Scribble at 2023-10-31 14:33:10 Last modified: 2023-10-31 14:33:31

これまでにかなり多くの種類のアルバイトを経験しているが、はっきり言って高学歴な人間ほど安っぽいプライドがあって、塾の講師とかを選びがちなのだが、僕の経験で言えば間違っていると思う。塾の講師なんて授業時間だけが拘束時間なのではなく、実質的に仕事へ拘束されている時間として考えたら、授業の前に教材を準備する時間や授業の後に行う反省会など、90分の授業に対しておおよそ3倍から6倍くらいの時間が費やされる。よって、授業の時間だけで支払われる塾の講師だと、時間給が2,000円だとしても、その前後に3倍の時間をかけていたら実質的に6時間も働いているのと同じだから、本当の時間給は 333 円なのだ。これは、もちろん法令で定められている最低賃金を遥かに下回る超ブラック労働だが、大学院の数学科に入っても社会の現実的な計算ができない幼い連中には理解不能なのであろう。あるいは「わたしは子供に教えるのが好きなんです」とかいった自己催眠をかけるしか手がなくなる。

結局、自らの無知無教養や安っぽいプライドによって、自分自身の生活や研究の条件が劣悪になっていくという想像力がない人に、学術研究という実務は続けられない。しょせん、大学やシンクタンクにおける研究者は労働者なりサラリーマンなのであって、実務能力どころか才能がなくても大学教員となって居続けられた、全学連時代にドサクサで教授になったような人文・社会系で教えるクズどもの真似をしていては破滅である。

僕は関大の修士課程(博士課程前期課程)へ在籍していた頃に、阪急蛍池の近くにある第一屋製パンの大阪空港工場で食パン課包装係に配属された派遣社員として働いていた。深夜の零時頃から作業が始まって、早朝にトラックで各地にパンを運び出す便に乗せるパンを包装する担当だ。たまに人手が足りなくなると、下の階に降りて仕分けも担当することがあったけれど、大半の場合は工場の2階で4時頃までは食パンの全斤(フルサイズの食パン)を袋に詰める機械を扱っていた。仕事が終わると、包装係の全員で近くの吉野家で朝食をとって別れたりすることが多く、またブラジルから日系人が出稼ぎでやってきたので、ブラジルの話を聞いたりすることもあった。こういう仕事だと、たった4時間くらいでも塾の講師より確実に稼げる。僕は週に3日ほど働いていただけだったから、一ヶ月に12日ほど4時間ずつ勤務していただけだが、それでも手取りで20万円近くあった。なので、僕が自宅の蔵書としてもっている哲学関連の洋書は、その多くが京都の至成堂書店という洋書店で買ったものだが、当時はハード・カバーの専門書が1万円以上もしていたのに続々と買い揃えられていたのは、このようなアルバイトのおかげである(奨学金は殆ど親の生活費になっていた)。

また、他にも神戸大学の博士課程を受験する前に、実家の近くにある鉄工所で棒状の部品に穴を空ける仕事をしていたこともある。これは関大で修士号を受けてから後のことだったから、フル・タイムで働いていのだけれど、やはり塾の講師や家庭教師などに比べたら手取りの給与は多かった。もちろん、こうした仕事が塾の講師などに比べて低俗だとか賎業だなどとは思っていないけれど、くだらないプライドさえなければ、もっと効率よく稼げる仕事はある。(関大で付き合いのあった岸政彦くんも学費を稼ぐのに道路工事のアルバイトをしていたことがあると聞いたことがある。)

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