Orchis in Action

河本孝之(KAWAMOTO Takayuki)

Contact: takayuki.kawamoto@markupdancing.net

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First appeared: 2020-07-20 11:26:25,
Modified: [BLANK],
Last modified: 2020-07-20 22:42:52.

はじめに

Orchis [ɔ́ːkis:オーキス](公式サイト)は、Windows 用のデスクトップ・アプリケーションです。作者である黒田剛(Go Kuroda)氏によると、「ランチャ/ファイラ統合ツール」として1999年から公開されており*1、早くも2000年1月には Vector で藤田洋史氏によるレビューが掲載されています(なお、黒田氏のハンドル・ネームが現在とは違っています)。その後も、レビューは掲載されていて2000年12月27日のレビューでは開発を始めた理由が作者から以下のように説明されていました。

ひとことで言うと、「自分が使いたいランチャが無かったから」。絶対に押さえたかったのは「ポップアップメニュー型」「ドラッグ&ドロップで登録」「軽快」。特に、ポップアップメニューがドラッグ&ドロップを受け付ける、というのがWindowsにないインタフェースであるためか、私の要求を満たしてくれるランチャは見つからなかったのです。そうして、初代「Orchis」は生まれました。

https://www.vector.co.jp/magazine/softnews/010707/n0107073.html

*1なお、正確な初出は不明。作者が初めに Orchis を公開していたサイトを Wayback Machine で拝見しましたが、最も古いページは既に公開を始めてから暫く経過した時点の内容で、しかもバージョンごとの日付が記載されていないために、残念ながら正確な revision history を追跡できません。正確に《オンライン考古学》をやるなら作者に質問するのが最も適切なのでしょうが、本稿でそこまでの正確さは必要ないでしょう。なお、ヘルプ・ファイルに何か記載がないかと思ったのですが、更新する手間がかかるということで、いつのバージョンからかヘルプ・ファイルは削除された模様です(でも設定のメニューに項目は残っているので、再公開される可能性もあります)。

Orchis の公式サイトで確認すると、2020年7月の時点で Orchis は最新版が 18.0509 となっていて、Windows 10 の 32 ビット及び 64 ビット環境で動作します(動作テストは 64 ビット版のみ)。Windows 8.1 以前、Windows XP に対応するバージョンも公開されていますが、そちらは更新が終了したとのことで、現在は Windows 10 の環境での運用が想定されていると言えるでしょう。もちろん、この数年の間にコンピュータを新しく買ったり買い替えた方は 64 ビット版のパソコンに Windows 10 がインストールされているでしょうから(いまどき 32 ビットのパソコンを買って Windows 8.1 以前のバージョンを敢えて使う人は、本稿など読む必要はない筈です)、導入するにあたっての問題はないものと思います。但し、Windows 10 の 64 ビット版だけに話を限ったとしても、Professional edition と Home edition があるため、それらの違いで微妙な差があるかもしれないのですが、自宅では Windows 10 Home edition、会社では Windows 10 Professional edition を使っている僕の環境では、特に何か指摘できる違いがあるようには感じていません(というか Windows 自体の違いやハードウェア構成による違いの方が目立つ)。

