デザイナーズ・ハーバリウムを適当に作る

河本孝之(KAWAMOTO Takayuki)

Contact: takayuki.kawamoto@markupdancing.net

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First appeared: 2020-08-24 10:24:20,
Modified: [BLANK],
Last modified: 2020-09-11 11:42:17.

Designers herbarium

いきさつ

天王寺のあべのキューズモールへ買い物へ出かけたついでに、ABCクラフトへ立ち寄りました。ここへ来ると、ブック・カバーとして使うためのデザイン・ペーパーを見たり、あるいは会社で自分の机に飾っている造花葉物と鉢を見たりするのが楽しみなのです。そして、その日は店頭で「デザイナーズ・ハーバリウム」を見かけて、すぐに作ってみたくなったのでした。もともと「ハーバリウム(herbarium)」というのは植物標本のひとまとまりやコレクションを指す言葉ですが(標本一つをハーバリウムだと説明している人がいるので注意しましょう)、観賞用にガラス瓶などにドライフラワーを入れてパラフィンなどで固定させた装飾品をデザイナーズ・ハーバリウムと言います*。直感的に「こんなのが作りたい」と思い立って、想像した完成イメージに必要な材料を揃えました。そして、自宅に戻って実際に作ってみた記録をご紹介します。なお、この分野にも団体とかライセンスとか資格とか師範代とか、そういうサムライ商法を営んでいる方々がいるようですが、僕はそうした団体とか宗派とか人物とは関係がありませんし、興味もありません。

*この意味では一つ一つの作品という意味になるらしいのですが、そもそもこういう業界に定義や用語を統一するべき団体や規格など存在しないので、われわれ学術研究者がムキになって論じるのは無益かもしれません。誤解が生じない限りは、緩く言葉を使っておいて、作品を作るという本来の目的を優先した方がよいのかもしれませんが、困るのは数十年も経過した後に当時の習俗を調べようとしても、検索にヒットしないという理由で多くの資料が無視されることになります。僕は、2018年に亡くなった母親が若いころに手掛けていた「(東京)文化刺繍」と呼ばれる手芸について調べているのですが、母親自身はこれを「フランス刺繍」と間違って呼んでいました。なので、調べ初めてから暫くは、似ても似つかないフランス刺繍の情報しか集まらなくて困惑させられたわけです。加えて、この(東京)文化刺繍という名称にしても、当時から幾つかの独立した手法や組織があったらしいと言います。なので、「文化刺繍」あるいは「東京文化刺繍」という言葉のどちらかだけでは一部の情報しか見つけられません。なんにしても、現在では殆ど材料を扱う事業者もなくなっているようですし、手芸関連の書籍でも紹介されることが少なく、大型の公共図書館で手芸関連の昔の本や辞典類を調べても載っていないため、なかなか難しいテーマです。

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材料

Designers herbarium

デザイナーズ・ハーバリウムは、容器と充填剤と中身の三つがあれば作れます。もちろん中身をどう選んで入れるかが最大のポイントになるわけですが、僕は ABC クラフトの店内で、すぐに浅瀬の海底というイメージを得たので、中身はイメージに合致するような(本当に海中にそんな植物が生えているはずもないのは知っていながらも)ものを選びました。上記の写真で右上のラスカス(ナギイカダ属の低木の枝や葉)が preserved(本物の植物から水分を抜いた手芸用の材料)として売っていたので、まずこれを選んでいます。次に、色合いを変えてもう一つをカスミソウにしました。

浅瀬の海底というイメージがあるので、海底の材料として白いサンドと、その上にサンゴ砂、そしてアクセントとして貝を置こうと決めて、中身は決まりました。始めて作るわけですが、瓶に詰め込みすぎるとよくないということくらいは、店内で飾ってある作品からも分かったので、あまり色々と詰め込むよりは、初回なのでシンプルにしようというわけです。そして、色々と店内に置いてある容器を眺めたのですが、容器は100ミリリットルのガラス瓶としました。これには理由があって、まず、そもそも瓶と一緒に置いてある充填剤(シリコン・オイル)が高い。200ミリリットルで3,000円くらいするので、最初は作るのを止めようかと思ったほどです。しかし、これは店内を暫く回っていると解決しました。シリコン・オイルではなく、硬化するシリコン・ゲルなら100ミリリットル(A剤とB剤を混ぜて100ミリリットルになる)で980円だったため、逆に100ミリリットルの瓶を選んだわけです。

