Microsoft Basic Optical Mouse の分解掃除(と後日談)

河本孝之(KAWAMOTO Takayuki)

Contact: takayuki.kawamoto@markupdancing.net

ORCID iD iconORCID, Google Scholar, PhilPapers.

First appeared: 2022-08-04 12:09:40,
Modified: 2022-09-14 09:06:20,2022-09-14 12:27:53,
Last modified: 2022-10-28 16:49:41.

なんでいちいちマウスの分解掃除について哲学者が解説しなきゃいけないのか。もちろん、そんな使命も職責もありはしないが、実際に自分がマウスの分解掃除をしようと思い立って調べてみると、世の中に公開されている大半のウェブ・ページや動画は、オタクが作ってるからなのか、それとも修理業者が公開してるからなのか、肝心の「分解」や「組みなおし」の手順を殆ど説明しない。オタクの独りよがりな自称「解説」がクズであることは常識なので驚くには値しない。そして業者の解説については、ここを丁寧に説明すると業者は売り上げにかかわるので事情としては分かるが、しかしそれは企業人の理屈としてさもありなんと解釈しているだけであって、何も僕が支持したり同意したり、安っぽい「リアリズム」として是認したいわけでもない。はっきり言えば、その程度の手順を説明して客が減ることで成立しなくなる事業なんて、業種として成立していること自体が社会的な不正義である。凡人や無能が人に何かを隠すことで情報の非対称性や優位を維持して金を稼げる社会なんておかしいのだ。そういうわけで、哲学者である以前に「善良な」大人の一人として、ちゃんとしたページを作って提供したいと思ったわけである。何も高邁な目標や意図などないし、凡人に知恵を授けてやろうなどといった、いかにも哲学者っぽい無礼で傲慢な心境にもない。単に僕自身が調べていて、なんで丁寧に説明しないのかと、オタクや業者どもに腹を立てたからにすぎない。

分解

僕が使っているのは、昔から愛用して何個か買い替えてきた、マイクロソフトのオプティカル・マウス(Microsoft Basic Optical Mouse)だ。安くて、下らない機能がなくて安定した動作をする。これも昔から言われていることだが、マイクロソフトは UNIX や GNU/Linux のコミュニティからは「悪の帝国」として嫌われているが、キーボードやマウスなどのハードウェア製品については高い評価を得ている。実際に安くて無駄のない製品が多いからだ。ここでマウスの良し悪しや僕の好みを語る余裕も必然性もないので、それは別の機会に Notes にでも書こう。(本来、この記事そのものも Notes にでも簡単に書いておけばいいのかもしれないが、今回は複数の画像を使って説明する必要がある。Notes はそういう込み入った話をするためのコンテンツではないし、そもそも複数の画像をアップロードするようには作っていない(Notes の記事だけは、僕が自分で開発した CMS で投稿している。)

マウスは道具であるし、毎日のように使っていればなおさら、どれだけ清潔な人でも自分の手垢が隙間に溜まってきたり、あるいは室内の埃などが付着してしまう。したがって、慎重な人であれば毎日のようにマウス本体の表面を拭いたり、ケーブルに付着する埃をぬぐったり、マウス・パッドも拭いていることだろう。しかし本体の内部に入り込む埃などは、やはり分解して掃除しなければどうにもならないし、マウスの挙動にとって内部の影響は見えないからこそ積極的にメンテナンスしたいものである。僕が初めてオプティカル・マウスを使い始めた頃は、外観からして分解できるのかどうか分からなかった。世の中にはユーザが分解できないように作ってある製品も多いため、廉価品であればなおさら、壊れたら買い替えるといった扱いをした方が手っ取り早いと割り切ることもできる。しかし、マウスはいくら安くても1,000円ていどはするものだし、そもそも買いに行く手間の方が無駄だ。さらに昨今は sustainability から派生して repearable であることが良いとされており、Apple が自社製品の修理キットを業者ではなく一般ユーザへ販売したりレンタルするまでになったことはご存じであろう。このようなわけで、試しに分解できないものかと調べていると、オプティカル・マウスのような廉価製品でも分解できることが分かった。

