Scribble at 2025-03-23 10:46:04 Last modified: 2025-03-23 13:10:32
さすがにプロダクト・デザイナーを名乗る人物とあって、ちゃんと XCode で Apple Watch の文字盤をデザインされている。また、ビジュアルに偏っているきらいはあるが、それなりの水準でデザインされているので、自分なりに納得のいく文字盤を設計したい方は参考になるサイトだと思う。ただし、紹介されている文字盤そのものはあんまりいいとは思わないが(笑)。
技巧はともかく、デザインとしてあまり感心しない理由は、僕もいちおうデザイナーを名乗っていて、しかも印刷物やウェブのデザインについては一定の見識と経験と技巧をもつという自負があるからだ。たとえば上のサイトで公開されている別のページで、この人物が関わったという古いムック本の表紙について、彼が自分でデザインした表紙を出版社のデザイナーが変えてしまって、抗議はしたがそのまま出版されてしまったと言っているところなどに現れている。正直、ご自身でデザインしたという表紙が一緒に紹介されているが、印刷物やウェブのデザイナーとして言わせてもらうと、タイポグラフィとしては出版社のデザイナー(つまり実際に発行されたムック本のデザイン)の方が優れていると思う。申し訳ないが、この方は Apple Watch の文字盤についても言えることだが、タイポグラフィについては基本的な知識や経験が不足していると思う。
何を受賞したの、誰の友達だかはともかく(僕もいちおう広告系のアワードでエンジニアとしてだが入賞している)、「デザイナー」を名乗るだけで、ビジュアルのクリエイティブを何でもかんでもプロダクション・レベルでデザインできると過信するのは危険である。御本人はプロダクト・デザイナーを名乗っているのだから、特定分野とか用途の製品によっては JIS のような規格や法令による規制すらあることはご承知だと思うが、逆に出版社のデザイナーはそういう規格や PL 関連の法令を知らない。そして、デザインとはそういう知識や技能や経験も含めているのであって、そこがわれわれプロのデザイナーが、芸大の学生や、あるいは「あなたも今日から Web デザイナー」などと唆されて、脱サラして長野とか大分に移住する無能なクラウド・ワーカーどもと違うところなのだ。分野によって専門的な知識や技能などは違っているわけで、タイポグラフィの技能や知識や要件が求められる印刷物について、工業製品のデザイナーが何の準備も勉強も経験もなく「デザイン」だからといってプロダクト・レベルで成果を出せるなどと考えるのは軽率である。それは、耐震基準を知らないバンクシーに住宅を設計させるようなものだと言ってもいい(いや、耐震基準を知っているはずの建築家ですら、なんでもかんでもコンクリートや木を使って持続可能性に欠けたクズみたいな設計をするやつがいるわけだよ)。