Scribble at 2023-03-14 09:59:11 Last modified: 2023-03-14 18:54:53

苟も「社会学」に携わっている者であれば誰でも心得ている常識だと思うが、しかし精密な定義とか論証なり実証が難しいこととして、"a set is not an organization nor a society" というフレーズに代表される知見がある。人の個体を単純に集めただけでは集団や組織とは言えないし、社会とも言えない。もちろん、これはトリヴィアルな想定でいくらでも実例を紹介できる(たとえば、10人分の死体を集めてみよ)。では、人が10人だけ(生きていようといまいと)いることと、それらが一つの組織なり社会として見做せるということには、どういう違いがあるのだろうか。

まず、その成員が生きているということが条件だと考えるのは、これまた逆の極端であろう。社会学者のような、たいていはセンチメンタルな人々であれば、亡くなった人が含まれていても「家族」だとかいった文学作品を幾らでも書きそうだからだ(それが社会学者の見識としてまともかどうかはともかく)。もちろん、文学でなくとも、死んだ人のことも含めて何らかの権益を考慮するなら、僕らのようなプライバシーマークを掲示している企業で個人情報の保護や管理に携わっている実務家にも関わりがある議論であろう。そして、ルチアーノ・フロリディという哲学者が coined した「グループ・プライバシー」という概念を使えば、死者も含めた特定の集団についてのプライバシーなり権利(の侵害や保護)といった議論は十分に展開できる。日本だけでなく色々な国にある差別とか伝統のような話題も、そのようなスケールで扱って良いと思う。

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