分解するには、マウスの底面に貼ってあるバーコードや型番などが印刷されたシールを(ケーブル側を「」、マウスを使う掌側を「手前」と呼ぶ)手前の方から剥がしてゆく。爪で剥がしてもいいが、メガネのメンテナンスなどで使う精密工具のマイナス・ドライバーでもいいだろう。すると、すぐにネジ穴が出てくる。ネジ穴が全て見える状態までシールを一時的に剥がしたら、今度はプラスのドライバーでネジを外そう。

さて、分解するときに多くの人が心配するのは、ケースを外すときにプラスチックの部品を誤って割ったりヒビを入れてしまわないかという点だろう。このあたりも、オタクがよく公開しているページなどでは、何の問題もないかのように「ケースを取り外します」だの「分解しましょう」だのと一言で済ませている。この場合も、ネジを外したらマウスの手前側は表と裏(掌が当たる方を「」、マウス・パッドの側を「」と呼ぶ)に何の力も加えることなく分離するが、マウスの奥は分離せずに残る。この状態で、多くの初心者は不安を感じるはずだ。ここから何をすれば表と裏が外れるのか。

それは、まず上記の写真で赤く囲んである箇所が「スナップフィット」になっている事実を知るといい。逆に、分解してあったケースを再び接合させるときに「パチン」と嵌め込むようになっているのだ。もちろん、最初にこういうことを説明しておかないと、間違った向きへ力をかけたらスナップフィットの接合箇所が割れてしまうかもしれない。そこで、ケースの表と裏の真ん中あたりをそれぞれ両手で持ち、表のケースをやや手前に引くような力も加えながら、蓋を開くような調子でゆっくりと表側に回転させるのがいい。機材でも、いったん手前に軽く引いてから上にカバーを押し上げるような操作で開くようになっている蓋があるのをご存じなら、あの要領と同じだ。このとき、マウスのケースは開けようとするスナップフィットの反対側である手前の端を持ってはいけない。スナップフィットの個所から手、つまり力を加えるポイントが離れすぎると、梃子の原理で力が簡単に加わりすぎてスナップフィットを割ってしまう恐れがあるからだ。もちろん、逆にケースを組み戻すときも同じことだが、ここは慎重に作業したい。

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内部の掃除

スナップフィットがうまく外れたら、マウスの分解は終わりだ。マウスは製品によって中の部品や組み立て方が違うので、これはあくまでも Microsoft Basic Optical Mouse という製品での話だが、上の写真にあるとおり、基板とホイール(ミドル・ボタン)は最低でも中に組み込まれているだろう。僕は無線のマウスを使わないので分からないが、ワイヤレスのマウスだと内蔵のバッテリーか乾電池から基板への配線などがあるから、上記の写真よりも複雑な内部構造になっている筈だ。なお、上の写真では下に切れてしまっているが、基板から放出されるレーザー光線を反射する透明な部品もある。

そして、掃除については特に書くことはない。基盤を外せるわけでもなし、内部に溜まったゴミを取り除くだけだろう。もちろん、マウスはいちおう電子基板という精密機器を搭載した電化製品でもあるから、基板に洗剤をスプレーして拭こうとする人はいないと思うが、念のため洗剤とか、あるいは洗剤が付いた掃除用のシートなどは使わないようにしよう(ホイールの汚れを拭くくらいなら、使ってもいいとは思うが)。それよりも、こういう掃除を他の機器でもやる習慣があるなら、家電量販店やホーム・センターで販売しているエア・ダスター(gas duster)を持っておくことをお勧めする。そして、エア・ダスターで基板やマウスの内部から埃を飛ばしてしまうのが簡単である。エア・ダスターはガスが無くなると買い替える必要があるため、買い替えるのが面倒だというなら、もちろん USB 電源や電池あるいは充電式のエア・ダスターや業務用のエア・コンプレッサーなどもあるが、それは好き好きだ。あるいは、カメラのレンズを掃除するときに使うブロアー(ブロワー, 英語では “lens blower,” “air blower,” “cleaning blower” などと色々言うが、なぜか英語版の Wikipedia に全く解説がない)という手動で風を送る道具なら、数百円で売っていたりする。

