Scribble at 2022-06-17 09:17:35 Last modified: 2022-06-17 21:46:39

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難しい、とっつきにくい、役に立たない……

数学に対するこうしたイメージは、すべて「錯覚」です。

数学とはどんな学問か? 数学嫌いのための数学入門

まったくこの通りだ。

この手の「錯覚」を作り出したのは、もちろん「理系」「文系」という下らない差別語や卑怯な謙遜語を生み出して使っている凡人どもだ。特にこの国では多数の人々へ影響がある仕事についている人間に限って、つまり新聞記者や出版関係者や国家官僚や広告関係者や大学教員に限って、こういう未熟な偏見を抱えている連中が巣食っているともいえる。報道関係者や国家官僚は、もちろん自分たちの低学歴(海外ではメディアのライターや国家官僚なんて博士号をもってるのが当たりまえだ)というコンプレックスから知らないことや興味のないことを切り捨てるために濫用し、大学教員も(海外の伝統的な大学では理数系の研究者も歴史や政治といった人文・社会系の高度な教養をもつことが多いし、人文・社会系の研究者でも学部レベルの数学の勉強くらいはやるものだ)蛸壺教育でやっと研究者になれたというコンプレックスを隠すために、人文・社会系の知識は必要ないとか文学に数学の知識は不要といった浅薄な議論を煙幕のように繰り返す。これに乗じて、これまで何度もポピュリストの政治家や企業経営者が発言を繰り返してきたように、「社会で微分は使わない」とか「女は三角関数を勉強しなくてもよい」とか「高齢者は法律なんて知らなくてもいい」とか「知的障碍児に高等教育は不要」といった、愚劣としか言いようがない放言を繰り返す。言っておくが、われわれ真の保守は江戸の国学の時代からこのかた、LGBTQ だろうと外国人だろうと難病患者だろうと障碍者だろうと男性だろうと女性だろうと子供だろうと老人だろうと、あるいは生きていようと死んでいようと、彼らが〈そうである〉というだけの理由で差別したり特別扱いするなんていう不当で料簡の狭い思考など最初からしない。

それから、本書が興味深いのは、僕が当サイトでも公開しようと思って書き足している、「対数はどうして分かりづらいのか」というテーマを丁寧に取り上げていることだ。数学の通俗本の大半が、対数や微分方程式について初心者の多くが感じる分かり難さやとっつき難さというものを、なまじっか自分たちが数学者であるがゆえに軽視したり過小評価しており、たいていロクでもない数学ファンのための数学入門に堕してしまっているのだが、本書は通俗本の中でも他人にお勧めできる。

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