Orchis

Orchis は、いわゆる「ポップアップ」のメニューをデスクトップに表示する方式のプログラム・ラウンチャーです。「プログラム・ラウンチャー」(作者は「ランチャ」と表記していますが、僕は「ラウンチャー」と表記する習慣があります)というのは、要するに Windows のスタート・メニューから色々なソフトウェアや設定画面を起動したり、デスクトップにあるショートカット・アイコンから色々なソフトウェアを起動したりフォルダを開くといった操作を代行するソフトウェアのことで、簡単に言ってしまえばスタート・メニューを好きな場所で開くためのソフトウェアと言っていいでしょう。そういう意味では「GUI シェル」の一つと言ってもよく、僕が2000年代に愛用していた LiteStep や geoShell といった、Explorer の互換シェルで採用されている「ポップアップ・メニュー」と同じような仕様のソフトウェアだと言えるでしょう。ただし、互換シェルのポップアップ・メニューは、それぞれの基本となるシステムに追加されるモジュールとして提供されているので、単独では使えません。それに対して、プログラム・ラウンチャーはプログラムを起動したりフォルダを開くといった操作に特化して独立に開発されているため、単独で動作できます。実際、互換シェルを使っている人たちの中でも、僕のように殆どポップアップ・メニューを使うためだけに互換シェルを導入していたユーザも多かったため(もちろん互換シェルの多くは Linux の window manager の look and feel を模倣するために開発されていたので、仮想デスクトップやパネルもしくは Wharf と呼ばれるアイコンのような機能も盛り込まれていたわけですが、モジュール式であるために全く使わないという選択も可能で、それゆえに不要なモジュールを削除して動作の軽い GUI シェルを求める人が互換シェルを使っていたという事例もたくさんあります)、このようなソフトウェアの需要はもともとあったのでしょう。とは言え、Orchis の機能がそれら既存のソフトウェアに制約されなくてはいけないという道理はなく、作者の見識にもとづいて設計・開発されているわけなので、互換シェルのポップアップ・メニューと比較してどうこう言う必要はありません。

Orchis の機能として、readme.txt で列挙されている範囲だと以下のようになっています。

  1. 階層型ポップアップメニュー形式
  2. マウス操作/ホットキーなど、多彩な起動方法
  3. ドラッグ&ドロップ対応
  4. マルチランチャ
  5. 充実のファイラ機能
  6. シェル拡張(通常インストール時のみ)

ポップアップ・メニューとして使う場合は、殆ど 1. ~ 3. を目当てに導入することになりますが、ラウンチャーを複数作成して、個々にどういうアクションで表示するかを使い分けることもできますし(画面の左端にカーソルを寄せるとラウンチャー A が出て、画面の右端にカーソルを寄せるとラウンチャー B が出て、それぞれ表示内容が異なるといった使い方)、「ファイラ」と呼ばれる機能を使って目当てのフォルダを展開したメニューが開くように(体裁は殆どラウンチャーと同じですが)特別なメニューを表示させたりできます。Windows が圧縮ファイルの展開(解凍)に対応している場合は、.ZIP ファイルや .LZH ファイルの中身を自動で展開して Orchis のファイラのメニュー項目として、メニューの中で圧縮ファイルの中身へ直にアクセスできるようにもなります。そして、上記の一覧で最後に書かれている「シェル拡張」とはエクスプローラが提供するフォルダ画面での右クリック・メニューなどに「Orchisで開く」というコンテクスト・メニューが追加されます(つまり、エクスプローラでフォルダを右クリックしたときに出てくる、「開く」とか「新しいウインドウで開く」とか「コピー」とか「削除」とか「プロパティ」といったメニューに加えて、Orchis で中身を展開するメニューが出てきます。もちろん、普通のフォルダであれば、そのままフォルダをクリックしてフォルダの中身を表示することと何も変わらないので、こういう機能が必要という方は多くないと思いますが、Orchis のメニューとして開くと、既に書いたように圧縮ファイルを解凍できる場合は圧縮ファイルの中身をメニューの項目として展開していけるので、その場で目当てのファイルを圧縮ファイルの中で選べるわけです。エクスプローラのままだと、もちろん圧縮フォルダの中身もエクスプローラで表示できますが、左のペインに表示されるツリー・ビューで中身をたどることになり、マウス・ポインタを移動させないといけないため、Orchis で展開する場合と違って、あまり直感的な操作とは言えないかもしれません。

このように、多彩な機能をもっている Orchis というラウンチャーについて、僕の使い方とか感想とかを以下のように追加していきます。まずは現状でのお話をしていますが、今後も話題を増やしたり、以前に書いた内容を訂正するかもしれません。

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カスタマイズの個人的な経緯 [2020-07-20]

