Scribble at 2022-01-31 15:33:55 Last modified: 2022-02-01 14:56:16
ここ数年にわたって愛用しているデスクトップ画面の壁紙は、スイスの製薬会社である Roche が公開している上記の生化学反応図を壁紙用として Photoshop で編集しなおしたものだ。
この図はドイツの生化学者であるゲルハルト・ミハル(Gerhard Michal)が1967年に初めて公表したものだった。そのあと何度か改訂版が作成されたのちに、ロッシュが協力して専用のサイトを立ち上げて公開したり、あるいはポスターを販売している。代謝経路の図として科学的な価値があるだけではなく、この図を見れば逆に一目瞭然であるように、ものごとはそう単純ではないという厳正な事実を知らしめてくれる、或る種の科学哲学的な戒めとも言うべき印として有益だと思う。
ちなみに何度も強調しておくが、このような「ディテール」を描く意義を強調しているからといって、日本の社会学者がやっているような、些末な(とりわけ部落やAV業界や都心の凡人どもに関する)事実を執拗に細かく記録するだけで価値があるかのような思い込みは、ただのセンチメンタリズムでしかない。小学校からの帰りに通る畦道で見かけた赤とんぼの数を指折り数えるようなものである。それを1,000年ほど続けられたら生態学的な統計としての価値を認めてやらなくもないが、せいぜい長くても数年の記憶しかないノスタルジーだけで何が分かるものでもない。それがノスタルジーだと分かっていて、岸君のように小説を書くというならわかるが、まじめな顔で社会学の業績だと言われても困る。