2018年08月03日に初出の投稿

Last modified: 2018-08-03

結局、広井良典さんの新刊も買ってきた。広井さんの成果は『コミュニティを問いなおす』を読んでからそれなりにフォローしているが、やはりどうも最初に読んだ本から受けた、いかにも元厚生官僚が社会保障や社会思想に手を付けるとどうなるかという印象が強くて、どういう料簡で彼が自らを「科学哲学者」と自称しているのか理解しかねていたのである。もちろん、何を自称しようと勝手だし、しょせん学術研究者は実績でしか判断する他になく、さらには「哲学」とか「なんとか思想」と呼ばれる分野は行き場のない人々が逃げ込む場所のようになっているのも確かなので、どうでもいいと言えばどうでもいいことだ。実際、単に東大の HPS を卒業したからそう言ってるだけなのかもしれないし。

それはそうと、彼が手を染めているような高尚な議論はともかくとして、僕が老親の医療なり介護に関わる年齢となって社会保障関連の情報や著作を眺めて気付くことは、実務としての複雑さや煩雑さも確かに大きな課題だが、そもそも医療、年金、福祉、社会保障、保険といったことがらがどういう関係にあるのかを明快に解説する本が意外に少ないということだ。歴史としても、社会制度の理論としても、あるいは法律の解説としても、これらを全てカバーして整理し(もちろん人が組み立てた制度なので、概念の体系として整然としている保証はないが)、丁寧に説明するような著作がないと感じる。「社会保障」あるいは「社会福祉」と書名に印刷してある多くの本は、たいていどれかが抜け落ちていたり、どれかに偏った説明をしていたり、あるいは法律の話しかしていないとか、酷い場合は自分が考えるベキ論から批評するために必要なことしか説明しない者もいる。確かに、書店には「社会保障論」や「社会保障法」という概説書はたくさんあるが、どうも入り方が看護師の教科書みたいなものだったり、あるいは肩ひじ張って老いやケガや貧乏をことさらに強調したりと、何かイマイチな印象を受ける。そもそも、「社会保障法」などという法律はないということから説明するべきであろう(「自然法」という法律がないのと同じことだ)。

いやしくも哲学を標榜するのであれば、現象学だろうと科学哲学を名乗っていようと、まずこういう概念の整理をしてほしいと思う。実務を細かく知っている必要はないし、僕のように現実に親の医療に関して具体的な手順を調べる必要までないかもしれないが、たとえ数年もすれば政治家が勝手に制度を引っくり返したり廃止したりするかもしれない浮世の些事でしかなくとも、それをあれこれ論じて自分たちが飯を食い、どこそこ大学の教授として、場合によっては制度を変える方の一員になったり、ケアがどうのこうのと末端で制度を応用する当事者になっているかもしれないのである。

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