船場センタービル

SEMBA - serial number 1 (it's not a real magazine) 河本孝之(Takayuki Kawamoto)

Contact: takayuki.kawamoto [at] gmail.com

ORCID iD iconorcid.org/0000-0002-7867-2654, Google Scholar, PhilPapers.

First appeared: 2018-03-22 20:24:58,
Modified: 2018-04-05 10:01:11, 2018-04-09 21:19:40, 2018-04-10 21:48:11, 2018-04-15 07:51:09, 2018-04-16 22:15:07, 2018-05-22 22:39:47, 2018-05-23 11:55:58, 2018-05-26 19:03:53 (as a new introduction*1), 2018-06-02 23:14:09,
Last modified: 2020-12-12 22:57:42.

このページで “[Name, 1990: 13]” のように典拠表記している参考資料の一覧は、「References - 船場センタービル」をご覧ください。また、そのページでは船場センタービルに関連する紛らわしい表現を整理するために、幾つかの言葉を定義して使っているので、あらかじめご確認ください

概要

船場センタービル Wikimedia Commons contributors, “File:Semba Center Building No.9 in 201507.JPG.”

船場センタービル*0(せんば・せんたーびる)は、1970年(昭和45年)3月12日にオープンした、大阪府大阪市中央区船場中央一丁目から中央四丁目にかけて約 930 m に及ぶ建造物です。東から西に向かって1号館から10号館まで10棟あって(設計段階では、いまの10号館にあたる建物から逆の順番で、西から東へ向かって「A棟~J棟」と呼ばれていました)、両端の1号館と10号館は地上2階で地下2階、2号館は地上3階で地下2階、3号館から9号館は地上4階で地下2階となっており、主に鉄筋コンクリート造(10号館のみ鉄骨鉄筋コンクリート造、なお [大阪市土木技術協会, 1995: 135] にある1967年当時の構造設計では、1号館と9, 10号館が鉄骨鉄筋コンクリート造となっていました)の建物で構成されています。そして船場センタービルのもう一つの大きな特徴は、大阪市内を通る幹線道路である大阪市道築港深江線阪神高速13号東大阪(上下)線がビルの上を走っていたり、地下では Osaka Metro御堂筋線本町駅*2(M18)、堺筋線堺筋本町駅(K15)、そしてビルに平行して走る中央線の本町駅(C16)と堺筋本町駅(C17)へも連絡し、更には5号館から8号館の地下二階は 300 台以上の収容能力をもつ大規模な駐車場となっており、広範囲に関わる商業活動や交通の要所として利用されていることです。建築の専門家は、土木に類する道路や地下鉄に加えて建築に類するビルを組み合わせた一体構造と捉えるようです。

*02019年10月4日から2020年1月31日までの期間に株式会社大阪市開発公社の主催で愛称が募集され、2020年3月に船場センタービル愛称選考委員会が「せんびる」を愛称として選定し、新型コロナウイルスの影響で延期されていた表彰式を11月28日に実施しました

船場センタービルの建築面積は 31,248.35 m2、延床面積が 170,324.95 m2 となっていて、その主な用途は、店舗(51,045.77 m2)、事務所(20,538.12 m2)、駐車場・荷捌き場(13,260.88 m2)、機械室(23,436.04 m2)、そして共用部分(59,034.16 m2)等となっています*3。これらの用途の中でも、船場センタービルのフロアガイドにも説明があるとおり、一般の来訪者が利用する店舗は最大で地下2階から地上2階に及び、それぞれのビルに特徴があります。

ビル 店舗の種別
1~3号館 2F 繊維卸と小売
1F 小売(ラントレせんば
B1F 輸入品卸(大阪舶来マート
B2F 飲食(ジョイ船場50
4~9号館 2F 繊維卸と小売
1F 繊維卸と小売
B1F 繊維卸と小売、飲食
B2F 飲食(4号館:旨いもんストリートと9号館。5~8号館の B2F は駐車場)
10号館 1F 小売
B1F 飲食
B2F 飲食(船場女将小路

*1このページは船場センタービルを紹介する総説として再編集しました。これまで公開していたコンテンツは、「船場センタービル」のカテゴリーで公開する新しいページに再録します。

