Scribble at 2021-10-09 17:40:14 Last modified: 2021-10-09 17:45:36

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・高杉尚孝『論理的思考と交渉のスキル』(光文社、2003、https://www.amazon.co.jp/dp/4334031811/)

・中川佳子『「情報を見せる」技術』(光文社、2003、https://www.amazon.co.jp/dp/4334032060/)

・石野雄一『ざっくり分かるファイナンス』(光文社、2007、https://www.amazon.co.jp/dp/4334033970/)

・加登豊『管理会計入門』(日本経済新聞出版、1999、https://www.amazon.co.jp/dp/4532113695/、URLは第2版)

時間の余裕があったから、さらに4冊ほど目を通した。これらの本は過去に一度でも目を通した機会があるから、さほど再読に時間がかからないのは当たり前のことだが、それに加えて会計の本は概説書も何冊か読んだばかりなので、既知の話題が多くて読み飛ばしても問題はなかった。ただし、上記の4冊で他人に通俗書としてお勧めできるのは、『ざっくり分かるファイナンス』だけだ。

まず、『論理的思考と交渉のスキル』は企業で部門長を命じられるていどの人材なら、コスト・センターの人間であっても知っていて当たり前の話だろうと思う。加えて、いまどきマズローなんてインチキ心理学をネタに元マッキンゼーの人間が交渉を論じるなんて、ありえない無知だ。

次の『「情報を見せる」技術』は、僕らのようなプロのデザイナーが読み返す必要などあるのかどうか疑わしかったのだが、やはり手早く通読してみるとレベルの低さに失望する以外の反応はなかった。しかも、デザインで意味があるのは黄金比と平方根の比だけしかないなどど書ける人間がいるとは驚きである。バカは無敵とよく言うが、いくら周りから指摘されない無敵の人々でも生きていられる国だからといって、本まで書かせてもらえるとは結構な世の中になったものである。

それから『ざっくり分かるファイナンス』は、ほぼ財務会計とコーポレート・ファイナンスの通俗書と言ってよい。既にこの手の話は幾つかの本を読んだところなので、僕には殆ど新しく得るものがなかったけれど、入社して10年以上が経過した〈上場企業の人材〉ならお勧めできる。逆に言えば、本書の大半が上場企業のファイナンスのことしか想定していないので、株式を公開しておらず、第三者増資割当もやってない中小零細企業の社員には関係のない話だと弁えて読むべきだろう。また、10年以上が経過していても若手が読むべき本だとは言ってない。正直、この程度の知識がない営業やウェブのディレクターなんて掃いて捨てるほどいるから、キャリアが20年でも、こういう話題について知らなければ、謙虚に読むべきだと思う。

最後に『管理会計入門』だが、上記の写真と URL は第2版のものだ。僕が手にしているのは第1版だから、それなりに古い内容である。ただ、内容が大して変わらないという前提で評価すれば、本書はどう考えても入門書なり通俗本として中途半端だ。管理会計から経営管理まで非常に多くの事項を詰め込んでいて、これだけの事項を雑に扱うくらいなら300ページを超える管理会計の概説書をきちんと書くべきであろう。あるいは、このように新書サイズで管理会計を解説するのであれば、せいぜい原価計算と予実管理だけを取り上げたらいい。実際、大半の企業で管理会計と言えば、売上やコストの管理を目的として部門長が使う資料を運用することなのだから、業種を無視して QC サークルの話など書いても意味はないし、正直なところ著者は製造業の上場企業しか頭にないのだろうか。

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