Scribble at 2021-10-13 22:02:22 Last modified: 2021-10-13 22:04:33

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「会計ビッグバン」の内容――周知のように金融機関などが抱えている不良債権については、その回収可能性を厳しく判断して償却する必要があります。利息を免除したり、返済期日を延ばしたりするだけでも、その債権から得られるキャッシュ・フローの現在価値は変わってきます。債権の価値を厳格に評価し、必要とあれば損失を計上することも必要なのです。

冨塚嘉一『会計が変わる―企業経営のグローバル革命』(講談社、2002)

当サイトで公開している論説で貸借対照表の歴史を調べた経緯があるおかげで、会計士や会計学のプロパーが不勉強であるかどうかを推し量るにあたり、「バランス・シートの『バランス』を『均衡』という意味に誤解しているかどうか」が一つの基準となった。繰り返すまでもないが、"balance" とは「残り、余り」という意味であって、昔の輸送船が積載物の偏った置き方で傾かないように、余った荷物を逆側へ積んで〈バランスをとった〉ことから平衡の意味に流用されるようになっただけである。現に、昔の貸借対照表は資産の部と負債の部を左右に並べるような計算書ではなかったし、現代の簿記の標準的な資格である日商簿記のテキストにすら、資産の部と負債の部を縦に並べて記述する方式(報告式)が解説されているくらいだから、こんなことすら知らない会計士というのは、日商簿記3級の知識もない詐欺師と疑われても仕方あるまい。

そういうわけで、本書はそういう意味では素養のない人物が書いた本だったということが分かったので、他の箇所を読む必要もないと判断した。もちろん、他の箇所は正しく適切なことが書いてあるかもしれないが、それでも「バランス」の意味を正確に理解している人が書く本と、せいぜい同等の品質があれば良いほうだろう。また、日本に国際会計基準が持ち込まれる話としても、既に現在では IFRS をカバーしていなければ、単なるセコい昔話にすぎない。

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