Scribble at 2024-09-02 11:36:33 Last modified: unmodified
埋蔵文化財や史跡の一般向けの解説としては、まずプレゼンテーションの原則として未定義の学術用語を使わないことが大切である。しかし、多くの博物館で発行されている館内の掲示板やパンフレットや資料解説書の類は、こういう原則を軽視している事例が多い。これを指して、関西大学の長谷洋一氏は「『横矧板鋲留短甲』に『よこはぎいたびょうどめたんこう』とルビを打っただけのキャプションや解説に、来館者はどれほど理解しているのだろうか」と疑問を述べたことがある(『阡陵』, No.75, 2017, p.7)。僕も同じ意見で、こういうことは文章を書く専門職に依頼する予算がないのであれば、たとえ自分が特定の分野で博士号を授けられていようと、やはり他の分野については無知や未経験あるいは未熟であることを弁え、学部レベルの基礎を学んで最低限の素養をもつべきであろう。
プレゼンテーション、あるいはオンラインのコンテンツでは UX writing と言われることも増えたが、こうした技能や技法あるいは観点は、博士論文を何十回と指導教授に突き返される経験をしたり、たかだか数十本の学術論文を漫然と書いてレフェリーとやりとりしているだけで身につくものでもない。現代文で満点しかとったことがない東大小僧の成れの果てであっても、未熟は未熟である。僕はワープロのキーパンチャーとしても働いた80年代末から90年代の前半に、上場企業や大企業の役職を担っているような人々が書いた稚拙で馬鹿げた文章を大量に見てきた経験があるので、年齢は全く関係がないと断言できる。大学教授であろうと未熟の自覚があればこそ即座に学び始めるようお勧めする。