Scribble at 2026-04-17 06:21:34 Last modified: unmodified

弊社は12月が会計年度の期末なのだが、人事考課は4月から3月という期間で評定しているため、いまがちょうど人事考課のフィードバックをやっている時期に当たる。この時期になると、もちろん本年度の目標を設定していて、多くの企業で実施しているように MBO や SMART といったメソッドなりスケーリングを使って、会社全体から個人の規模にいたるまでの目標を設定する。僕も、役職者として評定される一人であるから目標を設定していて、上長となる役員へ目標を設定したシートを提出している。

このような、「目標管理」として知られている人事系の施策では、目標を達成すること(達成度や達成率)だけに執着するスケーリングを採用することは良くないとされていて、その理由は、達成度によって直に評定が決まってしまうと上長の裁量が不要となり、機械的な件数だけの問題になってしまい、したがって達成しやすい目標にしたくなるインセンティブが働くからだ。こういう目標の設定を human resource の分野では "sandbagging objectives" と呼ぶ。たとえば、僕のように情報セキュリティを担当している部署では、「年間の重大な情報セキュリティ事故の発生件数を0とする」なんていう目標を設定してしまうような事例が該当する。実際には、年間の重大な事故なんて起きないのが普通であり、そして大して仕事をしていなくても脅威レベルや脆弱性レベルが重大なリスクの顕現に至らない場合が多いわけなので、こういう何も仕事をしていなくても達成できてしまうような目標を掲げても意味がない。

かといって、ジャック・ウェルチなどがそうだったと言われるように、部下へ過剰なほど高い目標を上長が要求したり設定させること("ambitious objectives" あるいは「ストレッチ目標」などとも言われる)は、逆にモチベーションを低下させてしまう。たとえば、僕は社内でヘルプデスクのような業務も担当しているが、社員の業務パソコンが故障した場合に「何分以内に業務復帰できること」なんていう目標を設定することは、概して有害である。たとえば商談が始まる1時間前に、しかもリモートで神戸にいる社員が(まさにいまそうなのだが)「どうしよう」などと言ってきたところで、こんなものはどうしようもない。通常なら、商談をするのが Zoom ならパソコンではなく業務用の iPhone で対応しろと言うか、あるいは緊急避難的に私物のパソコンを使ってほしいと言う以外にあるまい。僕がまさかこんな安月給で代わりに梅田の淀橋までタクシーを飛ばして、開店直後にノート・パソコンを代わりに自腹で購入して届けてやるなんて義務があるとは思えない(しかも、1時間後の商談に間に合うわけがない)。こういう、どだい不可能な目標を常に満たすよう設定すると、当然だが夜中にも同じ基準で対応することになるので、その準備として寝室に業務用の iPhone を置くなんていう、これまで僕が絶対にやらなかったようなことをやる羽目になる。当然だが、僕もそうだし、たいていの社員は半年も経たずに辞表を書くことだろう。

だが今回の話題は、実は人事考課ではない。

人事考課や目標管理という話題では、このように結果だけに考課の基準を設定するのではなく、たとえば過程や経過を振り返って評価することも勧められる。そうすることで、機械的な数量だけではなく、上長の裁量が加えられるからだ。しかし、結果だけではなくプロセスも重要だなんて言っていられるのは、その結果が破滅的でないからこそであって、破滅的な結果をもたらすような無能、あるいは背任的なことをやる従業員は、即座に降格させたり何らかの懲罰を与える必要がある。もちろんクビにすることもあろう。そして今回の話題は、トランプは、その破滅的な結果になり得るのだから、プロセスがどうこう言ったところでしょうがないのであり、このような結果に至った責任を、アメリカの社会科学者は問われてしかるべきだと言いたいわけである。

簡単に言えば、アメリカの社会科学者たち(そして、その劣化コピーである日本のリベラル系の社会科学者たち)がさんざん口にしてきた「自由」、「正義」、「フェア」、「権利」といった言葉は、概念としての当否はともかくとして、全てトランプ自身が口にして転倒させてしまったものだ。いまやトランプ自身がこれらの言葉をもって MAGA というスローガンを正当化し、MAGA というスローガンからの帰結として多くの愚行なり蛮行(と、僕には思える)を行っている。そして、実はこの責任の一端はアメリカのリベラルな社会科学者にもあるというのが僕の意見だ。もちろん、保守の思想家として「メシウマ」だと嘲笑したいわけではない。僕だってトランプ政権など早々に、いや暗殺などしなくてもいいが、退陣してもらいたいと願っている一人だ。

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