感じられる筈です。そうやってみると、私自身で手を当ててみると・・・これが順剃りの向き、この向きですから、真っ直ぐに下がっているわけではなく、この向きです。そして逆の向きを試してみると、自分でどちらが髭の生えている向きと逆なのかが感じられます。私の髭はこれが逆剃りの向きではなく、この角度が逆剃りの向きになっています。いいでしょう。では、こちらの側で同じようにやると、私の髭は真っ直ぐ下へ伸びてはいません。そうではなく、こんな具合に横へ伸びています。そして口髭は、下へ伸びていて、こんな具合にあなたも手探りしてください。多くの人の口髭は下へ伸びています。あなたの髭もそうなっているかもしれませんし、変わった向きに伸びているかもしれません。でも、多くの人はたいてい下へ伸びています。そうして、口の下の髭もだいたいは下へ伸びていますね。でも私の首や喉の髭は、なんだか変な向きへ伸びています。そうしてから、あなたは実際に自分の髭がどう生えているかを、こんな火星人の絵として描くことになる筈です・・・。

[geofatboy, 2023; 本稿は解説や紹介が目的なので、フェアユースの範囲内として動画から訳出し、映像の一部を利用しています]

face mapping

動画を最後まで観ていただければ分かりますが、geofatboy さんは髭の向きを確かめるために、手探りの他にも、ティッシュ・ペーパーを当てる方法を紹介しています(Matt さんは double-edged の替刃を袋に入れたまま当てていますが、あまり安全とは言えません。プラスティックのカードなどを使う方がいいでしょう)。ティッシュ・ペーパーが髭を擦って、音の大きさでも確かめられるというわけです(生えている向きと逆に擦ると、音は大きくなる)。実際に髭の地図を描く際には、もちろん絵心がある人は自分で自画像を描いて髭の生えている向きを矢印などとして書き込めばいいでしょうし、geofatboy さんが紹介しているように自撮りした写真を印刷して使ってもいいでしょう。

ここで geofatboy さんの説明に幾つか補足しておきましょう。まず第一に、髭の地図を作るために自分の髭が生えている向きを確認するという作業は鏡を見ながらやった方がいいということです。geofatboy さんも鏡を見ながら動画を撮影していると思いますが、動画を観ている方は、いつもの撮影場所で説明しているということしか分からなければ、そこで鏡を見ながら作業しているという点に気づかないかもしれませんから、敢えて書いておきます。鏡を見ながら確かめた方がいい理由として、鏡に近寄って丁寧に自分の顔を眺めると、そもそも髭が生えていない箇所を簡単に見つけられるからです。もちろん人によって状況は異なりますが(だからこそ、自分自身の髭の地図を作った方がいいわけです)、たとえば僕の場合は首や喉の髭は細くて少ないですし、咽喉ぼとけから下には髭どころか産毛も殆ど生えていません。また、頬も全体に髭が生えているわけではありませんし、唇の下から顎にかけては中央付近しか髭が生えていないのです。それから、鏡を見ずに確認しようとすれば、それこそ顔全体を確かめなくてはいけないと思えるので、上から下へ複合機のスキャナみたいに機械的に手を動かして髭の生え方を感じ取るという作業が必要になります。でも、鏡を見ながら作業すれば、そんな無駄なことをする必要はありません。目で見て髭が生えているところを確かめたらいいだけです。そして、手で触るだけでは、何本かの髭だけが奇妙な向きに生えていることが分からない場合も多いと思います。それこそスキャナのように精密に顔へ手を当てて感じ取りながら作業しないと、何本かだけ周囲の髭と別の向きに生えているなんてことは気づきにくい筈です。

第二に、これは言うまでもないと思いますが、髭が生えてきていて剃ろうとする直前に確かめた方が良いということです。剃らなくてはいけないほど髭が生えてきているときに確認した方が、髭の生え方が分かりやすいからですね。髭を剃った直後に確かめようとしても、剃ったわけですから、髭が短くなっているせいで方向を確かめるのは難しくなります。どちらの向きに手を当てても似たような感触しかないという可能性があるため、これまで自分で髭を剃ってきた経験と記憶からだいたいのことは分かると思いますが、一部だけ違う向きに生えている髭を鏡で改めて見つけるという作業は難しくなるでしょう。

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留意したいこと

ここでは、各論あるいはそれぞれの状況や道具などに応じて選択すればいいことを幾つか取り上げて議論しておきます。

まず geofatboy さんの動画では、実際の顔の様子を髭の地図として描いてから、まさに自分が髭を剃るときと同じく壁に地図を貼り付けて鏡で眺めると説明しています。でも、そのやり方には問題があると思います。なぜなら、鏡に面した、地図を貼り付けられる壁や柱が近くにあるとは限らないからです。たとえば、鏡に面した壁が 2m ほど離れているとしたら、2m 離れた場所に貼り付けられた絵の矢印などを眺めるには、たぶん視力が 1.0 くらいは必要でしょう。髭を剃るときに眼鏡をかけていられるとは限らないので、眼鏡を外して 2m 先の絵を見て何が描いてあるか分かる視力を誰でも維持できるとは思えません。したがって、髭の地図は近くで眺めながら確認できる方がよい筈であって、鏡の近くに貼り付けたり、あるいは段ボールなどに貼って立てかけるにしても、鏡に近くなければなりません。

