2018年08月01日に初出の投稿

Last modified: 2018-08-02

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健康保険や年金、雇用保険など、社会保険全般の概要を、最新情報を盛り込みつつ網羅した解説書です。各制度の要旨、給付内容などをわかりやすく解説するとともに、巻末には全国の年金事務所等の所在地を収録。日々の業務や知識の確認にも便利な、ポケットサイズの1冊です。

2018年版 社会保険ブック

社会保険に関する概略を知るためのスタンダードな一冊として市販されている小降りの本だ。後期高齢者医療制度に関する一章があるため、標準的な解説あるいは説明の雛形として参考にすべく購入した。ところが、はっきり言えば本書は標準的な解説としては採用できない。僕が書き直すか、あるいは他の通俗書から引用する方がマシと言うべきである。例えば、この本には次のような文章がある。

「民間労働者、公務員、地域住民が病気をしたり負傷した場合に、医療を受けるための社会保険が医療保険制度となります。職域保険は大きく分けると六制度で、健康保険法が基本となっており、健康保険組合や各種共済組合に加入しない被用者は、すべて全国健康保険協会の被保険者となります。」

上記は「医療保険の種類」という文章の冒頭である。社会保険や医療保険の定義を兼ねているので、いきなり種別から始める馬鹿げたセンスの文章構成でも実用としては問題ないかもしれないが、この文章を何の予備知識もなく満足に理解できる成人がいるだろうか。

まず、日本の医療保険は皆保険制度(国民はもちろん、一定の条件で外国籍の人も加入できる)であるから、民間労働者、公務員、地域住民の区別だけで exhaustive であることが読み手に伝わらなくてはいけない。これだけの説明だと、「地域住民」の外延なり内包が不明なので(そもそも、どこかの「地域」の住民ではない人などいるのか)、自営の商店主や専業主婦は例外となるかのように誤解されかねない。

次に「職域保険は大きく分けると六制度で」とあるが、医療保険制度の話をしているのに「職域保険」とは唐突に何の話をしているのか。そして、「健康保険法」「健康保険組合」「全国健康保険協会」といった、表記が酷似している制度や団体の名称を正確に区別してから文章で使わなければ、それはただの衒学趣味でしかない。人事のエキスパートだけが読み流せたらいい、そうなりたければ上場企業の人事部に採用されるよう、東大のような大学でも出ておけと言わんばかりの文章だ。こんなものが概説として売れているというなら、要するに日本の出版業界には医療制度に関する啓蒙を真面目にやるつもりがない腑抜けしかいないということだろう。哲学者にそんなことを言われて悔しくもないバカだらけの業界であれば、もう自由主義経済の原則から言って、アマゾンと電子書籍の制作会社に淘汰されるべきであろう。

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