*2「船場」という地域名をブランドにしたい地元の要望で「船場西」駅という別名が採用されています。現在も駅名標板には表記されていますが、Osaka Metro のサイトには掲載されておらず、正式な副駅名(駅名標に地元をPRするキーワードを表示させるもの)ではないため、列車でもアナウンスされません。そして、この別名は正しくは「東」や「西」の文字を, 西のように白抜きで反転させるらしいのですが、理由を知っている大阪の人間は殆どいないでしょう。なお「副駅名」は関西に多い呼称らしく、関東では「副駅名称」と書く場合が多いようです。

*3株式会社大阪市開発公社の記載内容です。この記載内容は、[大阪市開発公社, 1989b: 229] の「(4)ビルの概要」で記載されている数値(延床面積は 170,324.94 m2、店舗は 51,047.68 m2、共用部分が 59,036.25 m2)と若干の違いがあります。なお [大阪市土木技術協会, 1995: 185] の「A. 船場センタービル工事概要」の数値は下三桁が丸めてあるので、本稿では採用しません。

これだけの面積があり、しかも高速道路や市道を乗せているため、船場センタービルには交通行政や法律から見て幾つかの特徴があります。まず、船場センタービルは幅 80 m の道路上に長大な建物を建築するという体裁なのですが、このビルは区分所有権を設定してある不動産であることが要求されているにもかかわらず、上を走る道路を支えるための構造物でもあるため道路の一部であると解釈できます。すると、道路を支える柱などが道路の扱いになってしまうと、残った床や壁だけでは建築物として登記ができません。そこで、区分所有権を設定してある特別な「道路占用」(道路の地下に埋めてある下水道管などが継続して道路の敷地を利用すること)と解釈した建設省から特例として認められたという経緯がありました。そして、このような事情で、船場センタービルの個々の区分所有者には占用許可条件(立ち入り調査の受け入れや屋外広告物の禁止、占用物件の譲渡制限等)の遵守が義務付けられています。そして、船場センタービルは上空の通路や地下の構築物で棟どうしが連絡していて、1号館から10号館の全ての棟が電気, 給水・排水, 冷暖房, 空調, セキュリティについて中央監視室からの中央制御方式で運営されています。このようなわけで、船場センタービルの構造や機能が一体を為していることから、大阪市は船場センタービル全体を構成する10棟で一つの物件として登記したい旨を法務省へ申請しましたが、法務省の見解では1~3号館、4~9号館、そして10号館の3棟として扱うのが適当とされ、3棟で登記されています。(なお、当サイトでは個々の建物の単位を「棟」と呼んでいるので、登記されている区分単位の話と混同しないよう、ご注意ください。)

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管理・運営

船場センタービルの管理は、株式会社大阪市開発公社(541-0055 大阪市中央区船場中央二丁目3番6号 船場センタービル6号館 401号室)が担っています。終戦後からすぐに大阪では戦災復興事業が始まっていましたが、昭和30年代まで船場地区は都市計画の実施が進んでおらず、そのあいだに自動車の交通量が増えたり地下が高騰を続けて、広い道路が求められたにも関わらず土地の買収が難しいという状況がありました。そこで、大阪市が銀行などと協力して公共用地の先行買収を迅速に進めるための事業体を作ることとなったわけです。こうして、1964年(昭和39年)4月に発起人会議が開かれて、大阪市、銀行、インフラ系企業、他の証券・金融機関が発起人となり、株式約100万株で5億円(大阪市は土地の現物出資で3億円相当を出資)を集めて株式会社大阪市開発公社が設立されました。発足は1964年(昭和39年)6月25日とされています。

その後、大阪市開発公社は1967年(昭和42年)6月に大阪市と「築港深江線高架下建物の建設および管理に関する基本協定」を結んで、船場センタービルの建設と管理業務を担うこととなりました。開発公社が発行した『大阪市開発公社25年史』によると、その事情は次のとおり説明されています。

建設後のビル管理者が当社となったのは、このビル事業は本来築港深江線建設計画から生まれた建物であり、かつ、高架道路と一体となってこの公共施設を支えるという、きわめて重要な役割を、将来にわたり継続して担っている点から、公的組織による管理が適当と判断されたためである。

[大阪市開発公社, 1989b: 40]