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組みなおす

冒頭で書いたように、マウスの分解掃除について書いている記事の大半が、この組みなおしの作業を全く説明しないで「解説記事」やら「解説動画」と称してクズみたいなものを世界中にバラ撒いている。そんなものが多くの初心者(初心者は、本当に自分がボタンを一つ押し間違えるだけでコンピュータが故障するかのように思っていたりするものだ)にとって役に立たない、ただのオタクの自意識プレイや裸踊りに過ぎないのは自明である。われわれのような真の IT 人材や、こうして公にウェブサイトを公開している者には、こういうクズを量で駆逐することは難しくても、読んでもらえば確実に水準や品質でゴミのようなページを圧倒的に凌駕するだけのリソースを提供する社会的な役割(責任や使命とまで言うつもりはない)があろう。

ともあれ、組みなおしにあたっては、もちろんマウスの内部構造を元に戻さなくてはいけない。オプティカル・マウスだと、基板、ホイール、レーザー光線の屈折部品という三つだけしかないため、非常に簡単だ。マウスの両側に余計なボタンがあったりすると、そもそも分解できない部品もあろうが、もっと複雑だろう。でも、そこは知らない。自分で選んだ道具のリスクは自らで負うべきだ。 ともあれ、基板は裏表もはっきりしているし、マウス・ケーブルを直結しているので、元に戻す場所は分かりやすい。ホイールは軸の太さが両側で異なるため、これも向きを間違えることはない筈である。そして、基板やホイールなどの部品を取り付ける順番についても、特に考えるようなこともないだろう。ただし、レーザー光線を屈折させる透明の部品だけは、取り付ける向きが決まっているので注意したい。それは、基板から出たレーザー光線が直角に曲がってマウスの底から出てゆくように途中の部品を置くことだ。これは、そういう体裁で置けばレーザーが正しく屈折するという向きにしか部品を固定できないようになっているので、実は少し触っていれば分かりやすい(製造工程でも、作業するスタッフが間違えないように設計されているからだ)。

それらの部品を組んだら、いよいよマウスのケースを閉じる。既に書いたとおり、この逆の工程を全く説明してくれないせいで、分解したはいいが元に戻すときに困ってしまう人もいるだろう。もちろん、分解するときと同じくスナップフィットを嵌め込む作業が最も慎重を要するが、外したときの要領を覚えていれば、嵌め込む作業についても同じ考えで済む。

ただし、分解するときと違うのは手を使う位置だ。スナップフィットを嵌め込むときは、斜め上から表側のケースを押し込むように力を加えるのだが、スナップフィットのちょうど上にあたる箇所を押しながら力を加えた方が部品を割ってしまうリスクが減る。これも分解するときに書いたとおり、表側のケースを押し込むだけだと一方向からの力だけが強くなりすぎるからだ。スナップフィットの上からも力を加えることで、嵌め込みやすくなり、単純に一方向からの力でグイグイと押し込むよりも簡単に済む。簡単に済むということは、力を加える大きさや時間も少なくて済むのだから、スナップフィットの部品が割れてしまう危険を回避できるわけである。もともとは工場で作業員が何も考えず〈機械的に〉作業しても組みあがるように部品が設計されたり、組み立てのマニュアルが作られて研修している筈なのだから、京都の飾り職人みたいに何年もの修行を要する精密な手の動きや力の加減が求められる構造になっているわけがない。もちろん、舐めていると本当に部品を壊してしまう恐れはあるが、理由もなく怖がることはない。