あまりよく考えずに自宅と職場で随意にプログラム・ラウンチャー(Orchis)の設定をしたため、いざ自宅と会社で同じ程度の頻度で業務することになると、メニューの項目や位置関係が一致していないことに改めて戸惑います。これは、いまのところ改善するべきストレス要因の一つになりつつあるため、設定ファイルならびに項目をショートカットの一式にエクスポートして、自宅と会社とで可能な限り使っていて違和感を覚えないよう項目を一致させる(そして必要なら両方を改める)つもりです。

思えば、デスクトップを(プログラムによって左クリックだったり右クリックだったりするが)クリックして表示する「ポップアップ・メニュー」と呼ばれることもあるプログラム・ラウンチャーを使い始めて、恐らく今年で20年にはなります。たぶん、もともと互換シェルで使っていたわけではなく、他にも Orchis のように単独で公開されているポップアップ式のプログラム・ラウンチャーはあった筈です(実際、Orchis 作者が開発の動機について使いやすいラウンチャーが欲しかったと説明されているように、90年代後半には、既に幾つかラウンチャーが公開されていたわけです)。そして、そういうデスクトップのカスタマイズをしているうちに、かつての僕はグラフィカルなシェルを一つの《環境》として置き換えたり好きなようにカスタマイズするという発想の互換シェルを使うに至ったのでしょう。そういう意味では、あれこれと意味の分からない制約が多い環境に耐えらえない(いや、鉄工所でバイトするのも好きだったので、必要があればいくらでも耐えられるのだが、耐えなくていい状況なら話が別なのだろう)という点では、Twitter などで規制や法律や道徳を《ぼくたちのクリエーティブを抑圧する悪》だと考える、デザイナーとかクリエイターとか言われているお子様方と大して変わらない気分はありました。もともと前職でチーフ・デザイナーもやってましたし、今の会社でもデザイナーをやって人たちに或る意味では意見を尊重してもらっていたくらいだから、当たり前なのかもしれませんが。

ともあれ、Orchis の動作に関する設定を自宅と会社の環境でなるべく一致させることには大して障害がなさそうなので、できるだけ早く済ませておきたいものです。会社のマシンは 4K モニターのスクリーンだから、それなりの微調節は必要なのですが、どのみち 4K の恩恵なんていまは殆どないような使い方にしている(解像度はもちろん高い)からです。したがって、プログラム・ラウンチャーとしての肝と言ってもいい、《何をどこのメニューから起動させるか》というメニューの配置やメニュー項目の選択について、この機会に改めて整理して考えようとしています。この記事も、そういう趣旨で書き始めました。

そもそも、プログラム・ラウンチャーは、スタート・メニューのように固定した位置にあるプログラムの一覧へマウスでアクセスするのが面倒臭いという事情で作られていたりします。しかし、それだけならショートカットをタスク・バー(あるいは、昔の Windows なら「クイック起動バー」というのもあったが)やデスクトップに作ればいいわけで、わざわざラウンチャーというプログラムを一つ余計に常駐させるためにリソースを消費するだけの大義にはならないかもしれません。しかし、しょせんタスク・バーやデスクトップのショートカットも、位置が固定されている事実に変わりはなく、マウス・ポインタが画面の右端にあるとき、僕のようにタスク・バーを画面の左端へ縦型に置く習慣がある人間にしてみれば、目当てのアプリケーションを起動するためにマウス・ポインタを画面の反対側まで動かさないといけないわけです。それに、タスク・バーのサイズには限界があるため、ショートカットを10個ていど置くだけでも、起動したプログラムのタスクが折り重なって見えなくなってしまいます(まぁ僕はタスク・バーに表示される個々のタスク、つまりタスクのボタンにアクセスしてタスクを切り替えたりはしないのだが、起動している最中のアプリケーションが全て一覧表示されていることに意味がある)。優先順位は人によって異なるわけですが、僕は起動していないアプリケーションのアイコンをタスク・バーに並べ続けてもらうよりも、いま起動している最中のアプリケーションを全て表示してもらう方がありがたいので、タスク・バーにショートカットを不必要に置きたくないと感じています。また、デスクトップにショートカットやフォルダを作り始めると作業環境がどれほど雑然としてしまい、加えて ISMS などの「クリア・スクリーン原則」から言っても脆弱になってしまうかは、だいたい誰にでも経験があるかと思います。だいたい、せっかく好みの壁紙を設定しているのにプログラムのアイコンが前に並ぶなんて興覚めも甚だしいではありませんか。もちろん仕事をしているあいだは壁紙なんて殆どあるかどうかも分からないわけですが、Windows を起動して作業を始めるに当たっての様子という話なら、アイコンがどっさりばら撒かれた画面を最初に眺めるよりはいいと思うのです。

