Microsoft Basic Optical Mouse の分解掃除

河本孝之(Takayuki Kawamoto)

Contact: takayuki.kawamoto (at) gmail.com.
(You can send me more secure email with my public key to another email address.)

ORCID iD iconORCID, Google Scholar, PhilPapers, Loop.

First appeared: 2022-08-04 12:09:40,
Modified: [BLANK],
Last modified: [BLANK].

なんでいちいちマウスの分解掃除について哲学者が解説しなきゃいけないのか。もちろん、そんな使命も職責もありはしないが、実際に自分がマウスの分解掃除をしようと思い立って調べてみると、世の中に公開されている大半のウェブ・ページや動画は、オタクが作ってるからなのか、それとも修理業者が公開してるからなのか、肝心の「分解」や「組みなおし」の手順を殆ど説明しない。オタクの独りよがりな自称「解説」がクズであることは常識なので驚くには値しない。そして業者の解説については、ここを丁寧に説明すると業者は売り上げにかかわるので事情としては分かるが、しかしそれは企業人の理屈としてさもありなんと解釈しているだけであって、何も僕が支持したり同意したり、安っぽい「リアリズム」として是認したいわけでもない。はっきり言えば、その程度の手順を説明して客が減ることで成立しなくなる事業なんて、業種として成立していること自体が社会的な不正義である。凡人や無能が人に何かを隠すことで情報の非対称性や優位を維持して金を稼げる社会なんておかしいのだ。そういうわけで、哲学者である以前に「善良な」大人の一人として、ちゃんとしたページを作って提供したいと思ったわけである。何も高邁な目標や意図などないし、凡人に知恵を授けてやろうなどといった、いかにも哲学者っぽい無礼で傲慢な心境にもない。単に僕自身が調べていて、なんで丁寧に説明しないのかと、オタクや業者どもに腹を立てたからにすぎない。

分解

僕が使っているのは、昔から愛用して何個か買い替えてきた、マイクロソフトのオプティカル・マウス(Microsoft Basic Optical Mouse)だ。安くて、下らない機能がなくて安定した動作をする。これも昔から言われていることだが、マイクロソフトは UNIX や GNU/Linux のコミュニティからは「悪の帝国」として嫌われているが、キーボードやマウスなどのハードウェア製品については高い評価を得ている。実際に安くて無駄のない製品が多いからだ。ここでマウスの良し悪しや僕の好みを語る余裕も必然性もないので、それは別の機会に Notes にでも書こう。(本来、この記事そのものも Notes にでも簡単に書いておけばいいのかもしれないが、今回は複数の画像を使って説明する必要がある。Notes はそういう込み入った話をするためのコンテンツではないし、そもそも複数の画像をアップロードするようには作っていない(Notes の記事だけは、僕が自分で開発した CMS で投稿している。)

マウスは道具であるし、毎日のように使っていればなおさら、どれだけ清潔な人でも自分の手垢が隙間に溜まってきたり、あるいは室内の埃などが付着してしまう。したがって、慎重な人であれば毎日のようにマウス本体の表面を拭いたり、ケーブルに付着する埃をぬぐったり、マウス・パッドも拭いていることだろう。しかし本体の内部に入り込む埃などは、やはり分解して掃除しなければどうにもならないし、マウスの挙動にとって内部の影響は見えないからこそ積極的にメンテナンスしたいものである。僕が初めてオプティカル・マウスを使い始めた頃は、外観からして分解できるのかどうか分からなかった。世の中にはユーザが分解できないように作ってある製品も多いため、廉価品であればなおさら、壊れたら買い替えるといった扱いをした方が手っ取り早いと割り切ることもできる。しかし、マウスはいくら安くても1,000円ていどはするものだし、そもそも買いに行く手間の方が無駄だ。さらに昨今は sustainability から派生して repearable であることが良いとされており、Apple が自社製品の修理キットを業者ではなく一般ユーザへ販売したりレンタルするまでになったことはご存じであろう。このようなわけで、試しに分解できないものかと調べていると、オプティカル・マウスのような廉価製品でも分解できることが分かった。

分解するには、マウスの底面に貼ってあるバーコードや型番などが印刷されたシールを(ケーブル側を「」、マウスを使う掌側を「手前」と呼ぶ)手前の方から剥がしてゆく。爪で剥がしてもいいが、メガネのメンテナンスなどで使う精密工具のマイナス・ドライバーでもいいだろう。すると、すぐにネジ穴が出てくる。ネジ穴が全て見える状態までシールを一時的に剥がしたら、今度はプラスのドライバーでネジを外そう。