こうして土地の買収や設計が進められた船場センタービル(設計当時は「船場ビル」と呼んでいました)のうち、4, 6, 7, 8, 9号館の床を分譲して共用部分の管理を500名ほどの区分所有者から成る区分所有者会から委託を受けて大阪市開発公社が担当し、1, 2, 3, 5, 10号館の床を大阪市開発公社の所有として賃貸としました(分譲面積は 37,361.17 m2、賃貸面積は 34,224.63 m2)。管理の主な内容は、大阪市開発公社の管理部に属している各課が担当して、以下のような業務を行っています [大阪市開発公社, 1989b: 80]。

その他、船場センタービルには入居者が独自に設立している協同組合や親睦会があり、オープン当初から組織がつくられてきた後に、全ての事業者で構成される最大規模の船場センタービル連盟が1985年(昭和60年)に発足しています。

各館の紹介*

まず初めに、お断りです。僕は一人の通行人なり店舗の利用者として船場センタービルという建物なり場所に関心があるだけなので、全ての業種や店に利害関係や関心があるわけではありません。また、このページを始めとする「船場センタービル」のカテゴリーに属している全てのページは、船場センタービルの運営事業そのものや船場センタービルへ入居している特定の事業者の宣伝を目的に作成したり公開しているわけでもありませんから、必要以上に個々の店舗をご紹介することは控えさせていただきます。僕が普段から利用している船場センタービルの幾つかの店舗、たとえば天牛堺書店さんなどについては、当サイトの「覚書(Notes)」に書くことがあります。そういうわけで、僕に特定の事業者について質問するとか(Google で掲載されているような「帆布を売っている店を教えてくれ」とか。そんなもん知るか)、特定の話題や事業者や業種についてページを作ってくれとか、当サイトで特別なページを作ってくれとか、そういう質問や要望には応じられません。

1号館(東棟、旧J棟)

Semba center building, No.1 building
所在地 大阪市中央区船場中央一丁目2番
建築事業者 熊谷組(着工: 1968-03-01 / 竣工: 1970-02-28)
規模 建築面積: 3,318.0 m2 / 延面積: 14,627.0 m2
長さ: 79.0 m / 幅: 42.0 m
構造 地上2階 / 地下2階
道路桁、スパン、支承方法 PC桁、14 m、架構支承(鉄骨・鉄筋コンクリート架構)
用途 2F: 事務所 / 1F: 店舗 / B1F: 店舗 / B2F: 事務所

2号館(東棟、旧I棟)

Semba center building, No.2 building
所在地 大阪市中央区船場中央一丁目3番
建築事業者 鴻池組(着工: 1967-09-01 / 竣工: 1969-10-31)
規模 建築面積: 3,334.8 m2 / 延面積: 16,874.0 m2
長さ: 79.4 m / 幅: 42.0 m
構造 地上3階 / 地下2階
道路桁、スパン、支承方法 PC桁、14 m、架構支承(鉄骨・鉄筋コンクリート架構)
用途 3F: 事務所 / 2F: 事務所 / 1F: 店舗 / B1F: 店舗 / B2F: 店舗

3号館(東棟、旧H棟)

Semba center building, No.3 building
所在地 大阪市中央区船場中央一丁目4番
建築事業者 鴻池組(着工: 1967-10-01 / 竣工: 1969-10-31)
規模 建築面積: 2,784.6 m2 / 延面積: 15,629.0 m2
長さ: 66.3 m / 幅: 42.0 m
構造 地上3階 / 地下2階
道路桁、スパン、支承方法 PC桁、14 m、架構支承(鉄筋コンクリート架構)
用途 3F: 事務所 / 2F: 事務所 / 1F: 店舗 / B1F: 店舗 / B2F: 店舗

4号館(中央棟、旧G棟)

Semba center building, No.4 building
所在地 大阪市中央区船場中央二丁目1番
建築事業者 清水建設(着工: 1967-10-01 / 竣工: 1969-08-31)
規模 建築面積: 2,788.8 m2 / 延面積: 17,074.0 m2
長さ: 66.4 m / 幅: 42.0 m
構造 地上4階 / 地下2階
道路桁、スパン、支承方法 PC桁床板、7 m、直接支承
用途 4F: 事務所 / 3F: 事務所 / 2F: 事務所 / 1F: 店舗 / B1F: 店舗 / B2F: 店舗

5号館(中央棟、旧F棟)

