組織の認知的限界

Joy Ito [伊藤穰一] (translated by Takayuki Kawamoto)

Last modified: 2011-10-07 18:46
First appeared as a translation into Japanese: 2012-04-12 14:41
Last modified as a translation into Japanese: 2012-05-19 00:00(ちょっとした誤記の修正)
Translated from "The Cognitive Limit of Organizations," written by Joi Ito, and this document is distributed under Creative Commons Attribution 3.0 Unported License, and this translation is also redistributed under the same license.

The structure of a society is connected to its total amount of information クリックすると拡大し、日本語版になります。

このスライドはセザール・イダルゴから借りている。彼はこのスライドを使って或るコンセプトを説明していたのだが、思うにそれは当メディア・ラボがどうやって発展してきたかを考えるための重要な鍵になっている。

このスライドで垂直の軸は、世界中の情報からなる総ストックを表している。そして水平の軸は時間だ。

人類の黎明期にあって、我々の人生というものは単純だった。我々は弓や矢を作るといった重要な仕事をこなしてはいたが、それらを作るために必要な知識は、せいぜい一人の人間が全ての道具作りをマスターできるていどの分量だったろう。そのような状況においては、労働力を集約する大きなまとまりなど必要がなく、新しい知識は非常に貴重だった。もしあなたが新しい知識を得たなら、あなたは知識を共有しようなどと思いもしなかったろう。その結果、殆どの知識が各人の頭にあるような世界では、アイディアをかっぱらうのは簡単だが、自分で生み出したアイディアの価値を盗むのは難しい。

ところが何時の時点でか、知識の分量は一人の人間の認知的限界を超え始めるような何かを必要とするようになってきた。そうした事はチームによってしか達成できなかったろうし、複雑なものを作り上げるためには、チームのメンバーで情報を共有する必要があった。そうして、個人としての限られた認知的スキルを補うために、社会的なスキルとして組織が生まれたのである。だが社会というものは多くの知識をどんどん貯めこんでゆくので、組織についても、ちょうど弓職人の認知的限界と同じように最後は認知的限界に達したのだ。

当メディア・ラボが 25 年前に設立された当初、数多くのプロダクトは依然として単独の企業によるプロダクトだった。そしてそれらの全てではないにせよ殆どの知的財産は個々の企業に帰属していた。しかし今や多くのプロダクトは、異なる組織が保有する知的財産および知識の組み合わせである。単独の知的財産はどんどん少なくなっていて、それらの知的財産を結びつけるためのネットワークがどんどん増えている。これらのエコシステムで使われる情報の総ストックは、もはや単独の組織がもつ能力を超えている。なぜなら、巨大な組織の大きさが二倍になったとしても、その組織が知識をもつ能力や、知識を生産に使う能力が二倍になるというわけではないからだ。

次世代のアイディアを実現しようとしている現場では、異なる組織からリソースを拾い上げる必要がさらに高まるだろうから、コラボレーションに対する障壁は企業の発展を阻害する致命的な制約となろう。これまでは資産、管理、そして権限が支配してきたのだが、いまや機敏さ、状況判断、そして強いネットワークが生存本能となってきている。ジョン・シーリー・ブラウン (John Seely Brown) はこれを「引っ張り込む力(the Power of Pull)」と呼んでいる。

メディア・ラボとそのメンバーは、全ての人がこういう新しい見通しのもとにうまくやっていくための助けとなれるプラットフォームを創り出すことに着目して、そうした世界に適応しなくてはならないと考える。また同時に、我々は20世紀の複雑でダイナミックな産業エコシステムにニッチを見出す可能性もあると考えている。そうしたニッチを見つける旅においては、たぶん開放性や雇用が鍵になるだろう。

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