Scribble at 2021-12-27 10:51:22 Last modified: 2021-12-27 11:04:40

インフォサイエンスという会社が運営している「あしたのオープンソース研究所」というサイトがあって、システム開発の言語やライブラリを数多く紹介しているのだけれど、流行のツールや言語を手当たり次第にサブ・コンテンツとして立ち上げては一定の数のページを公開したきりで全く更新していないため、アーカイブというよりも廃品が蓄積されてゆくゴミ屋敷の異臭を放っている状況だ。かなり言い方は厳しいが、コンテンツをメンテナンスするのも、ウェブ・ページを公開している者、つまりは日本人としての矜持や礼節というべきものであろう。インターネット上においては「アホらしい」と言うべき観念だが、しょせんは技術発展と共に消えていく(と僕は思っている)ウェブのコンテンツや媒体においては、これも一つの〈滅びの美学〉に通じるようなカタルシスの表現であろう。

繰り返しておくが、「ウェブ・ページ」という媒体の形式は、そう遠くない未来にインターネット上の情報伝達様式としては消えてしまうか、少なくとも obsolete となってしまうはずである。よって、ページのレイアウト・デザインだのコーディングの技法だと、刹那的とも言うべき思考や規範や理屈について学んだり厳格な基準とかルールとか理想を追うのは、はっきり言って徒労である。

デザインやシステム開発というものは、そもそも「デザインそのもの」を学び、考えて、何事かを会得するべきであって、目の前の Illustrator CC 2022 の操作方法なんてものは、せいぜい数週間で習得できるていどの技量で考え、成果を上げておけばいいのである。しょせんは設計したり開発している側も何ほどの見通しすら持っていない近視眼的な前提で作られただけの「商品」に、数週間を超える工数を人間様がつぎ込むのは時間と精神と労力の無駄なのだ。そういうものは、次から次へと使い倒し、しみったれたセンチメンタリズムなどかなぐり捨てていくのが、エンジニアリングという立場での「正義」であろう。これこそ、アメリカ人が18世紀から現代にかけてメンタリティとして確立した pragmatism というシニシズムの極致だ。彼らには、そもそも TMT (terror management theory) やスティーヴ・ジョブズの「今日死ぬとしたら」式の本質的思考なんて必要ない。最初から、自分たちが死ぬまでの秒数を数えて生きていることを知っているのだ。

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