2017年05月09日12時20分 に初出の投稿

河本孝之Takayuki Kawamoto

Last modified: 2017-05-09 12:20:35

謎のグーグル新OS「Fuchsia」、独特なUIが公開される

Android は Linux ベースだったから独占される心配は少なかったわけだけど、事実上は Google が OS 開発の動向についてイニシアチブを握っていたという点には変わりがない。なにせ、いくら誰でもソースを改変できるとは言っても、おいそれと他人が勝手に改変した OS をベースにした「電話」を使うわけにはいかない。スマートフォンはどこまで行っても電話なのであって、最後の最後はゲームや Twitter なんてどうでもいいから通話だけは出来てもらわなければ困る。そういう工業製品に、誰が作ったかもわからない OS を組み込むなんてのは、やはりそれぞれのユーザどころかメーカーがコミットするにも、リスクが大きすぎるんだよね。

これはオープンソースで提供されているソフトウェアなら何でも当てはまる。必要に応じてソースを(それこそ RMS の意味で)「自由に」改変できるとは言っても、その改変が真の「改善」であるとどうやって保証するのかという問題は常に残る。巨大なコミュニティで開発されていれば、そのコミュニティのスケール自体が説得力をもつが、健全な市場を形成するために競争が必要だと言っても、そういうスケールの開発コミュニティが複数も並立するような状況を維持するのは難しい。いまではウェブサーバ「くらいのものであれば」 httpd に対して nginx がある。しかし、OS はハードウェアをコントロールするものなので、機械としてそもそも動作しないという致命的な結果を惹き起こしてしまう可能性があり、幾つかの開発コミュニティや OS が並立しても、特にエンドユーザは簡単に使い分けたり入れ替えたりできない。また、OS を入れ替えるのはウェブサーバを入れ替えるのとは違って、データをいったん全てバックアップしたり、色々な設定をやり直すコストがかかる。したがって、OS を切り替えたり入れ替える利得よりも、それに伴うリスクの方が非常に大きい。恐らく、大多数のユーザにとっては、実は OS が iOS だろうと Android だろうと Windows Mobile だろうと大して違いはなく、LINE や Instagram が使えたらそれでいいのだ。寧ろ、自分がいったん慣れた環境を変えなくてはならない理由がない限り、誰も変えようとはしないのが当然である。同様に、実務家としての経験から言っても、Windows Update を「手動で」素人にやらせるのは不可能だと思った方がよい。

つまり、ビデオデッキや懐中電灯を「アップデート」する必要を誰も感じないし、工業製品とはそうであってしかるべき堅牢さを備えているのが当然であるという常識からして、電話たるべきスマートフォンの OS を自分自身の用途とはかかわりのない理由で変更するべきだと思っている人は殆どいないし、それどころか同じ OS からフォークした「改変版」にすら置き換える必要を感じない。したがって、Google が Linux ベースの OS を捨てて独自に開発したカーネルから OS を開発しなおすということが、ただちに Google の帝国主義的な策略であるかどうかは自明ではない。結果として Google が Apple と Microsoft との寡占状態を維持する別のプランに移行しただけだという理解はできるだろうが、実はこれまでも事実上においてそうだったのだ。

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