Scribble at 2021-09-02 15:13:02 Last modified: 2021-09-02 20:56:33

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リーダーシップ・コミュニケーション

今日は心斎橋の BOOK OFF で200円だった本書を手にとった。そして、たいへん申し訳ないが40ページくらいで読む価値がないと判断したため、これも再び古本屋へ戻すことになりそうだ。

「コミュニケーション」が大切だという話は、もちろん本を買って読むほどのことはない、企業人どころか人として当たり前の話であろう。だが、その難しさについても誰であれ感じるところだろう。自分はちゃんとやっていると思っている人がいるなら、それはカウンセリングが必要なほど深刻な錯覚に陥っているか、あるいはただの金持ちや権力者の息子か何かで周囲に実際はまともなコミュニケーションのできる相手がいないだけのことだ。ヤクザなどはコミュニケーションに失敗すると上や下から発砲されるリスクがあるわけで、テロ組織やカルト宗教やヤクザや犯罪集団、それから都内の一部の IT 企業に限って、高度なコミュニケーションのネットワークやノウハウを持っているものだ。その逆に、得てして軍隊や官僚組織の方が未熟・未発達・未整備というのが実情だろう。それゆえにこそ、巷ではわざわざ最強軍隊のマネジメントがどうこうという本が出回るのだ。そもそもにして、軍隊たるもの、本来ならどこの部隊であれ一律のマネジメント手法で成果を上げるべきであろう。そんなに成果として明白な優劣があるなら、それは当該国の軍隊で教育や訓練や評価が劣っている証拠である。

なんにしても、何か興味深い知見はあろうかと手にとってみたのだが、残念ながら読み進めるほど気味の悪い印象が強くなってくるのが本書だった。1/3 くらい読んだ時点で手から離した『事実に基づいた経営』で紹介されていた理想的な組織像に近い事例が次々に紹介されていた。その本と同じようにして、『リーダーシップ・コミュニケーション』の著者によれば、日本に置き換えると、客が店内に入るといきなり店員が全員で「らっしゃーい!」と声を上げたり、閉店後の反省会では翌日の課題を一人ずつ全員の前で発表させられたりする気違いラーメン屋のような姿が理想だという。そして、休日にはあちらこちらで社員が家族を連れて頻繁にパーティを開く「家族ぐるみ」の付き合いでコミュニティーを構築したり維持することが社員の仕事に対するモチベーションを向上させるそうな。そして、そのためにあれやこれやと説得したり説明する「戦略」を実行するのがリーダーの役割であり、具体的には全員参加でコミットすることがコミュニティの成功につながると社員へ訴えることが「戦略」なのだそうな。随分と安っぽくてスケールの小さな「戦略」である(こういう稚拙で有害な言葉遣いが企業経営というものを地獄へ向かう the point of no return なところへ連れて行ってしまうという議論は、もう何日も前に書いたので、ご参照いただきたい)。

このような記述が延々と続くのだが、これを読んでいって企業の役職として僕は何を学べるだろうか。部下を集団催眠にかけたり強迫観念に追い込む「メンタリスト」や「尊師」のような小手先テクニックだろうか。あるいは、大量のフォロワーを抱えていると何年か前に話題となったが、高級官僚の息子を自称する小僧みたいな暇潰しの人生を気楽に送るための心理操作だろうか。どちらにせよ、なんだかそんなことしか学べないなら、別に俺はリーダーなんかにならなくても既に比較のしようがないほど格の違うステージにいる哲学者なので、悪いけど何の不足もないわ。

とまぁ、そんなわけで次の本へ手をのばしている。いよいよ、ハイフェッツの『最前線のリーダーシップ』だ。

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