Scribble at 2024-03-13 07:54:05 Last modified: 2024-03-13 08:02:19

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プライバシーマークの現地審査と文書審査でもらった指摘事項に対応するという、かなり大掛かりなタスクが完了したため、ようやく本年度の年間計画として掲げている弊部の主要なタスクに取り組める(もちろんルーチン・ワークはやってるわけだが)。その一つとして、これは毎年のことだが「会社案内」の制作というのがあって、これを細かい内容は四半期ごとに更新しているのだが、デザインや内容の構成も含めて数年ごとに刷新している。本年度は、そのリニューアルに取り組むべきタイミングだと判断したので、今週からタスクの一つとして進めている。

新しく採用する内容として、弊社のコーポレート・サイトで掲載している英語のページを反映させたり、事業部やサービスの紹介を丁寧にやるとか(ページはせいぜい各事業ごとに2ページの見開きになる)だ。ちなみに「見開き」と言っているように、社内でリリースするときは A4 サイズの PDF として社員に利用してもらっていて、PDF あるいは PDF から1枚ずつ印刷して使うだけなら「見開き」という概念は不要だろうが、僕は印刷する前提で版下を作っているから、2ページめと3ページめは印刷した際に見開きとなるようなレイアウトで制作している。

さて、そういう経緯があって他社の会社案内や会社概要の PDF も参考にさせてもらっている。すると、上の画像は HONDA の会社案内だが、他にも良品計画の会社案内なども同じく、このところ landscape というか、スライドっぽいデザインの会社案内を見かけるようになった。そして、単に従来の印刷用媒体を landscape にしたというだけではなく、これは明らかにスライドや Zoom などでスクリーンに表示させて使うことを想定して制作されているように思う。そういう事情であればこうなるのも分かるには分かるのだが、僕はあまり感心しない。

まず、これがスライド用だと分かっていない人から見たら、単に「ショボいデザインの会社案内」に見えてしまうという点で損をしていると思う。「スクリーン対応版」などと表記しておいたり(となれば、印刷用も同時に制作するという前提になるが、いまや上場企業でもそんなコストはかけていられないのだろう)するならともかく、とにかく良品計画の会社案内を見ても、ただ単に内容の薄い粗末な資料という印象になってしまっている。

どうしてこういうものになってしまうのかというと、もちろんデザイナーの力量不足である。縦のものを横にして、スクリーンでも見やすいように文字を大きくしてコンテンツをスクリーンで見やすいように配置しました・・・こんなことなら、そのへんのデザイン学校の生徒でもできる。そして、このところ大企業でも、こういう「卒業制作レベル」のものをプロダクト・シーンに投入してくる事例がやたらと多い。これでは、そのうちデザインのような分野でも生成 AI を導入した工程に置き換わると言われるのも当然だ。こういう、AI 開発企業がリリースするか、それとも専門学校が輩出するかの違いしかないロボットどうしの優劣など、議論しても無意味であろう

そもそも、スクリーンを使ったプレゼンテーションという用途でコンテンツを制作する場合に、いまだにこういう参考資料風のレイアウトしか発想できないというのが困る。もし、会社説明会の会場なり Zoom のセッションに参加している人々に対してプレゼンテーションするという用途を最優先に想定しているなら、例えば僕のようにレッシグ(高橋)・メソッドのような、キーワードだけを中央に置いたスライドを使ってもいいわけである。でも、それをそのまま PDF にしてしまうと、PDF を読むだけの人には殆ど理解不能である。そうなって、初めて一枚の中に伝えるべき内容をどうやって配置したり表現するかという順番でレイアウトやコンテンツを考えてもいいわけである。これまで使ってきた印刷用の会社案内をどうやってプレゼン資料風に手直しするかという発想で手直ししかしていない人々には、そういう本来の用途から考えた設計ができないわけである。そして、それゆえに上記のような、従来の資料を薄めたようなショボいものしか作れなくなるというわけだ。

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