2018年08月04日に初出の投稿

Last modified: 2018-08-04

英語を学び始めたのは中学からだったが、随分と長いあいだ和英辞典を全く使わなかった。実際、学校でも英文法、英文読解、それどころか英作文の教師ですら、生徒に和英辞典を使えとは言わなかった。これは大学以降でも同じである。もちろん、これだけをもってして日本の外国語教育が「ナウでクールな海外情報をもらう」ことだけに偏向していると立腹してもしょうがないが、しかし現実に日本の学術研究者を始めとして多くの人々は外国語の文章を読むことはできても、自分から喋ったり書き表すことが不得手であり、それゆえ「ペラペラ」などという、たいていの外国では何の価値も無いことを尊び、たかだかアメリカで生まれ育ったていどの人間を帰国子女と称して逆差別するわけだ。これも日本人が営々と維持してきた無責任体制の一つの表れだろう。(もちろん、同じことは神道だろうとアニミズムだろうと、宗教と呼ばれる上出来のイカサマを維持している全ての民族に当てはまる。)

話が大きくなりすぎた。僕が和英辞典を使うようになったのは、ようやく10年ほど前になってからだ。初めて買ったのは旺文社の『O-LEX 和英辞典』で、幾つかの表現のネイティブ・チェックが単純な正否ではなく統計としてまとめられているのが面白くて買ってみた。そして、実際に和英辞典を使い始めて分かったことなのだが、例えば「騒ぎ」という項目を見ると "uproar" だと説明されているのに、「じゃあ "uproar" ってどういう意味なんだろう?」と気になってしまうのだ。もちろん "uproar" は「騒ぎ」なのだが、恐らくそれが派生的な意味に過ぎないのかどうか、あるいは複数の意味の核になっている最大公約数を表しているにすぎずニュアンスが欠けているのかどうか、和英辞典では確証が持てずに不安になるのだ。それに、「騒ぎ」ではニュアンスが分からない。阪神が優勝したら黄色いハッピを着て街中を自転車で周っているジジイは「騒ぐ」だろうが、このような場合に "uproar" は使わない。なぜなら、OALD を引けば "... because they are angry or upset" という条件が書かれていて、これは「狂喜乱舞」の意味ではなく「騒乱」や「暴動」の意味に近いからだ。

こういうニュアンスを正確に和英辞典だけで理解しようとすると、十分な範囲の意味合いや脈絡をカバーする語義を並べる必要があるし、語源の説明はあるに越したことはないが、少なくとも例文はほしい。となれば、かなりのページ数が必要となる。それゆえ、僕は今でもいわゆるポケット版の辞典は和英辞典だろうと国語辞典だろうと使う気になれない。まるで受験用の単語集みたいに、見出し語の横へ語義が一つ置かれているだけの辞典など、それこそ「偏見一覧」になる恐れがある。

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