Scribble at 2024-08-16 12:05:42 Last modified: 2024-08-16 13:04:47
僕は、オンラインでものを書いてる人々、特に仕事全般とか人事採用、経営、マネジメントなどに関わるメディアの記事やブログ記事や書籍のレビューというのは、根本的なところで偏っていると思っている。それは、「ネット・ユーザであること」において全員が一致しているからだ。もちろん、僕もその一人ではあるから、一定のバイアスがかかっている可能性はある。しかし、少なくともこういうバイアスがかかっている可能性があると自覚して、自分の文章を作ったり推敲しているかどうかには違いがあるだろう。というか、その程度の自覚と品質に差がある文章を書けなくて何が哲学者だという気もするから、当然と言えば当然のことだ。
そもそも、仕事とか商売とかマネジメントとか経営というものは、あたりまえだがインターネットなんて存在しなかった数千年も前から世界中で多くの人達が携わってきたことなのであって、たかだか民生サービスとして30年ていどの歴史しかない通信技術を利用しているというだけの理由で、何か劇的にものごとを変革しているなんていう主張は、或る種の厨二病というか、錯覚、あるいは実際にネット・ビジネスや IT 産業に携わっている人々の自己保存的な(自分は間違ったことをしていないと思いたいという)感覚によって歪められている可能性がある。
たとえば、いわゆる「Slack モンキー」の三下エンジニアのブログとかにすごく多い話題だけど、頻繁に見かける意見として、「メールではなくチャットを使うようになって『生産性』が上がった」とか、社員どうしのコミュニケーションの問題が解決したとか何とか、その手のチャット礼賛みたいなものがある。僕はこの主張には非常に強い疑問を感じていて、そもそも論証としての根拠も弱いし、実証としてのデータもないのだから、おおむね嘘だろうと思っている。何か効用があるとしても、恐らくは無能が凡人ていどに仕事ができるようになったというくらいの意味しかなく、もともと生産性の高い人々にとっては、そもそもチャットだろうとメールだろうと余計なコミュニケーションを避けることが望ましいのであって、チャットでクリエーティブな会議なんてありえないのである。それは、数日間とかの異常な長さのブレインストーミングで何かやった気分になりやすいだけの無能な連中がバラ撒いているだけの錯覚だ。
具体例を挙げると、もちろん僕は常人の3倍どころか5倍の生産性を(状況と待遇しだいで)誇っているわけだが、僕らから見てチャットなんてものは逆に僕らの生産性を下げるだけのツールでしかない。確かに、会社の部長として全社員に向かってプライバシーマークの運用にかかわる通達を出すとか、あるいは定期的に実施している研修の動画を配信するとか、その手の用途にチャットは使っているが、それは僕らが必要だからだ。それ以外の、他人が必要と感じて僕らに投げてくるチャットというのは、その大半が「おまえ自分でそう思うんだったら、チャットでいちいち相談なんてしないで、端的に実行しろよ」と言いたくなるようなことばかりだ。要するに、彼らは僕という神のような存在に何かを担保してもらいたいわけで、僕が「やれ」と言って、やっと安心して何かができるわけである。これは、敢えて「神」と言ってるけれど、実は真面目な話として天皇制もこれと同じ仕組みで「神」としてバカな右翼やインチキ保守どもに利用されてきたという歴史がある(たぶん他の地域でも似たような宗教と政治の関係はあったろう)。つまり、凡人がなにごとかをやるにあたって責任を転嫁できる便利な「神」というものが必要なのだ。
もちろん、天皇制の是非に付いても批判的であるだけでなく(保守を自認する人間が言うのは奇妙かもしれないが、僕は天皇制はただの人権侵害なので廃止すべきだと思う。これは、僕が「日本」なんていうセコいスケールではなく人類史のスケールがものを考えている保守だからだ)、社内でもそういう扱いをされるのは困る。僕は責任を転嫁されるためにいるわけではなく、本当に distinguished なエンジニアだから社内で(人柄はともかく)圧倒的な知識と技術と経験で君臨しているのだ。
冗談じゃない。では、チャットのように気軽な(そして気軽に他人へ相談するという体裁で責任を転嫁できる)ツールに頼らないで生産性を上げるにはどうすればいいのか。やはり、人事や採用の時点で問題があると思うのだが、やはりその仕事に興味や熱意が本当にある人材を集めて、自分ひとりで可能な限り学んで自立して判断できる人材に期待するしかないと思うんだよね。僕に質問してくるパターンのおおよそ8割は、IT パスポートか基本情報処理技術者ていどの知識があれば自分で判断して客に質問したり確認できるようなことばかりだからだ。ネット・ベンチャーの社員でありながら、そのていども知らないから僕に聞いて、そして何を確認したらいいのか初めて分かって客に質問するという、およそ生産性とは縁のないことをチャットでえんえんと繰り返している。そして、僕が他の会社の話を聞いていても思うのは、おおよそ他の会社でも状況は同じであって、チャットが生産性の向上に対して(メールほどではないにしても)下方圧力になっている可能性があると思う。