さて、分解するときに多くの人が心配するのは、ケースを外すときにプラスチックの部品を誤って割ったりヒビを入れてしまわないかという点だろう。このあたりも、オタクがよく公開しているページなどでは、何の問題もないかのように「ケースを取り外します」だの「分解しましょう」だのと一言で済ませている。この場合も、ネジを外したらマウスの手前側は表と裏(掌が当たる方を「」、マウス・パッドの側を「」と呼ぶ)に何の力も加えることなく分離するが、マウスの奥は分離せずに残る。この状態で、多くの初心者は不安を感じるはずだ。ここから何をすれば表と裏が外れるのか。

それは、まず上記の写真で赤く囲んである箇所が「スナップフィット」になっている事実を知るといい。逆に、分解してあったケースを再び接合させるときに「パチン」と嵌め込むようになっているのだ。もちろん、最初にこういうことを説明しておかないと、間違った向きへ力をかけたらスナップフィットの接合箇所が割れてしまうかもしれない。そこで、ケースの表と裏の真ん中あたりをそれぞれ両手で持ち、表のケースをやや手前に引くような力も加えながら、蓋を開くような調子でゆっくりと表側に回転させるのがいい。機材でも、いったん手前に軽く引いてから上にカバーを押し上げるような操作で開くようになっている蓋があるのをご存じなら、あの要領と同じだ。このとき、マウスのケースは開けようとするスナップフィットの反対側である手前の端を持ってはいけない。スナップフィットの個所から手、つまり力を加えるポイントが離れすぎると、梃子の原理で力が簡単に加わりすぎてスナップフィットを割ってしまう恐れがあるからだ。もちろん、逆にケースを組み戻すときも同じことだが、ここは慎重に作業したい。

冒頭に戻る

内部の掃除

スナップフィットがうまく外れたら、マウスの分解は終わりだ。マウスは製品によって中の部品や組み立て方が違うので、これはあくまでも Microsoft Basic Optical Mouse という製品での話だが、上の写真にあるとおり、基板とホイール(ミドル・ボタン)は最低でも中に組み込まれているだろう。僕は無線のマウスを使わないので分からないが、ワイヤレスのマウスだと内蔵のバッテリーか乾電池から基板への配線などがあるから、上記の写真よりも複雑な内部構造になっている筈だ。なお、上の写真では下に切れてしまっているが、基板から放出されるレーザー光線を反射する透明な部品もある。

そして、掃除については特に書くことはない。基盤を外せるわけでもなし、内部に溜まったゴミを取り除くだけだろう。もちろん、マウスはいちおう電子基板という精密機器を搭載した電化製品でもあるから、基板に洗剤をスプレーして拭こうとする人はいないと思うが、念のため洗剤とか、あるいは洗剤が付いた掃除用のシートなどは使わないようにしよう(ホイールの汚れを拭くくらいなら、使ってもいいとは思うが)。それよりも、こういう掃除を他の機器でもやる習慣があるなら、家電量販店やホーム・センターで販売しているエア・ダスター(gas duster)を持っておくことをお勧めする。そして、エア・ダスターで基板やマウスの内部から埃を飛ばしてしまうのが簡単である。エア・ダスターはガスが無くなると買い替える必要があるため、買い替えるのが面倒だというなら、もちろん USB 電源や電池あるいは充電式のエア・ダスターや業務用のエア・コンプレッサーなどもあるが、それは好き好きだ。あるいは、カメラのレンズを掃除するときに使うブロアー(ブロワー, 英語では “lens blower,” “air blower,” “cleaning blower” などと色々言うが、なぜか英語版の Wikipedia に全く解説がない)という手動で風を送る道具なら、数百円で売っていたりする。

冒頭に戻る

組みなおす

冒頭で書いたように、マウスの分解掃除について書いている記事の大半が、この組みなおしの作業を全く説明しないで「解説記事」やら「解説動画」と称してクズみたいなものを世界中にバラ撒いている。そんなものが多くの初心者(初心者は、本当に自分がボタンを一つ押し間違えるだけでコンピュータが故障するかのように思っていたりするものだ)にとって役に立たない、ただのオタクの自意識プレイや裸踊りに過ぎないのは自明である。われわれのような真の IT 人材や、こうして公にウェブサイトを公開している者には、こういうクズを量で駆逐することは難しくても、読んでもらえば確実に水準や品質でゴミのようなページを圧倒的に凌駕するだけのリソースを提供する社会的な役割(責任や使命とまで言うつもりはない)があろう。

