Scribble at 2023-05-18 11:26:44 Last modified: 2023-05-18 13:30:17

添付画像

具体的な内容は書けないしデザインとしてクライアントに決裁されたわけでもないから、これをこのまま使うとは限らない。ともあれ、ひとまず連休が明けて正式に受注したので、現行のサイトから素材を引き抜いたり、クライアントから追加で資料をもらったり写真をもらったりして、トップ・ページのデザインは確認として先方に渡してある。

実際には、先週中におおよそ出来上がっていたのだが、何パターンか試してみて作りこんだものを提出している。上記に添付した画像は敢えて見辛く処理してあるから分かり難いとは思うが、たとえばヘッダーは左からロゴ(新しく作り直して SVG として使っている)、グローバル・メニュー、それから強調したい「仮入校申し込み」と「資料請求」のボタンが並んでいるわけだが、もともとは教習所のテーマ・カラーを背景色に使っていた。だが、昨今の傾向を見ているとヘッダーにテーマ・カラーを使うのは重たい印象があるため、すっきりと白に変更している。

こういうのは、もういまではクラウド・ワーカーとかが CMS のテンプレートを拾ってきて1ページ5,000円とかで作っているのが相場のようだし、以前も書いたようにそれが CMS のテンプレートみたいだと笑ったりできるのは僕らのレベルのデザイナーだけだろうから、クライアントにしてみりゃコピペだろうとなんだろうと安くてきれいならいいということにもなろう。

でも、繰り返して強調するように、それは運営主体としてもデザイナーとしても作り逃げの発想である。短期間の打ち上げ花火みたいなキャンペーン・サイトをぶち上げて、もとからある認知度に乗っかってアクセスを集めるだけでいい、巨大企業や有名企業のサイトなら、そういう方針で制作してもいいだろう(そして、そういうサイトに限って「クリエーティブ」とかなんとか余計なことに工数を使うから、制作会社は儲からないのだ。大手広告代理店案件こそテンプレートで手抜きするべきであり、それを悟られないように自社オリジナルのテンプレートを開発して吐き出せるデザイナーやエンジニアがいないと、いつまでも飾り職人の秀さんみたいな生活を送ることになる)。

それから今回は、現行のサイトではコンテンツの大半がバナーみたいに並んだメニューからページを遷移して読んだり見るような仕組みになっていたため、これは現行の初歩的な UX という観点で言ってもよろしくないから、過剰にトップ・ページへ詰め込むつもりはないにせよ、いくらかブロックとして全体の様子を把握できるような構成にしてある。正直、僕は免許を持っていないから教習所に行ったことはないのだけれど、自動車教習所って初めて免許をとる人にしても、せいぜい長くても数ヵ月くらいしか通わないところだろう。合宿なら、殆ど教習所という施設そのものへ行かない人だっている。すると、車やバイクに乗りたいとか免許をとらなくてはいけない仕事や家庭の事情がある人(恐らく大半は10代の若者だろう)にしてみれば、そこを利用して免許を交付してもらい、自分で車やバイクに乗れるまでの手順を簡単に知りたいだろう。そういうコンテンツを、もう少し丁寧に作って見せた方がいい。そうしてもらった免許で、自分の車やオートバイを運転するというイメージをもってもらうことが大切だと思う。そのゴールが見えていないと、営業にならんよ。

いま述べた話は営業でも昔から言われることだから(自動車教習所のサイトは営業目的のサイトでしかあるまい。実際、是非の議論はともかくとして、教習所を運営する事業者の組織概要や代表者の経歴なんて掲載してるサイトは一つも見たことがない)、リクルートなど大手の会社に勤めている営業の方ならご存じだろうと思うが、セールスの研修でよくあるレッスンで教えられることと同じである。講師から1本のペンを渡されて、それを私に売って見せよと言われる。たいていの受講者は、そのペンについて、いかに良い品質であるかとか、そのペンを芸能人の誰が愛用しているとか、ペンのブランドを高めようと適当なことを色々と言う。

でも、彼ら受講者はたいてい失格である。なぜなら、ペンのブランドというものは買う側が決めるからなのだ。そのペンが本当にドイツで製造されたのか、それとも中国の小汚い工場で作られたのかなんて、実は営業マンにとってどころか客にとってすらどうでもよいことである。ブランドとは、そのペンを手にした客がペンを手にして何かやってる自分の姿をどう思うかを都合よく想像させるための仕掛けであって、ブランドを利用する営業とは、商品ではなく客を効果的に利用することでしか成功しないのである。

したがって、教習所の建物が奇麗だとか、SEGA のゲーセンに置いてあるようなシミュレータが使えるとか、そういうことを訴求しても実は効果が低いのであって、免許を取って車やバイクに乗ってあれをしたりこれをする僕や私というイメージを訴求する方が効果的なのである。実際、トップ・ページのキー・ヴィジュアルとして、教習所の教官と生徒が教習車に同乗している写真とか、教習所の施設で談笑してる男女のシーンというのが使われていることが多いのだけれど、あれは駄目である。どれほど施設が奇麗だろうと、あるいは教習所の教官役にキムタクや佐藤健を起用したとしても、それは一時的な話題性でアクセスを呼び込むくらいの効果しかないだろう。

ただ、実際に教習所のサイトを見ていると、もう海外も含めて100くらいは見ているのだが、特に日本国内の教習所は圧倒的に施設や教習中のシーンを前面に押し出しているサイトが多い。よって、それらの中での順位争いをしているため、後からサイトをデザインするときにも、そういう写真を使うことが前提になってしまっているのかもしれない。だが、それは theme-setting 内部のバイアスがかかった争いであって、偽の比較・競争である。なので、本当はいま上記のように教習車が全面を覆っているような写真は使いたくないのだけれど、車を運転して楽しんでる様子だとモデルさんが必要でお金がかかるだろうから、車だけを写したり教習所を写してる写真くらいしか手軽に使えないという事情は分かる。

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