スナップフィットの箇所を組み終わったら、あとはケースの中央付近をパチッと音がするまで押し込む。これは、レーザー光線を屈折させる透明の部品を正しい位置へ固定するために行う。こうして、やっとケースの両面が閉じられた。後はネジで止めてシールを貼りなおせば終わりである。

これで分解掃除の手順は一通り済んだ。あとはマウスの外側に付着している汚れを、軽く洗剤をかけた布巾などで拭き取ってから乾拭きして終わる。分解作業すると、特にホイールは内部の汚れが溜まるとスクロールしにくくなってイライラするため、最低でも年に1回はやっておきたい。だが、スナップフィットの箇所はプラスチックであるため、何度でも力を加えていると当然ながら劣化してくる(プラスチック製品の可動部を何度も動かしていると白濁してきて、やがて割れてしまうのをご存じの方も多いはずだ)。マウスは電化製品としては単純に作られているため耐久期間が長い筈だけれど、可動部品の劣化はどうしようもない。したがって、ケースの開閉を繰り返しているとスナップフィットが壊れてしまう可能性はあるから、実はそれが買い替えのタイミングになるのかもしれない。実際、光学式のマウスを使い始めてから、会社でもマウスが長年の使用で劣化して誤作動を起こしたなどという報告は一度も受けたことがない。みんな、マシンは数年おきに買い替えているが、マウスなんてたいてい5年以上は同じものを使っている。それだけ長く使えるのだから、メンテナンスも(部品が壊れないうちは)丁寧に続けた方がいいだろう。

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後日談(2022-09-14 09:06:20)

こうして分解掃除を終えた Basic Optical Mouse だが、どうも以前から使い勝手に違和感を覚える。それは、ミドル・ボタンが異様に重いことだ。毎朝、使い始めるときには、いわばウォーム・アップとして何度かグリグリとミドル・ボタンを暖機運転さながらに回しておかないと、特に初動が硬くてイライラするからである。まるで大昔の奴隷が巨大な碾き臼を回す使役につかされているかのような、そういう微妙な苦痛を感じる。しかも、毎日だ。いくら掃除してきれいになっても、そして暖機運転が終わったら使えるようになるとは言っても、この微妙な硬さは常に残るし、毎朝は常に固まった何かを相手にする、リハビリ担当の技師みたいな気分になる。なんでマウスごときで、こんなストレスを毎日のように感じなくてはいけないのか。これでは、癌とまではいかなくてもストレス由来の病気になりかねない。そうでなくても、無能な哲学プロパーをわざわざ親切に粛正し続けるボランティアみたいなことを続けてストレスが溜まるのに、これでは哲学者として生きている甲斐がない。不公平だし、不愉快だ。

ということで、他人などあてにしてはいけない。何かを変えるなら、まず自分で行動しなくてはいけない。それはテロリストだろうと哲学者だろうと受験生だろうと坂道アイドル志望の女子高生だろうと、同じことである。というわけで、既に落書き(Notes)でも公開したように、このまえマウスの掃除をしたばかりだったのに、Basic Optical Mouse という製品の設計というよりも、この個体がちょっとダメだと思う。また、これは安物のマウスであれば仕方のないことだが、ケーブルのしなりでポインタが無意味かつ勝手に動いてしまうのが困る。これは買い替えても安物だとケーブルの硬さはどうしようもないので、ひとまずミドル・ボタンがシリコン状の柔らかい材質ではなくプラスチックそのままの武骨な状態のものを買わなくてはいけない。ミドル・ボタンを下手にシリコンやゴムで覆うような設計になっているから、個体によってはこういう不具合になってしまうのだろう(そういう意味では設計ミスなのだから Basic Optical Mouse という製品そのものに欠陥があると言えなくもない)。たぶん、プラスチックのままだと長く使ってると指に良くないのかもしれないが、指に優しい柔らかい材質だと、いまのマウスみたいに削れてきてボタンの回転が酷く重くなるのだろう。ともかく、いまのマウスはだめだ。なので、もう買い替えることにした。Microsoft のハードウェアは良いものが多いという評判については、この事例で一つ減点である。