ともあれ、組みなおしにあたっては、もちろんマウスの内部構造を元に戻さなくてはいけない。オプティカル・マウスだと、基板、ホイール、レーザー光線の屈折部品という三つだけしかないため、非常に簡単だ。マウスの両側に余計なボタンがあったりすると、そもそも分解できない部品もあろうが、もっと複雑だろう。でも、そこは知らない。自分で選んだ道具のリスクは自らで負うべきだ。 ともあれ、基板は裏表もはっきりしているし、マウス・ケーブルを直結しているので、元に戻す場所は分かりやすい。ホイールは軸の太さが両側で異なるため、これも向きを間違えることはない筈である。そして、基板やホイールなどの部品を取り付ける順番についても、特に考えるようなこともないだろう。ただし、レーザー光線を屈折させる透明の部品だけは、取り付ける向きが決まっているので注意したい。それは、基板から出たレーザー光線が直角に曲がってマウスの底から出てゆくように途中の部品を置くことだ。これは、そういう体裁で置けばレーザーが正しく屈折するという向きにしか部品を固定できないようになっているので、実は少し触っていれば分かりやすい(製造工程でも、作業するスタッフが間違えないように設計されているからだ)。

それらの部品を組んだら、いよいよマウスのケースを閉じる。既に書いたとおり、この逆の工程を全く説明してくれないせいで、分解したはいいが元に戻すときに困ってしまう人もいるだろう。もちろん、分解するときと同じくスナップフィットを嵌め込む作業が最も慎重を要するが、外したときの要領を覚えていれば、嵌め込む作業についても同じ考えで済む。

ただし、分解するときと違うのは手を使う位置だ。スナップフィットを嵌め込むときは、斜め上から表側のケースを押し込むように力を加えるのだが、スナップフィットのちょうど上にあたる箇所を押しながら力を加えた方が部品を割ってしまうリスクが減る。これも分解するときに書いたとおり、表側のケースを押し込むだけだと一方向からの力だけが強くなりすぎるからだ。スナップフィットの上からも力を加えることで、嵌め込みやすくなり、単純に一方向からの力でグイグイと押し込むよりも簡単に済む。簡単に済むということは、力を加える大きさや時間も少なくて済むのだから、スナップフィットの部品が割れてしまう危険を回避できるわけである。もともとは工場で作業員が何も考えず〈機械的に〉作業しても組みあがるように部品が設計されたり、組み立てのマニュアルが作られて研修している筈なのだから、京都の飾り職人みたいに何年もの修行を要する精密な手の動きや力の加減が求められる構造になっているわけがない。もちろん、舐めていると本当に部品を壊してしまう恐れはあるが、理由もなく怖がることはない。

スナップフィットの箇所を組み終わったら、あとはケースの中央付近をパチッと音がするまで押し込む。これは、レーザー光線を屈折させる透明の部品を正しい位置へ固定するために行う。こうして、やっとケースの両面が閉じられた。後はネジで止めてシールを貼りなおせば終わりである。

これで分解掃除の手順は一通り済んだ。あとはマウスの外側に付着している汚れを、軽く洗剤をかけた布巾などで拭き取ってから乾拭きして終わる。分解作業すると、特にホイールは内部の汚れが溜まるとスクロールしにくくなってイライラするため、最低でも年に1回はやっておきたい。だが、スナップフィットの箇所はプラスチックであるため、何度でも力を加えていると当然ながら劣化してくる(プラスチック製品の可動部を何度も動かしていると白濁してきて、やがて割れてしまうのをご存じの方も多いはずだ)。マウスは電化製品としては単純に作られているため耐久性が長い筈だけれど、可動部品の劣化はどうしようもない。したがって、ケースの開閉を繰り返しているとスナップフィットが壊れてしまう可能性はあるから、実はそれが買い替えのタイミングになるのかもしれない。実際、光学式のマウスを使い始めてから、会社でもマウスが長年の使用で劣化して誤作動を起こしたなどという報告は一度も受けたことがない。みんな、マシンは数年おきに買い替えているが、マウスなんてたいてい5年以上は同じものを使っている。それだけ長く使えるのだから、メンテナンスも(部品が壊れないうちは)丁寧に続けた方がいいだろう。

冒頭に戻る


※ 以下の SNS 共有ボタンは JavaScript を使っておらず、ボタンを押すまでは SNS サイトと全く通信しません。

Twitter Facebook