Scribble at 2022-01-24 11:43:31 Last modified: 2022-01-26 18:55:55

何日か前の報道によると、スマートフォンを使ったキャッシュレス決済を利用する人が少しは増えているという。ちなみにネット・サービス関連の記事で稼いでいるメディアでは5割以上がキャッシュレス決済で毎日のように支払っているかのようなミスリードを盛大に報道しているが、あれは1度でも使ったことがあるのを「キャッシュレス決済を利用」(もちろん嘘は書いてない)と表記して常用しているかのように煽っているだけだ。実際、僕が会社や自宅の近くでコンビニエンス・ストアの様子を見ていても、キャッシュレス決済どころかクレジット・カードで支払する人すら10人に1人もいない。まだ多くの人は現金で支払っている。

使用頻度について、たとえば電通のアンケートでも「1日に2、3回以上使う」とか「週に2、3回は使う」などと分類しているが、サンプルの数が数百と少ないので信用できる調査とは言えない。また、どこで質問したかによって回答の偏りが大きいと予想できる。電通本社の近く、それこそ汐留あたりを歩く上場企業のサラリーマンに質問すれば、彼らは毎日2、3回、そもそも買い物する金があるのだから、一定以上の比率で回答が出るのは当然だ。

しかしなんにせよ、多くの機会に政府もそろって普及を勧めているのがキャッシュレス決済だ。まるで造幣局がなくなればいいとでも言っているかのような様子だが、しかしこういうキャンペーンには重大な欠陥がある。「新しい資本主義」などと、ニューズ番組で政治家が口にするたびに噴き出してしまうほど愚かなフレーズを掲げておきながら、決済手段のプラットフォームであるスマートフォンの利用コストは全く下がっていないではないか。ahamo だ povo だ LINEMO だと、付け焼刃で愚劣な言葉のオプション・サービスなんてキャリアにでっち上げさせたところで、たいていの利用者は移行なんてしない。貯めたポイントがリセットされるし、クレジット・カードでしか払えないから大半の学生や子供や高齢者は無理だ。そもそも、全く別のプランとして設計しなければ対応できないという時点で、サービス内容が従来の契約と違うのは分かりきっており、その違いは利用者にとって不利なものばかりであるから、プランを変えない人が多いのは当たり前である。また、各キャリアに「お願い」した政府にしても、いま契約しているプランで料金をそのまま下げさせるのが筋であろう。そして、それができないということは、少なくとも自由主義の国では最初から分かっていた筈である。特定業種の特定企業に何の正当な理由もなく利益だけを減らせと命じる法律など、中国や北朝鮮ならともかく自由主義の国では不可能である。

しかしながら、先日も NHK で報じられていたが、昨今は失業した人々や生活保護を受けている人たちにとってもスマートフォンでの情報収集とかオンラインでの契約やコミュニケーションは、「人権」とすら言われているほどの生活手段になっている。これについて、スマートフォンを使った通話やインターネット通信が利用できる人の境遇を確保したり保障することが行政の役割だとすれば、社会インフラである以上は電気や水道のような事業と同じく、いくら自由主義経済なり自由主義国家とは言っても、一定の規制が必要となろう。その代わりに、事業者もまた法的・財政的に保護されるという経営基盤の安定が約束される・・・それにしても、そもそもそれって昔の電電公社じゃん。

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