次に、髭の地図をどう作るかという点についてですが、自分で顔のイラストを描くとしても、あるいはスマートフォンなどで撮影するとしても、実際の顔の様子を地図のベースとして用意するか、あるいは鏡面(左右が逆)の様子を用意するかという違いがあります。鏡に向かい合った壁に貼り付けるという前提なら、鏡で自分自身の顔と髭の地図とを見比べるわけですから、どちらも同じように見えている方がいいわけなので、鏡面での見え方になっている左右が逆のイラストや写真として、地図のベースを用意した方がいいかもしれません。つまり、スマートフォンのサブ・カメラで自撮りすると左右が逆になったりしますが、そういう写真を使うわけです(イラストとして自分の顔を描く場合は、最初から左右を逆に描く人なんてそういないかもしれませんが)。ただし、これは一概にそうするべきかどうかは決められないかもしれません。なぜなら、多くの方がもつ空間認識能力なら、左右を逆に描いた図や写真を見ても、実際にそれを使ってどうすればいいかという場面で左右を戻して行動できるからです。つまり、左右が逆になっている図を見ながらでも、逆向きに(正しく)髭を剃れる人だって多いからです。鏡面の図や写真では、左右が逆になっているだけであり、まさか上下が逆になったりはしていませんから、どういう向きに剃ることが順剃りであって、どういう向きに剃れば逆剃りになるかを、実際の絵柄であれ鏡面の絵柄であれ、多くの方は正しく把握して手を動かせるでしょう。他人から見た向きとしての髭の地図よりも、自分が鏡を見ながらどう手を動かすかが描いてある地図(その場合は鏡面で作ることになります)の方がいいという方もいる筈です。

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僕の髭の地図

最後に僕自身の髭の地図をご紹介しておきます。もちろん何度も強調しているように、これは僕の髭の生え方であって、あなた自身の髭の生え方ではありませんし、僕にはあなたの髭の生え方は分かりません。それぞれ自分で調べるしかないのです。

my face mapping 僕の髭の地図(黄色い範囲は髭が生えていないところ)

上の図が僕自身の髭の地図です。スマートフォンで自撮りした、左右が逆になっている鏡面の写真ではなく実際の顔の様子を画像として用意します。getfatboy さんの動画では、少し上を向いて喉の様子も見える写真を一枚だけ使っていますが、僕は正面から撮影した写真と、かなり上を向いて喉が広く見える写真の二枚を用意しました。かなり顔を上に向けても顎の下が見えない人も多いでしょうから(逆に言えば、すぐに顎の下が見えるのは顔や首が太ってるからでもあります)、無理に一枚で済ませる必要はありません。これらの写真に、肌がなるべく白くなるようなエフェクトをかけられる編集ソフトを使って加工します。Photoshop であれば、グラフィック・ペンや色鉛筆などのフィルターで写真の色の階調をわざと雑にしてから輪郭の検出といったフィルターを適用すると、肌の色が抜けて白くなります。スマートフォンでも線画風などのエフェクトが適用できる編集ソフトはたくさん出ていますから、後で矢印などを追加しても見えやすいように加工しておくと良いでしょう。僕は、Android のアプリケーションで “DeepSketch” というアプリケーションを使いました。顔の画像を用意したら、自分の髭の生え方を丁寧に確認しながら、まずはノートやメモ帳にでも記録しておきます。或る程度の部分を調べたら、どれだけ詳しく髭の向きを描き込むかは、もちろんみなさん自身の方針で決めてください。周囲の髭とは違う変な向きの些細な髭は描かなくてもいいとか、逆に可能な限り詳細な地図を用意したいとか、色々あって良いと思います。後から調べ直して詳しく描き直してもいいですし、詳しすぎて分かりにくいと思えば地図を作り直せばいいわけです。僕の地図では、Photoshop CC 2023 で矢印やら髭のない箇所を描き込んでいますが、この程度の作業に、年間の契約料金が10万円近い(企業版だとアカウントの管理機能があるため、個人で契約するよりも高い)Adobe Creative Cloud など必要ありません。無料で使えるソフトをスマートフォンにインストールして矢印を描いても問題ないでしょう。そうして、完成した画像ファイルをもとに適当な大きさの紙に印刷してもよいでしょう。あるいはスマートフォンに画像を取り込んでおいて、髭剃りのときに近くへ置いて画面を確認しながら剃ってもいいでしょう。

ただし、こういう地図を常に使うか、あるいはいつまでも使うのかと言えば、それは分かりません。実際、僕は既に頭の中に入れてしまって、髭を剃るときにこういう地図は見ていません。というよりも、地図を作る手順の途中で、具体的な髭の生え方を相当に詳しい箇所まで覚えてしまったので、印刷したり画像としてスマートフォンに入れたりはしていないというのが実情です。それから地図の更新を考えるべきかどうかは、もちろん地図に従って剃っていても剃り残しが多いとか、あるいは順剃りの筈なのに痛い箇所がある(何本か違う向きに生えていることに気づかなかった)とか、幾つかの理由で検討すればよいでしょう。少なくとも、数ヵ月や一年で変わるわけではありません。したがって、髭の地図を作ってみましょうとは薦めていますが、このような髭の地図を印刷して洗面室に置くべきであるとまでは考えていないのです。しかし、確かに髭の地図を作ってみる手順で色々と発見したり気づくことがあり、地図を作る作業そのものは有益であり、お勧めできます。

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参考

書誌情報は、「References - Shaving」のページにまとめてあります。こちらをご参照ください。

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