Basic Optical Mouse の代替として購入したのは、上記の OMEN by HP VECTOR Essential という名称のマウスである(型番:8BC52AA#UUF)。ちょうど、アマゾンで2,000円ほどのセール品として売っていたという事情もあったが、ほかにも幾つかの点で条件を満たしたのが良かった。僕がマウスを買うときに考慮している条件は、サイズと重さである。僕の掌は中指の先から手首までが約18cmほどあるため、一般的には12cmから13cmほどの大きなマウスが使い易い。Japanese と呼ばれる東の海域に住む小人族が使う「Mサイズ」とか「コンパクト」とか記載されている商品を僕らが使うと、ハルク・ホーガンに裁縫をさせるような結果になるからだ。ちなみに、いま使っている Basic Optical Mouse は11.3cmである。それに、マウスというのはマウス自体の重量でポインタの動きも変わるので、コントロール・パネルやレジストリでマウスの速度や加速度を同じ値に設定しても、軽いマウスだと速度が上がりすぎて扱うのが難しくなる(もちろん、速度を下げる再調整が必要になる)。加えて、小さなマウスをつまむように扱うので、肩凝りの原因にもなる。そしてさらに、マウスが軽いのでケーブルの僅かな引っ掛かりや反動だけでポインタがグラグラと動いてしまうので、常にマウスを握って固定し続けるような力を加えていないといけない。これも、肩凝りの原因になるのだ。かといって、重量については重過ぎるのも困る。以前も使ったことがある充電式のマウスだと、当時はバッテリーの性能も低かったせいで、マウスに内蔵されているバッテリーが重くて逆にこれも肩凝りの原因になった。まるで、軽めの鉄アレイでポインタを操作していたようなものだったからだ。

他にも、好みとしてはゲーミング・マウスのようにプログラマブルなボタンがついていないシンプルなものがいいのだけれど、今回は敢えてタイム・セールスで安かったゲーム用のマウスを注文した。いまやアマゾンでも事務用のマウスは小人用の鼻くそみたいなマウスばかりだし、事務用ですらワイヤレスのマウスが大半を占めている(それに Bluetooth だとデスクトップ・マシンでは使えない)。それに、事務用のボタンが3つしかないシンプルなマウスでサイズの大きな商品だと、せいぜい Microsoft の IntelliMouse とか Comfort マウスくらいしか選択肢がないし、これらは5,000円ほどするため、会社で買ってもらうならともかく、プライベートで買うにはいささか高い。このたび注文した hp のゲーミング・マウスは、もともと3,000円ていどの安いモデルだが、さらに2,000円ほどになっていたのが良かった。おまけにサイズは12.8cmとなっていて、Basic Optical Mouse よりも更に大きい。もちろん、マウスの握り易さというのは縦のサイズだけではなく高さも関係があって、Apple 製品のマウスみたいに花札や焼き魚を握ってるのかと思うような平べったい形状だと、僕は手の重さをマウスに預けられなくなり、手を浮かせる力だけで疲れてしまう。その点、このマウスは高さも4.1cmほどあって手を置きやすそうだ。