Semba center building, No.5 building
所在地 大阪市中央区船場中央二丁目2番
建築事業者 竹中工務店(着工: 1967-08-01 / 竣工: 1969-08-31)
規模 建築面積: 3,376.8 m2 / 延面積: 20,189.0 m2
長さ: 80.4 m / 幅: 42.0 m
構造 地上4階 / 地下2階
道路桁、スパン、支承方法 PC桁床板、7 m、直接支承
用途 4F: 事務所 / 3F: 事務所 / 2F: 事務所 / 1F: 店舗 / B1F: 店舗 / B2F: 駐車場

6号館(中央棟、旧E棟)

Semba center building, No.6 building
所在地 大阪市中央区船場中央二丁目3番
建築事業者 竹中工務店(着工: 1967-10-01 / 竣工: 1969-08-31)
規模 建築面積: 2,868.6 m2 / 延面積: 18,758.0 m2
長さ: 68.3 m / 幅: 42.0 m
構造 地上4階 / 地下2階
道路桁、スパン、支承方法 PC桁床板、7 m、直接支承
用途 4F: 事務所 / 3F: 事務所 / 2F: 事務所 / 1F: 店舗 / B1F: 店舗 / B2F: 駐車場

7号館(中央棟、旧D棟)

Semba center building, No.7 building
所在地 大阪市中央区船場中央三丁目1番
建築事業者 大林組(着工: 1968-08-01 / 竣工: 1970-02-28)
規模 建築面積: 3,108.0 m2 / 延面積: 20,379.0 m2
長さ: 74.0 m / 幅: 42.0 m
構造 地上4階 / 地下2階
道路桁、スパン、支承方法 PC桁床板、7 m、直接支承
用途 4F: 事務所 / 3F: 事務所 / 2F: 事務所 / 1F: 店舗 / B1F: 店舗 / B2F: 駐車場

8号館(中央棟、旧C棟)

Semba center building, No.8 building
所在地 大阪市中央区船場中央三丁目2番
建築事業者 奥村組(着工: 1968-08-01 / 竣工: 1970-02-28)
規模 建築面積: 3,389.4 m2 / 延面積: 18,501.0 m2
長さ: 80.7 m / 幅: 42.0 m
構造 地上3階 / 地下2階
道路桁、スパン、支承方法 PC桁、14 m、架構支承(鉄筋コンクリート架構)
用途 3F: 事務所 / 2F: 事務所 / 1F: 店舗 / B1F: 店舗 / B2F: 駐車場

9号館(中央棟、旧B棟)

Semba center building, No.9 building
所在地 大阪市中央区船場中央三丁目3番
建築事業者 竹中工務店(着工: 1968-08-01 / 竣工: 1970-02-28)
規模 建築面積: 2,272.2 m2 / 延面積: 13,410.0 m2
長さ: 54.1 m / 幅: 42.0 m
構造 地上3階 / 地下2階
道路桁、スパン、支承方法 PC桁、14 m、架構支承(鉄筋コンクリート架構)
用途 3F: 事務所 / 2F: 事務所 / 1F: 店舗 / B1F: 店舗 / B2F: 店舗

10号館(西棟、旧A棟)

Semba center building, No.10 building
所在地 大阪市中央区船場中央四丁目1番
建築事業者 大成建設(着工: 1968-11-01 / 竣工: 1970-02-28)
規模 建築面積: 3,515.0 m2 / 延面積: 9,336.0 m2
長さ: 95.0 m / 幅: 37.0 m
構造 地上2階 / 地下2階
道路桁、スパン、支承方法 PC桁、14 m、架構支承(鉄骨・鉄筋コンクリート架構)
用途 2F: 事務所 / 1F: 店舗 / B1F: 店舗 / B2F: 店舗

*上記の各項目は、[大阪市土木技術協会, 1995: 185, 196] を基礎にして作成してあるが、数値の多くが 1965(昭和40)年5月の事業計画書と違っているため、[大阪市土木技術協会, 1995: 154f.] によって上書きしている項目が多々ある(もちろん、当サイトで公開する全ての論説において、これらの数値が下二桁や三桁で実際の値と違っているかどうかは論旨に殆ど関係がない筈であり、本当に精密な値を知りたい方は自分で測量するべきである)。そして、各棟の延面積は事業計画書と 1967(昭和42)年4月の「補強費算出」[大阪市土木技術協会, 1995: 137] で示された値とも違っているため、最も新しい文書の値を優先して採用した。更に「道路桁、スパン、支承方法」の項目は、[大阪市開発公社, 1989b: 46] を参考にしている。

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