2017年03月10日17時55分 に初出の投稿

河本孝之Takayuki Kawamoto

Last modified: 2017-03-10 17:55:46

しばしば「テンポよく歩こう」とか「ピッチ走法」といった表現を見聞きするのだけれど、「ピッチ」「テンポ」「リズム」「ペース」といった言葉の使い方が正しくないように思える場合もあるので、改めて確認してみよう。

まず「リズム」は二拍子や三拍子といったアクセントの組み合わせに感じる一定のパターンのことだ。したがって、「○○●○○●○○●○○●」というアクセントの組み合わせがあるときに、「○○●」というリズムを感じるか、「○●○」というリズムを感じるかは人によって異なる(これらのリズムの繰り返しは、どちらも三拍子ではあるが、リズムとしては異なる受け止め方をされる)。よって、「リズムに合わせて」どうのこうのと言われることがあるけれど、そうして合わせた結果が一拍ずつズレる可能性だってあるのだから、正確には「『私の』リズムに合わせて」と言う方が良い。

次に「テンポ」は拍の長さを表す。メトロノームは1分間あたりの拍数を設定できる機器であり、60 BPM とは1分間あたり 60 回の拍を数えることになるから、つまりは1拍の長さを示していることになる。ここから転じて、一定の時間内に行う行動や作業や反応の回数を「テンポが速い」と表現する。したがって、たまに「テンポよく歩きましょう」といった表現を見かけるが、これでは意味を為していない(「よいテンポ」などというものは定義不能だし定義する必要もない。ただのカテゴリーミステイクやコロケーション違反である)。

そして「ピッチ」は、ウォーキングなどの運動競技でも頻繁に使われていて、「ピッチ」は要するに「テンポ」と同じく単位時間あたりの行動や反応の回数つまりは一回の行動や反応の所要時間を表している。よって、「ピッチ走法」は一定時間あたりの動きを多くした「忙しない走法」のことである。ピッチを上げると一回の行動の結果である移動距離は一般的に短くなると思われやすいが、少なくとも「ピッチ」という概念にはそう結論させる必然性はないので、ピッチ走法をしているからといって普段よりも歩幅が狭くなっていると考えてしまうのは早計だろう。ちなみに「ピッチ」は音楽用語ではない。

最後に「ペース」は、いちばんよく見聞きするのは、業務などで一つ一つの処理単位についてかかる所要時間を短くしろという意味合いで「ペースを速めろ」と言われる事例である。行動や物事の推移の速さという意味から、その結果である物事の進み具合つまりは一定のプロセスの進捗という意味にまで広がっているように感じる。なお、他には英語の "feet" と同じく長さの単位という意味もある。

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