ということで、注文した翌日に届いたため、さっそく使ってみた。このミドル・ボタンの手前にある DPI ボタンというのが強力で素晴らしい。ここをクリックするとモードが順番に切り替わり、800 - 1,600 - 2,400 - 4,800 DPI という解像度が選択できる。僕がこれまでレジストリで設定していた速度だと 2,400 DPI くらいで動かしていたことになるのだが、これよりも更に速い 4,800 DPI なんてのが当たり前のように装備されているのは凄い。僕でもこんな速度でポインタを操作するのは難しいが、e-sports の選手だと用途が何かあるのだろう。だが、僕は業務でもゲームでも DPI を切り替える必要は感じないので、とりあえず 2,400 DPI で固定だ。そしてマウスそのものの大きさや形状も、さすがに e-sports 用のマウスだけあってグリップ感もいいし、なにより大きな(というか僕らには最適な)サイズが嬉しい。クリックもしやすいし、ミドル・ボタンも余計なひっかかりが全くないので、スムーズにスクロールできる。買い換えた値打ちは十分にあった。

なお、このマウス専用に(なかば勝手に)インストールされる管理ツールがあって、ドライバのつもりなのだろうが、こんなものまで勝手にインストールされてはどうかと思うのだが、マウスのランプの色を変更できたり、パソコンのモニターを表示したりする OMEN Gaming Hub という。箱に入っている取り扱い説明書では OMEN Command Center と書かれているが、もうこのツールは存在しない。hp のサイトからダウンロード・ボタンをクリックしても、あるいは Microsoft Store から検索しても、OMEN Gaming Hub しか出てこない。

それから30分ほど色々と画面操作してみて分かったのだが、2,400 DPI だと僕には遅い(マウスをスナップするアクションに比例してポインタの動く距離が、これまでレジストリで設定して Basic Optical Mouse で動かしていた距離よりも短い)ということが分かったので、これは何かマウスの設定画面などを使って再調整する必要がありそうだ。2,400 DPI のままだと、ポインタの動き方が少ない(つまり遅い)ので、ややイライラさせられる。距離が短いと、スナップだけではなく手首そのものを動かす必要があるので、面倒だし手首が梃子の中心になるので腕を手首で動かすような体裁になって疲れる(つまり肩凝りなどの原因になる)のだ。こういう試行錯誤も、使い始めたばかりの道具については仕方のないことなのだろう。でも、大きさやボタンのクリック感は良好だし、暫く使って慣れることにしたい。

・・・しかし。翌日になって急に、左クリックが殆どダブル・クリックとして動作するようになった。いくら中国製とは言っても、これは酷い。納品した瞬間に誤作動を始めるなんて、こんな精密な故障スケジュールで製造する方が皮肉にも「ハイテク」と言うべきだろう。ともかく、そうこうしている間にトリプル・クリックの挙動も始めたため、これはもう外れとしか言いようがなく、ヤマトさんに引き取ってもらって返品することとした。もちろん、USB のケーブルを HUB ではなくパソコンの本体に挿すとか、ドライバを入れなおすとか、そんなもん企業でヘルプデスクやってる技術者が確認せずにいるわけないだろうということは全てやってみたのだが、どれも駄目である。ちなみに、コントロール・パネルの「マウス」設定で、左右のクリックを入れ替えてみたら、これは右のボタンで正しく動作する。したがって、ドライバの問題などではなく左クリック・ボタンの物理的な故障としか思えない。せっかく良いマウスだと思ったのに、これでは同じものを代わりに送ってもらっても不安が大きい。よって、いったんは押し入れに仕舞い込んだ Basic Optical Mouse を再び取り出して使うこととした。あいかわらず、ミドル・ボタンが変身前の妖怪人間ベムみたいにネチッこい状態となっているため、こちらも自分で書いた本稿の前半を読みながら再びマウスを分解して、ミドル・ボタンを掃除したり、ミドル・ボタンを両側から囲んでいる部材をヤスリで削ってみたりして、必要以上に引っ掛かりがないように手を入れてみた。もちろん綿棒で拭き掃除もやって、エア・ダスターで綺麗に汚れは吹き飛ばした。なお、改めてマウスの部品を組みなおすときに感じたのだが、やはり組み立てるときはマウスの先端部分でスナップ・フィットとなっている箇所で左右のどちらかの溝を先にはめ込むようにしないと、うまく組めないようになっている。かなり難しい。

