2018年10月01日に初出の投稿

Last modified: 2018-10-01

新井紀子/ Noriko Arai @noricoco

「はじめての新書」に「新書は「世界の断片」を提供してくれる」を寄稿しました。

図書 2018年 臨時増刊号 - 岩波書店

https://twitter.com/noricoco/status/1046239833314783232?s=09

いまどき「新書ブーム」を改めて煽り出すとは、岩波書店も経営がきついんだろうか。とは言え専用のプロモーションサイトでは、自社どころか他社の新書でもいいから紹介するという余裕のスタンスなので、どうも意図が分からない。確かに昔とは違って「岩波新書」のブランド価値は30代以下の人々にとっては大して高くもないだろうから、まだ新書ブームが続いているなら、それに乗じて購買層を広めたいと考えるのは妥当なのだろう。(ただ、タイトルの中に書いた括弧書きは二重括弧にするといった、編集者だけでなく論文を書く人間としても常識に近いことを軽視するようなツイートを有名人に書かせたていどで、本を読む人がどれだけ増えるのかは疑問があるが。)

さて新井さんのツイートで思うのだが、新書のキャッチフレーズとして「とっかかり」を強調するのはいいとしても、実際には大多数の人は「とっかかり」から始めてその先へ行くわけでもなく、それこそ「新書を読んだていどの」浅知恵でものごとを考えたり判断するのが関の山というのが実情ではないか。したがって、もちろん「とっかかり」として読んでもらうのはいいとしても、苟も啓蒙なり啓発を意図しているのであれば、そこから先へ行こうと思う動機付けを与えたり考えてもらうヒントを提供することも大切なのではないか。

正直、新書ブームについては元ライブドア取締役の Perl 使いや原始仏教のアマチュア講釈師がどれだけ色々な媒体で煽ったりイベントを開催しようと、僕は大して効果はないと思っている。2006年から2016年までの統計を見ても(日販営業推進室、書店サポートチーム「出版物販売額の実態 2017」)、新書の売上額は約40%も落ち込んでいるわけだが、そもそも出版物全体に占める新書の売上の割り合いというのは1%ていど(文庫本の 1/10)しかないのだ。これがブームだなんだと言って倍の売上になったところで、雑誌やコミックに比べれば僅かなものだし、それこそ新書は出版物としても「断片」なのだという自覚が必要であり、そういうものに頼りすぎるのは良くないと思う。

  1. もっと新しいノート <<
  2. >> もっと古いノート

冒頭に戻る


※ 以下の SNS 共有ボタンは JavaScript を使っておらず、ボタンを押すまでは SNS サイトと全く通信しません。

Google+ Twitter Facebook