そういうわけで、僕はデスクトップのどこであっても好きなアクションで手元に常用しているプログラムのメニューが表示されて選べる、ポップアップ式のラウンチャーを(互換シェルを使っていない今でも Orchis は使っているので、ほぼ20年ずっと)愛用してきました。とは言え、ポップアップ式のラウンチャーであれば何でもいいというわけではありません。Windows 用に公開されているソフトウェアはたくさんあるのですが、僕が Orchis を選んだ理由の筆頭は、ラウンチャーの UI そのものがメニューやプログラム項目の表示を邪魔しないという点にあります。他のプログラム・ラウンチャーの多くは、なんだかやたらと Windows のフォルダの UI を真似したり、何の意味があるのかスタート・メニューや他の OS(端的に言って macOS)の UI を真似てみたり、メニューの周りに太い枠が出ていたり、ラウンチャー自体に余計な装飾があるのです。中には、クリックしても Ctrl + r で開く「プログラムを指定して実行」と同じ体裁のエディット・バーが出るだけで、そこから目当てのアプリケーションの名前をタイプしないといけないという、実はコマンドラインの UI という体裁にしてあるだけの混乱した設計のラウンチャーもあります(たとえ Windows の GUI 環境であろうと、コマンドをタイプするだけでプログラムを起動するような使い方にするなら、ポップアップでエディット・ウインドウを表示するラウンチャーなんて最初から要らない筈だ。要するに、その手のラウンチャーは見かけだけなら「システム屋っぽい」し、敢えて言えば小学生が憧れる「ハカー」みたいな UI なのかもしれないが、実のところ混乱したユーザ・インターフェイスを実装したものでしかない)。それに、僕の経験からすると、何かテキストを入力する画面を開いているときに、手前のレイヤーへ別のテキスト入力画面やエディット・ボックスを開くという状況は、使い勝手として安心してタイプできるものではありません。しばしば、手前に現れるエディット・ボックスへ入力しようとしても、フォーカスが元の(つまり下のレイヤーの)ウインドウに残ったままということもあるし、逆にそういうラウンチャーを始めとするソフトウェアはショートカットでエディット・ボックスなどが表示されるようになっているため、テキストを入力している途中で、何かの拍子にショートカットと同じキーの組み合わせを誤って打ち込んでしまい、文章を入力し続けているつもりがラウンチャーの入力画面に打ち込んでしまっているということもありうるわけです(僕らのように画面を見ないで文章をタイプすることがある人間なら似たような経験があるだろう)。つまり、同じ体裁でコンピュータに入出力するインターフェイスが同時に複数も立ち上がっているという状態は、安定したコンピューティング環境に感じられません。僕が、どれほど画面サイズを大きくなろうと、常にアプリケーションを一つずつしか起動せず、アプリケーションの画面をタイル状に並べて配置することを嫌うのは、こういう心理が原因になっているのだと思っています。(それに加えて、僕はタスクを切り替えるのに Alt + Tab しか使わない。広げたままの複数のウインドウについて、タイトルバーをクリックして後ろのウインドウを手前に出すなんてことは、5年に1回という頻度ですらやったことがないし、タスク・バーのボタンをクリックしてウインドウを切り替えるなんて操作もやった記憶がない)。

