Scribble at 2022-06-10 10:51:00 Last modified: 2022-06-11 09:09:37

昨日は出社していた。このところ、休憩時間に会社から北にある堂島アヴァンザのジュンク堂へ行くか、それとも南にあるフェスティバル・プラザのインデアンカレーに行くかを決めなくてはならない。しかしそうは言っても、僕は裁量労働の部門長であり、しかも会社はフレックス・タイム制も導入しているので、別に1時間で休憩から戻らなくてはいけないという決まりはないのだが、やはり無駄に時間を過ごすのは背任的であろう。よって、少なくともフレックス・タイム制の「コア時間」のあいだは1時間の休憩としておき、コア時間を外れた16:00に会社を退出してから、ジュンク堂へ立ち寄ったり、あるいは相当に遅い時刻だがインデアンカレーに立ち寄ることもある。16時だと昼食として言えば遅い時刻となるが、カレーは飲み物なのであるから(噛まずに飲み込むという意味ではない)、遅い昼食というよりも間食だと思えば済む。実際、その時刻に食べた後でも自宅では問題なく夕飯をいただいている。われわれ常連にとって、インデアンカレーは別腹である。いや、カレーの話はいい。

ということで、昨日は休憩時間にジュンク堂へ足を向けた(ちなみに、昨日は後からインデアンカレーへ行ったわけではなく、ジュンク堂からの帰りにファミリーマートでパンとおにぎりを買って、テナント・ビルの前にあるベンチで食べた)。今日の目当ては、LTSpice と数値解析(数値計算)の本を眺めることだ。ひととおり眺めて、LTSpice は既に幾つかの本が出ているものの、回路設計や電気学と合わせた体系的な本というのがないので、何冊かを合わせて読んでいかないといけない。結局、まとまった分量がある著作物を手にしたいと思うと、洋書のテキストになってしまう。日本の出版社が出す本というのは、中身も相当な昔の時点で止まっているのは仕方ないとしても、それを補足するコンテンツを著者や出版社がサイトに掲載するわけでもないし、本当に発行して一定の数が大学や図書館に捌けたら終わりという、一過性の場当たり的な商品だとつくづく感じる。これでは古典的な業績どころか、著作物としての蓄積がない。学界として勧められるようなテキストが成立しないのである。すると、場当たり的に作られたテキストで学位をとった人々どうしでは共通の理解に困難が生じる恐れがあり、それを補正する最善の方法は、結局のところプロパーとなるためにみんなアメリカの教科書を読むということに落ち着いてしまうのだろう。それなら、最初からアメリカの大学で使っている教科書を読んだ方がマシである。

数値解析にしても、やたらと薄っぺらい本ばかりが続々と量産されていて、最近では R だ Python だと浅薄なアプローチの本も目立つが、ものの考え方としての数学を軽視して、プログラミングとしての実装という手続きやルールのことしか紹介しようとしない、僕に言わせれば「欠陥品」としか言いようがない本も多い。これは、もちろん統計学や確率論の本にも言える。したがって、プログラミングを引き合いに出して数値解析の話をするのであれば、言語の習得は他の本に任せて、ひととおり分かっているという前提で数学なり工学としての議論を展開する方が潔いというものだ。そして、実際にそういう本もある。僕がジュンク堂で眺めてうち、最も良いなと感じたのは、『Cによる数値計算法入門』(堀之内總一・酒井幸吉・榎園茂/著、第2版・新装版、森北出版、2015)だ。C を使った実装例は必要最低限となっていて、公式を実際に適用したり展開して見せるというプロセスが丁寧に書かれている。数学や工学のテキストは、その大多数が未定義の用語を使ったり、特殊な公式を当然視して式の展開に説明もなく使ったり、あるいは端的に言って説明を軽視していたりと、およそものを書いたり教育する資質を疑わざるを得ない、〈足し算だけはよくできる人〉による紙屑が大半を占めているが、本書は例外的によくできている。

次にプログラミング言語の棚を簡単に眺めてきたのだが、先日も書いたようにここ2年程のあいだに Python の本が他を圧倒している。C や Java よりも棚面積が広い。そして、気の毒に Perl の本は定番と言えるオライリーの本を初めとして、ジュンク堂の大阪本店ですら5冊ていどが置かれているだけだ。もちろん、Perl 使いでもあった一人としては何か割り切れないものを感じる。というか、ここ最近では PHP の本ですら、どちらかと言えば PHP という言語の本よりも Laravel や CakePHP といった出来合いのフレームワークの本が増えていて、もうデザイン・パターンなんて誰も関心を持たなくなったらしい。また、一世を風靡していた関数型言語の本は、ほそぼそと Haskell などの本は出ているものの、既に一緒くたに並べられて際物扱いとなっているようだ。そして、言うまでもないことだが、ここ2年ほどの間に着々とふえているのが Rust の本である。正直、関数型言語が流行していた当時と同じく、国内で目立つ Rust の実績なんて聞いたこともないがね(実装例を Qiita などに並べるだけなら馬鹿でも公開はできる。ソリューションとして現実に役立つ「実績」となるかどうかが、道具の本当の価値だ)。

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