ともあれ、でたらめで粗悪なロットあるいは個体の商品を引き当てること自体は不幸なり統計の話でしかないのだが、よりにもよって僕が引き当てるのは、どうしても僕自身の失敗としか思えない。なぜなら、アマゾンで投げ売りされている時点で、信頼性工学の素養も少しはあるのだから、故障率の高い古いロットの製品ゆえに投げ売りされているのではないかと予想できてもよかったからだ。実際、大半の工業製品には、使っていなくても材質の劣化などを原因とする〈期限〉というものがある。そして、OMEN Vector Essential の箱を開けたときにも、取扱説明書では既に存在しないサポート・ソフトウェアを紹介していたのだから、製品ロットが古いという判断はすぐにできた筈である(まぁ、これは買ってみないと分からなかった理由だが)。

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後日談(2022-09-14 12:27:53)

さて Basic Optical Mouse に戻したものの、あいかわらずミドル・ボタンは固いし、それになんだかスクロールの精度が不安定になっているようにも感じる。ボタンを回してスクロールさせたあと、何かスクロールが少しだけ戻るような挙動を見せるのだ。これは、シームレスにボタンが回転する機構になっておらず、いわば歯車のように何らかの単位ごとに動くような仕組みになっているからだろう。でも、そんな原理的な理由であれば、買ったときから分かる筈だ。ここのところ何度か分解掃除しているせいで、部品が変形したり問題が起きているのだろう。なんにしても、いくら hp の粗悪品を掴まされたからといって、マウスを買い替えずに済ませるわけにもいかない。そこで、再び選びなおすことにした。

もちろん、上記で書いているように基準は同じである。大きさは最低でも 120mm 以上はほしい。10cm とか 11cm なんていう、小人族の魔術道具みたいなミニチュアのマウスなんて使えない。よって、アマゾンのカテゴリーでも僕はビジネス・ユースの「マウス」というカテゴリーではなく「ゲーミング・マウス」のカテゴリーだけを見ている。ビジネス・ユースのマウスは、是非の議論は別にあるとしても、要するに昔の言い方だと「OL」をメイン・ターゲットとしているため(身長や手の大きな女性もいるというのに)、僕と比べて手の大きさが半分くらいの妖精さんみたいな人物を想定して製造・販売されているのだろう。よって、ビジネス・ユースのマウスを丁寧に探してみても、いちばん大きなものだと Microsoft の IntelliMouse、そして次に Microsoft の Comfort Mouse など 110mm を超えるサイズの製品があるけれど、選択肢が少なくて魅力がないし、そもそも高い。3万円の Happy Hacking Keyboard Professional 2 を使っている人間が言うのは矛盾しているかもしれないが、僕は昔から安いキーボードやマウスでも良い製品はあるという経験をもっている。IBM の英語配列キーボードなんて、Sofmap の店先で980円くらいで投げ売りされていた時代を知っているが、それでも仕事では全く問題のない高性能なキーボードだった。そして、この Basic Optical Mouse も、いまでこそ色々な不具合はあるが、なんだかんだ言っても1,000円くらいのマウスを5年以上も愛用している。実のところ、周辺機器というのは値段が高いから品質が良くて故障率が低いとは限らないのであって、その理由の最たるものは値段の根拠がブランドにすぎず、しかしその実態は大半の商品が中国製やベトナム製であるという点にある。もちろん、中国にも良心的な経営や仕事をする会社はある。僕がスマートフォンのケーブルを幾つか買った Rampow というメーカーは、なかなか良い製品が多いし、故障や不具合は一つもない。しかし、やはりでたらめな仕事をする会社や工場も多く、同じことは日本でも言えるわけだが、その粗悪さは日本よりも酷いと言える。なので、設計上の利点を考慮して買う場合は、代わりになる商品がないのだから、HHK のキーボードみたいに中国で組み立てられていようといまいと買わざるをえない(いや、そろそろ HHK 以外のキーボードも使ってみようかと思うのだが)。でも、必要な条件さえ揃っていれば、いまやメーカーがどこなのかを気にしてもしょうがないという実情だと思っている。ということなので、値段は安い方がいいのだけれど、安すぎてもいけない。場合によっては、中古品や故障したガラクタを送ってくる連中もいるから、やはり Amazon.co.jp が発送元になっていて、マウスを製造するなら最低でもこれくらいのコストはかかる筈だと思える値段のものを選びたい(調べるとわかるが、本当に1円とか38円なんて値段で売ってる業者がいるのだ)。