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メニュー項目の選択について [2020-07-20]

Orchis に限らず、ラウンチャーがメニューとして階層構造をサポートしているなら、どのような階層を採用するかは一つの話題にして良いでしょう。そもそもラウンチャーが階層構造をサポートしておらず、登録した項目をフラットに並べるだけであれば、問題は (1) 何を登録するか、(2) 登録した項目をどう並べるか、(3) どれだけ登録するか、という三つの問題に集中すればいいだけなのですが、階層構造をサポートしているラウンチャーであれば、最上位の階層については (3) をそのまま議論してもいいかもしれませんが、サブ・メニューを作れるなら更にたくさんの項目を登録できるので、登録する項目増やせると同時に、登録した項目の並べ方についてもサブ・メニューと最上位のメニューとで並べ方の優先順位も変わるでしょう。

しかし、どういうラウンチャーであるにせよ、インストールして導入するための主要な目的つまり原理原則は一つだと思います。それは常用しているプログラムの起動や何らかの操作を簡単かつ即座に実行したいということです。これが最初に欠けていては、プログラム・ラウンチャーのカスタマイズについて論じても殆ど意味はないでしょう。ただし、総論はこう言えるにしても、各論ではユーザによって何を簡単かつ即座に実行したいのかは違っています。したがって、ここで議論している内容も、具体的な設定内容については僕の個人的な環境だとかコンピュータの利用状況に依存しているに決まっているわけで、何の普遍性も汎用性もないのであり、本稿に目を通していただくみなさんに注意していただきたいのは、個々の選択ではなく考え方を理解したり吟味していただきたいということです。

Orchis

さて、それでは項目の数や配置については後からでも決められますから、まず最初に何を Orchis から起動させたいかについて議論します。最初に書いておくと、Orchis のラウンチャーでタイトル・バーを右クリックして表示されるメニューから「特殊項目の追加」を選んで「プログラム」という項目をラウンチャーに追加すると、実質的にスタート・メニューのプログラム一覧と同じリストが表示できます。したがって、これだけをラウンチャーの項目として最上位に表示してもラウンチャーとして使えるには使えるわけです。なので、項目として表示できる範囲を言えば、それこそ《ゼロ》から《全て》と言っても良いでしょう。

Orchis

では、まず何も項目がないラウンチャーを作ります。Orchis をインストールした直後に初めて起動するときの画面では、登録したい項目を選ぶように促されるわけですが、特に何も選ばずに終えると上記のような空っぽのラウンチャーとなります。メニューに何も項目がなくても驚くようなことではありません。Orchis は互換シェルとは違って、最初に何もアクセスできる項目がないからといって、ユーザ・インターフェイス(シェル)の環境として《詰んでしまう》ようなことにはなりません(もし詰んでしまってクリックしても反応がなくなってしまえば、Ctrl + Alt + Delete の画面でタスク・マネージャを開き、エクスプローラを起動するくらいしかできなくなります)。なぜなら、そもそも Orchis はエクスプローラという既存のシェルを置き換えるようなソフトウェアとして考えられているわけではないからです*2

*2実際に explorer.exe というプロセスを落としてもらえば分かると思うが、エクスプローラが停止すると、そもそも Orchis のラウンチャーを表示させるためのフックになっている「マウス・ポインタを画面の端に寄せる」とか「デスクトップ上でクリックする」といった動作が全く働かなくなる。つまり、そういうフックはシェルとしてのエクスプローラが動いている前提で機能するのであるから、Orchis も実質的にシェルと同じ機能は果たしているものの、その動作原理はエクスプローラのコンポーネントの働きを利用しており、ユーザの命令からプログラムを起動するといったシェルのような動作はするものの、単独でシェルとして動作しているとは言えない。

上記の画像で表示したラウンチャーは、僕が使っている環境で改めて新規作成したラウンチャーなので、見た目については既に幾つかの設定が加わっており、ディフォールトで起動した見た目とはかなり違っています。別のアカウントでログインしてから起動した Orchis で作成したディフォールトのラウンチャーは、下記のような見た目になっています。