このようにして、材料費としては以下のとおりとなっています。

品名 外税価格
ガラス瓶(100ミリリットル) 300円
カスミソウ(クリーム) 180円
ラスカス 180円
シェル・パーツ 200円(特価)
サンゴ砂(M) 100円
カラー・サンド(白、50g) 150円
ハードニング 3D シリコン・ゲル
(100ミリリットル)
980円
計(消費税込み) 2,299円

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制作手順

まず、シリコン・ゲルは説明書に A 剤と B 剤を混ぜ合わせて使うと書いてあり、混ぜ合わせるとすぐに硬化が始まるため、先に瓶の中身を用意しておかなくてはなりません。なので、順番としては、(1) 中身を準備する、(2) 中身を瓶に詰める、(3) シリコン・ゲルを用意する、(4) シリコン・ゲルを瓶に充填する、(5) 放置してシリコン・ゲルが完全に凝固するのを待つ、というものになります。

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ということで、まずは中身を準備するわけですが、ラスカスとカスミソウは、そのままでは 100 ミリリットルの瓶には大きすぎるため、それぞれ瓶の高さよりも短くカットします。ラスカスは葉が多くて瓶の中が窮屈になりそうだったため、上記の写真に移っている様子から更に幾らか枝を取り除きました。

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これが 100 ミリリットルの瓶です。シリコン・ゲルを充填するとやり直しはできないため、内側は丁寧に拭いておきましょう。

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それから、シリコン・ゲルの A 剤と B 剤を混合させる容器は、ペットボトルの上半分を切り落としたものを使いました。ただし、そのままだと切り口で手を切る危険があるため、切り口にはテープを貼ってあります。最初は紙コップを使おうと思っていたのですが、自宅に無かったことから思いついた代案なので、紙コップがあればそちらの方が良いと思います。

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中身を瓶に詰めた様子です。底から順番に、白いサンド、サンゴ砂を少々、貝の置物、そしてラスカスとカスミソウを詰めたのですが・・・あんまりうまく行っていません。これでも植物を詰め込み過ぎているのでしょう。これは次回以降に申し送りするべき反省点です。

中身が準備できたら、さきほどの容器に A 剤と B 剤を入れて、1分ほどゆっくりとかき混ぜます。すると、混合液の中に気泡ができるので、この混合液を3分ほど放置します。気泡がひとりでに液面へと上がって消えてゆくので、気泡が全て消えて混合液が透明になるまで待ちます。3分ほど待てばきれいに気泡が消えてくれます。そして、その混合液を瓶にゆっくりと入れていくのですが、ここで僕は間違いを犯したのかもしれません。いっぺんにすべての混合液を入れてしまったため、瓶の底にある白いサンドの中の気泡が再び混合液に入ってしまったわけです。瓶の底が浸るていどに入れて、白いサンドの気泡がなくなるのを待ってから、残りの混合液を入れたらよかったのかもしれません。ただ、混合液を作ると硬化が始まってしまうため、底のサンドの気泡がなくなるまでにかかる時間によっては、先に混合液の硬化が進みすぎてしまう恐れもあるため、実際に手順を二回に分けた方が良かったのかどうかは確証がありません。

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混合液を入れたら、24時間で完全に硬化するとのことで、上記の写真が1日経過して完成したものです。気泡が残っています。ただ、これは熱帯魚などを飼う水槽をあしらった状況だと思えば、それほど不自然でもないのでしょう(と、あきらめる)。それから、混合液が白いサンドの一部にしか浸潤していないため、底の方はそのまま硬化せずに残っているようです。こうしたものも、正規のレクチャーでは対策を紹介しているのかもしれません。

ともあれ、やろうと思いついてデタラメに試してみた割には大過なく出来上がったと思っています。

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