Scribble at 2021-07-22 08:30:35 Last modified: 2021-07-29 13:05:11

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やん Syringe @skd7 Replying to @skd7 BBCでも二軍とか二流、三流的なライタが差別意識丸出しのフェイク記事を垂れ流すことある。例えばこちら。

https://twitter.com/skd7/status/1417859709416083458

当サイトを長らくご覧いただいている方はお分かりのとおり、僕は「オタク」という言葉を侮蔑的に使っている頻度が多い。もちろん、何かについて熱意なり相当なコストを払って取り組んでいる人々を愚弄したり揶揄する意図はなく、その対象について何らかの差別をしたいわけでもない。つまり、牛乳瓶の蓋だとか、日本の SF 小説だとか、あるいは AV 女優に詳しいということを、量子コンピューティングだとか、日本の社会保障制度だとか、あるいは文楽に詳しいということに比べて無条件に〈低俗〉だの〈野卑〉だのと断じているわけではない。たとえば、国産車のトミカを集めてデータベースを作成することは、それが機械工学や材料工学あるいは玩具に関する産業経済学といった分野にも及ぶものであればなおさら、大学でプロパーがやっている学術調査に比べて劣っていると断定する根拠はないのである。

しかし、オタクと呼ばれる人々が概して体系的で堅実な勉強をせずに、自分の興味ある物事を専門家のように語りたがり、ただの情報量や蘊蓄だけの競争で愛好者コミュニティでのヘゲモニーを掌握したがる自意識プレイに陥りやすい精神構造をしているのも確かだろう。そして、そういうコミュニティにすら身を置いていない場合は、最も典型的な事例として、いわゆる「ドクター崩れ」と呼ばれる人々のように独りよがりな主張に至る。彼らは、なまじっか中途半端に大学院で体系的な勉強をしてきたせいで、いかにも専門的で客観的・中立的・体系的な議論をしているように見えるのだが、その多くは単なるアマチュアの夏休み研究にすぎない(もちろん、僕が PHILSCI.INFO で公開している論説も、その一つでありうる)。

上記のツイートを投じた人物も、大学で図書館学などを学んだていどで何者かになったつもりの一人なのだろう。情報学を専攻しておきながら、「二流、三流的なライタ」などと呼ぶ人物(Sue Perkins)について調べもしない。英語で Wikipedia を読めないのかもしれないから教えておくと、Sue Perkins はケンブリッジ大学で英語学を専攻した後にコメディアンとなり、ブッカー賞の選考委員や BBC の長寿番組のホストに就任している。同じコメディアンでも、太田光のように遊び半分で天下国家を語る、どう考えてもビートたけしの劣化コピーとしか思えない芸風や口調のすっとこどっこいとは全く次元の違う経歴、実績の持ち主だ。ましてや、言っちゃ悪いが大学院を出てるのかどうかも分からない IT ベンチャーの小僧に「二流、三流的なライタ」扱いされるいわれはない人物だろう。あと、プロの技術者として言っておくと、「ライター」という言葉を技術者・理系気取りで「ライタ」などと書く見識そのものが日本語話者としても貧困だと思う。こういう口先だけの愛国者というのは、「ニュカルチャのコピライタ」と書いて意味が通ると思っているのかもしれないが。

上記のツイートでリンクされている東洋経済の記事にも目を通してみたが、簡単な話で、この記事の本田雅一とかいう「ライター」(実績はすぐに分かるが、経歴は開示されていない。日本のライターはたいてい伝手だけで仕事をしていることは、僕が元雑誌編集者として知っているので、別に日本では例外的な人物ではない)にしても、あるいは上記の愚かなツイートを投じた〈素人〉にしても、要するに国際水準の人権に関わる考え方や思想についての見識が完全に欠落しているだけのことである。このような水準での議論を、勉強不足な文化的ナショナリストどもは、簡単に「西洋人のバイアス」だとか「イギリスの価値観の押しつけ」と断定する。加えて、オタクであれなかれ、喜んでメイドカフェを「利用」してる側の人間が言っても説得力などない。上記の人物が運営するメイドカフェについてのサイトも眺めてみたが、どれほど細かい些事を掻き集めて社会学者の真似事としか言いようがない文章を並べようと、結局は自分の性癖をありふれた趣味や文化的嗜好であるかのように記述して、人権についての不見識を自己弁護するだけのものでしかない。

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