2022年08月15日に初出の投稿

Last modified: 2022-08-15

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歌人・与謝野晶子が、日露戦争の激戦地にいる弟を思って詠んだこの詩を、今、ウクライナへ届けようとしている人たちがいます。

118年後の“君”死にたまふことなかれ

随分と前から NHK の公式サイトで掲載されていた特集記事だ。与謝野晶子の写真と気づくまでは、野口五郎の追悼記事かと思ってスルーしていたのだが(スルーかよ)、今日はちょうど終戦記念日だからページを開いてみた。すると、タイトルから感じていたとおりの、傲慢で、徹底的に他人事の記事だった。いや、記事にされている人たちも、たぶん他人事なんだろうと思う。その証拠に、この手の人たちは常に「戦争」という言葉で何か天や地から人類が被った厄災であるかのように扱おうとする。人と人が現実に銃を突き合わせているのではなく、ただの観念なのだ。だから、南無妙法蓮華経と同じで、「戦争反対」とか「戦争を終わらせる」といった文字列を出力するだけで何かを言ったりやったことになるという自意識プレイをやり続ける。

ウクライナの軍人に死ぬなと言うことは、つまりロシアの軍人を殺せということになるという意味が、こういう連中は分かっていない。戦争とは、とどのつまり目の前の相手が平時は尊敬する科学哲学の研究者だろうと、まさに銃を突き合わせている敵国の軍属なら叩っ殺せという話だ。足だけ狙って負傷兵として送り返せば殺さずに済むなんていう手心を加えようとすれば、もちろん総力戦で戦う大半の軍属は十分な訓練も受けていない素人なので、当たり前のようにそいつの方が次の瞬間には殺される。そんな安物のラノベみたいな狙撃が素人にできるわけないのだ。よって、素人を相手にした教練では常に大雑把なことを教える。馬鹿がやっても人を殺せるような方法だけに集中するのだ。しかるに、侵略戦争においてウクライナ人に生きてほしいと願う人は、大雑把に言えば侵攻側のロシア兵がすべて死ねばいいと言っているのと変わらない。こんなパフォーマンスを「平和」とか「いのち」(また言うが、電通や博報堂のコピーライターが大好きな、平仮名で書くタイプのおセンチな、あれ)などという厚顔無恥としか言いようがない言葉で誤魔化す手合いが、結局のところ我が国を先のロクでもない戦争に向かわせたのだと言いたい。このように軽薄な感情とか(敢えて哲学者として言わせてもらうが)「観念」で戦争や紛争が起きたり続いたり終わったりすると思い込んでいる人間こそが、何かをきっかけとしてやすやすと戦争を起こすのだ。

また、僕がいつもこの国の「終戦記念日」に至る数週間の報道で許せないと感じるのは、常に〈戦争被害〉だけを大きく報道し、自分たちがアジアでやってきたことは自民党から何かの横やりがはいると思っているのか、あるいは編集局長がネトウヨに襲われたり本社の前に街宣車が押し寄せると思っているのか、可能な限り消極的に、つまりは戦争によって〈仕方なくやったこと〉だと印象操作しようとする点にある。B級戦犯として続々と死刑になっていった日本軍人の記録や評伝を読んだからこそ言えると思うのだが、現在で言えば「開発援助」に当たるようなことをしていた人たちでも、後から現地の人々によって告発され、軍医だろうと、あるいは東南アジアの現地で井戸を掘ったり農作物の育成指導などをしていた人たちですら、逆に死刑となっていった場合がある。一見すると不愉快で不条理に思えるかもしれないが、こういう事例がまさに先の戦争の縮図だと僕は思う。当時の日本の技術を駆使して井戸を掘ったり医療行為をしたのに恩を仇で返されたと思っている人は、やっていることが援助だろうと医療だろうと、現地の人々にしてみればそれらは全て〈侵略したうえで勝手にやってること〉にすぎない、ということが分かっていない。そして、日本の報道機関というのは、こういう事例を徹底して悲劇だと描きたがる。東南アジアの現地の人たちの本音として言えば、軍医として誰かを治療したところで侵略者であることに変わりはない。こういうことを分かっていないからこそ、いつまでたっても、たとえば(一部かもしれないが)沖縄の人たちがアメリカ人に対して抱いている複雑な感情とか、(同じく一部かもしれないが)先祖や親類が朝鮮半島で何をされたか知っている在日朝鮮・韓国・中国人の記憶や感情が分からないのだろう。

いま述べた二つの点を合わせてみればお分かりのとおり、要するに日本人は先の戦争について理知的に理解することすらできないでいるし、それどころか感情としても理解できていないと言える。よって、何も理解していないと言ってもいいのではないか。そういう幼児に等しい戦争理解しかしていない国家で、他国で起きている戦争について何か言うとか働きかけるとか、そんなのはおこがましいにも程があると思うね。

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