Scribble at 2024-10-03 07:26:27 Last modified: 2024-10-03 07:29:16
決選投票で215票‐194票と、石破茂氏が1回目投票1位だった高市早苗氏に逆転勝利。9月27日に投開票された自民党総裁選の生中継番組の視聴率を分析した次世代メディア研究所代表の鈴木祐司さんは「数字を細かく見ると、決選投票前に視聴者はすでに軍配を上げていたことがわかる」という――。
こんなことは広告代理店の仕事をしていようがいまいが、たとえば大学でマスメディアとか社会学を専攻した人間なら常識だろうと思うのだけど、メディア・リテラシーは日本で殆どまともなレベルで教育されてもいないし、マスメディア自身が啓発するわけもないので書いておくと、この「視聴率」というデータを元にして何事かを正確に分析したり解説できる人間なんて世界中のどこを探しても存在しない。つまり、視聴率を元にした殆どの議論は、解説したり分析している人間の思い込みや背景知識や利害関係を投影しているだけであり、こうした分析や解説と称する記事や出版物そのものが一種の「広告・宣伝」なのである。
おおよそ知られているように、現在は特定の家庭に設置されている機器あるいは双方向通信が可能な受像機(テレビあるいはチューナー)で、ピープル・メーターと呼ばれる契約者個人の専用リモコンで、割り当てられた個人が観たい番組を専用のリモコンで観る。もちろん、個人に割り当てられているので、一つの世帯でリモコンが三つにも四つにもなったりするし、他の家族が勝手にリモコンを使ったり、他の家族が観たい番組を代わりに切り替える可能性もあり、決して厳密な「個人の視聴動向」を測定できるものではない。他にも、昔ながらのアンケートだとか、専用機器で1秒単位の計測ができるオンライン・システムなどもあるが、結局は誰がどういう番組を観ているのかを正確に測れるものではない。
そして、仮にそういう測定が厳密に実行できるシステムが採用されたとしても、或る人がどうして特定のその番組をそれだけのあいだ観ていたのかという、視聴者の動機や目的に関わるコンテクストは、何もわからない。他の家族が観たいからなのか、来客が観たいからなのか、それとも単なる環境映像のつもりで垂れ流しているだけなのかは、分析も解析もできない。したがって、正確に分析も解析もできないデータから何かを言うということは、それはつまり解説する人間の勝手な想像を喋るか、あるいはそうあれかしと最初から想定している結論に沿ってストーリーを喋っているだけというわけである。
そもそも、こういう視聴率についてごちゃごちゃと記事を書いたり本を書いている人間の 99% は、大学でマスメディア論や社会調査論を専攻したわけでもない素人だ。大企業や上場企業の「マーケティング部」とやらに在籍していたとか、広告代理店のディレクターだったといったていどの業界経験だけでものを書いているにすぎない。つまりは、こういう記事を書いている当人が、実は自分のやっていることが業界事情や利害関係をそのまま代弁して、視聴率によって何かが分かるという錯覚を宣伝している「販促活動」をやっているにすぎないという自覚すら欠落している、お馬鹿さんの可能性も高いのだ。たとえば、上記の著者は東大を出て入るが、しょせん「学卒」にすぎないし、しかも文学部の卒業だから、基礎的な統計学や社会学の素養もない可能性がある。いくら NHK の R&D で公費を使ってデータを弄くり回していたのであれ、そんなことで視聴者の動向など分かるわけがないのだ。