ということで、マウスを選んで買ったら、また追記しよう。

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後日談(2022-10-28 16:49:41)

落書き(2022年09月15日に初出の投稿)落書き(2022年09月17日に初出の投稿)からの転載です。

さきほど届いたマウスだ [これは9月15日のこと]。MSI というマザーボードのメーカーとして知られている企業が作っている、ゲーミング・マウスである。これも特に何か追加でダウンロードしたりインストールしなくても、ケーブルを接続するだけで使えた。そして、これもミドル・ボタンの手前に DPI を切り替えるボタンがあって、これも何度かクリックして適当な速さに決めた。

なお、ミドル・ボタンの右側と手前に赤いランプがあるのだが、これは常に点灯しているわけではなく、数秒おきに明滅する。下らない演出なので、点いたままに固定できるかどうか調べてみたのだが、PDF の Quick Guide だと手前のランプが「ドラゴン LED」と呼ばれているという下らない事しか分からない。どうやらソフトウェアによるカスタマイズができるらしく、それには「MSI Center」というユーティリティをインストールしなくてはいけないらしいのだが・・・ドライバとユーティリティとでインストール・プログラムのファイルサイズが 574.34 MB もある。これ、NVIDIA GeForce Experience よりもデカいサイズじゃないのか。なんでマウスのドライバやユーティリティていどの用途で、こんなサイズになるのか。これ、インストーラよりも実際に展開されて動作するファイルの方が合計容量は大きいに決まってるから、下手をするとマウスのソフトウェアだけで 1 GB くらい削られる可能性もある。

MSI はハードウェアのメーカーとしては昔から評価されていて事業も継続できているが、ソフトウェアの開発能力には疑問があるな。それとも、コンパイル時の最適化も知らない素人がプログラムを書いてるんだろうか。ひとまず、スタンダードなドライバで問題なく使えているため、これも明日になって勝手にトリプル・クリックになってしまわないか、暫く確認しよう。マウスの分解掃除について書いたページへ、後日談として追加するのは、動作に問題ないようだと判断できる1ヵ月ていどを経過してからとする。

一昨日から使い始めたゲーミング・マウスの MSI Clutch GM08 だが、DPI の設定が Windows を起動するたびに初期状態の最低値に戻ってしまう。おそらく、これを好きな値へ固定するには、例の MSI Center というバカげたツールをインストールして常用しなくてはいけないのだろう。入力デバイスの管理ツールを常用するなんて、オンライン・バンキングで入力する値をフックされかねないのだから、そんなものをキーボードだろうとマウスだろうとマイクだろうとプロセスとして常駐させるのは情報セキュリティの実務家として絶対にお断りだ。これは、誰を信頼するとか、どこの会社ならいいとか、そういう問題ではない。原理的にそんな経路で情報が盗まれる可能性があるというだけで、それをわざわざ選択することがいけないのである。MSI Center がやらなくても、MSI Center に感染するウイルスが情報を盗む可能性だってある。

ということで、常に初期設定へと戻ってしまうなら、初期設定のままで 3,200 DPI の速度が出るようにレジストリで調整するしかないのだろう。これは、この連休中の〈日曜大工〉としてタスクに登録しよう。[実際にはこのまま何も変更していない。]

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