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石井淳蔵『営業が変わる―顧客関係のマネジメント』(岩波書店、2004)

営業活動の「プロセス・マネジメント」を推奨する一冊である。先日、石井氏の『ビジネス・インサイト』という新書を酷評したが、こちらは営業について(新書のように手軽に読める体裁としては)類書が殆どないと言ってよい、優れた本だと思う。営業という仕事のプロセスやスタイルについて、「タカシ君」という新人営業担当者へ向けて書かれた手紙の体裁を取っているが、内容は幅広い話題が扱われていて、町中の書店に二束三文で転がっている〈エイエイオー的な腕力営業〉の精神論とは完全に反対の方向を示していて、元学者の卵であった人間が言うのも変だが、逆に笑ってしまうほどの清々しくアカデミックなアプローチで営業活動が議論されている。

なお、本書は「岩波アクティブ新書」という新書のレーベルで出版された一冊なのだが、このレーベルは2002年から2004年までの2年間しか継続しなかった。ビジネス関連のタイトルが多く、岩波書店のレーベルとしては風変わりと言ってよいだろう。ビジネス本なり自己啓発本が流行している時期に開始されたのはいいが、やはり岩波が資本制や自由経済の世の中で〈うまく立ち回る〉ような本を出すというのは、日経新聞が革マル派の機関誌を出版するようなものだからか、既存の読者には受け入れられなかったのだろう。そして、書店の経営や書籍の物販に明るい人ならご存知のとおり、岩波書店の本を配本してもらっていない書店が、ビジネス本を出したからといって急に配本してもらったりはしないため、多くの書店では岩波でもビジネス本を出しているということに、そもそも気づかない。よって、従来どおりの岩波の本を読む読者層の書店にしか並ばないため、そら売れないわなという話になる。このレーベルだけに限って、せめてキヨスクにでも配本してもらえたら結果は違っていたかもしれない。

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