Scribble at 2022-02-19 09:50:44 Last modified: 2022-02-19 09:54:46

かなり前にファイリングの資格(試験)があると紹介した。一般社団法人日本経営協会が主催する「ファイリング・デザイナー検定」というものもある。これの電子データ版として「電子ファイリング検定」というのもあり、XML などの記述言語や関連する法規などを問う試験があるらしい。しかし、僕が学びたい(もし学ぶべきことを講じている人や機関・団体があればだが)のは、そういうことよりも実務的なことである。

たとえば、さきほどパソコンなどビジネス機器の買い取りサービスを提供している会社さんにメールを(土曜日だが)送信したときに感じたことも一例である。それは、ビジネス機器の買い取りサービスに係る査定書とか見積依頼書、あるいは先方からもらうサービス内容の資料(PDF や XLSX ファイル)は、どこへ保存すればいいのか。いま、業務用のパソコン(自宅のマシン)では Dropbox 配下のディレクトリないしフォルダ構造として、「情報システム部」のフォルダに「契約関連」とか「資産管理」とか、関わりがありそうなフォルダが幾つかある。前者には、もちろん契約書を初めとして、取引先ごとに分別したフォルダがある。後者には、ネットワークとかパソコンとか資産の種類別に分別したフォルダがあり、売却を予定しているパソコンの情報も資産の一部(リースだと資産計上できないので、経理的な扱いは別になるが、情報セキュリティ上は「情報資産」としてまとめてよい)として分別している。では、買い取りサービスにかかわるデータは資産の取り扱いの一部(ライフサイクルの一部)として資産のフォルダに入れるべきなのか、それとも取引情報として「契約関連」に入れるべきか。

もちろん、どちらでもありうるので、両方に入れるという選択がないわけでもないが、それはデータとして複製があっても情報の整合性などに後から問題が起きない場合にだけ認められる。ふつうは、そんなことをするとデータの複製が増えてゆき、やがて複数の個所にデータを複製して〈入れない〉というミスが起きて、複製されたりされなかったりするデータが増えてゆく。これで情報の管理に問題が起きないという見込みがあればいいが、たいていはこういうことをやると後で問題が起きる。なぜなら、資産の種類によっては〈どこへファイルを複製するべきなのかをそもそも忘れてしまう〉ことがあるからだ。一か所の保存場所を忘れただけなら、それを思い出せばいいだけだ。それを思い出せなければ、そもそもその情報を必要とする作業が止まってしまうので、それ自体も困るが、いい加減な情報をもとに作業できなくなるという意味では、ひとまず皮肉ながら〈安全〉だとは言える。しかし、データの複製があると、いま目の前にあるファイルだけでものごとを判断してしまう危険があるのだ。

しかし、たぶんファイリングの講習テキストで、このような実務の問題を解決できるアイデアを学べるとは思えない。こういうことは、各人の見識や経験によって、事実上はすべての会社で勝手にやっていて大きな問題になっていない(ように見える)からだ。では、PDF や Excel シートのデータを検索できればいいのだから、好き勝手に分別してりゃいいのかというと、そういうわけにもいかない。e-文書法では「検索性」が求められているのだが、僕はそもそも昔から "semantic web" のようなスローガンについても、検索するという行為あるいは検索という行為を含む認知プロセスに依存する findability という概念には重大な欠陥があると思っている。大多数の人々は、そもそも自分が何を知りたいか、そのために何を調べるべきなのかについてすら、実は知らないということを分かっていないからだ。なんの関係があるのかは思い出せなくなるかもしれないが、少なくとも仕事に関係があるからこそ、みんな仕事にかかわるファイルを「マイドキュメント」に突っ込んだままにしておいたり、なんでもかんでもデスクトップにフォルダを作って置いておこうとするのだ。それを、敢えて専用のディレクトリ構造を設計してまで分類しようというのだから、構造を考案した本人も分類の基準を分かっている筈だが、実際には分類する言葉の曖昧さや多義性によって、後から分別するファイルが幾つかの(しかも他の分別先にもかかわりがある)属性に分けられるかのような実情になりやすい。

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