Orchis

見た目は後からどうにでも変えられます。確かに、見た目としても余計な装飾を削り取ってしまえるという理由で僕は Orchis を選んで使っているため、UI 表示のカスタマイズも僕にとっては重要な要素なのですが、上記で述べた原理原則(常用しているプログラムの起動や何らかの操作を簡単かつ即座に実行する)の方が多くのユーザにとって重要であろうと考えれば、見た目の話は後からでもできるので、ここでは僕が使っている設定の見栄えで議論させていただきます。すると、まず表示させたい項目として、当然ですが常用しているアプリケーションや機能という条件から始めることになります。ここで、敢えて「アプリケーション」だけではなく「機能」という言葉を使ったのは、Orchis から画像編集ソフトやメールソフトを起動するだけではなく、Windows のコントロール・パネルの項目だとか、それこそ Windows の再起動や終了も実行できるからです。確かに、これらも所定のプログラムを起動しているには違いないのですが*3、普通は何かアプリケーションを実行しているという感覚では使わないため、ひとまず「機能」と表現してあります。

*3shutdown --help とでもタイプしてもらえば、Windows を終了するときにアクセスしている shutdown.exe というプログラムの詳細が分かります。また、コントロール・パネルの項目も、その大半は %windir%\System32\ に入っている “.cpl” という拡張子のプログラムです。

Orchis

先に、いま使っている状態の項目を紹介してしまうと、上記のようになっています。僕が常用しているアプリケーションの筆頭は、順番を気にせず列挙すると、(1) ファイル・マネージャ、(2) ブラウザ、(3) メール・クライアント、(4) テキスト・エディタ、(5) ファイル転送ソフトの五つです。もちろん仕事に使うアプリケーションを数え出せば、Photoshop CC 2020 だの Keepass Password Safe だの Lightscreen だのと並べられますが、ここで「常用している」と言っているのは、最低でも毎日1回は起動しているという意味であり、しかも即座に起動できた方がいいという意味でもあるため、毎日のように起動しているわけではない Photoshop CC 2020 は除外されます(とは言え、“Media” というサブ・メニューには入っています)し、即座にアクセスして起動できるほどのレスポンスを求められていない Keepass Password Safe のようなパスワード管理ソフトも除外されます(これも “Security” というサブ・メニューに入れています)。

次に、並べ方の優先順位は、まず最初に個々のアプリケーション・ショートカットから即座にアクセスしたいものを優先します。僕の環境や用途ではファイル・マネージャの「だいなファイラ」が最優先で、その次にテキスト・エディタの Atom、次いでブラウザ(Microsoft Edge は業務用、Waterfox はプライベート用)、メール・クライアントの Becky!(これは即座に起動できなくてもいいから、実は順位を下げてもいい)、そしてファイル転送ソフトの WinSCP(仕事でもプライベートでも FTP クライアントは使わなくなったので、scp over ssh クライアント)ときて、後はカテゴリーごとのサブ・メニューが並ぶ。“Web” には Chrome や Firefox(Quantum)や Craving Explorer といった他のブラウザがあり、“Security” には Keepass Password Safe や Password Tech(昔は “PWGen” という名前だった)があり、“Media” には Adobe Creative Cloud の各種アプリケーションやカラー・ピッカーなどがあり、そして “Utilities” には PowerShell やら xyzzy やら GitHub Desktop やら Flexible Renamer といったツールがあります。これらのサブ・メニューも、おおよそ利用頻度の順番で並んでいます。そして最後に、これはあくまでも付け足しとして、コントロール・パネルへアクセスするメニューと、Windows の再起動や終了、あるいはレジストリ・エディタを起動するメニューを置いています。とは言え、コントロール・パネルはサブ・メニューの展開に時間がかかって使い辛いですし、ラウンチャーから Windows を終了するという動作に慣れていないため、やはりこれも殆ど使ったことはありません。

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