Scribble at 2024-05-04 14:06:20 Last modified: 2024-05-05 07:44:45

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世界保健機関(WHO)が「ゲーム障害(ゲーム依存症)」を疾病として正式に認定するなど、テレビゲームはなにかと悪者にされがちな一方で、ゲームをよく遊ぶ人は意志決定能力や運動能力が高いことが過去の研究で判明しています。さらに、ゲーマーの認知機能に注目した新しい研究では、アクションゲームを頻繁にプレイする人は複雑な情報処理能力が高い傾向があることが突き止められました。

よくアクションゲームをプレイする人は「注意力」と「認知力」が高いことが判明、ゲームでエリートが養成される時代が到来する可能性

この手の与太話には、常に二つの欠陥がある。まぁ心理学というのは、その学問分野じたいが認知バイアスの実例みたいな論文で溢れかえっているわけで、哲学者のわれわれから見れば苦笑する他にないのだが、やってる当人はハーヴァードや MIT の教授であろうと気づきにくいものだ。

一つめの欠陥は、もちろん中学生くらいになれば理解できるように、原因と結果の取り違えである。ゲームが上手いやつは特定の認知機能が高いというのは、もちろん特定の認知機能が高いからこそゲームが上手いだけの話にすぎない。両者が統計学的にどれほど相関していようと、結果が原因を引き起こすことなどありえないわけで、これはデータや理論の問題ではなく、研究者の・・・言っちゃ悪いが知性の問題なのだ。

そして、この手の話で二つめによくある欠陥は、この相関関係を別の関係にまで無条件に応用しようとすることである。上の GIGAZINE の記事でも、ゲームがうまいだけの連中がサラリーマンやプログラマとしても有能であるかのようなことを示唆しているが、そんなことはない。ゲームがうまいやつらの大半は、結局のところゲームがうまいだけにすぎないのだ。

そして、いま述べた二つに関連して三つの欠陥として加えておきたいのが、かなり前にも書いたことだが、こういう話題になると大半の人が「ゲーム」という概念を遊び事として錯覚しやすいということである。そして、いわゆるゲーミフィケーションというアイデアを弄んでいる人々も、所定の手順でビジネス・プロセスを遂行している従来の大半の仕事も「ゲーム」の概念に包摂できるという事実に気づいていない、短絡的な発想のアマチュア経営学(あるいはアマチュア経営者)だということである。大学でゲーム理論を真面目に学んだなら誰でも知っているように、フォン・ノイマンなどが議論していた "game" とは、IT ゼネコンのプロマネが料亭で総務省の官僚とやってる芸者遊びや、高校生がゲーセンでやってる脱衣麻雀だけを意味するわけではないのだ。

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