Scribble at 2022-05-02 16:14:06 Last modified: 2022-05-02 16:34:17

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「文法書にありがちな読みづらさ」は発展事項・例外を網羅しようとした結果、説明が本筋から外れて脱線することが原因です。本書ではこの原因を明確に捉えて対処しています。常に最短経路を意識して、説明の順番・構成・深め方・言い回しなどなど、著者が数万回の授業を通して徹底的に磨き上げた解説を本書で再現しています。

関正生『真・英文法大全』(KADOKAWA、2022)

さきほど会社から帰る途中に、天満橋のジュンク堂へ立ち寄ったときに見かけた新刊の英文法書だ。なかなか面白い解説の仕方をしている。これから英語の文法を学ぼうとする高校生から一般の読者にとっては、通読を勧められる。レビューには、まず薄い本で概要を掴んでから読むとよい云々などと書いている人もいるが、日本の教育課程で中学を出ている人なら、既に英文法の概要など知ってるはずだろう。高校生であれば、大学受験までに最低でも10回くらいは通読を繰り返すのが当たり前だと思う。そんなのは勉強に時間を費やす意欲さえあれば、別に僕らのように進学校へ通っていなくても誰でもできることだ。仮にあなたが社会人であり、役人や上場企業の組合員みたいに定時で家へ帰れなくても、毎日の1時間ほどを費やすだけで1年に4回ていどは通読を繰り返せる筈である。そして、こういう本は繰り返して何度も読まなくては効果がない。

もちろん、こういう本を面白そうだからといって、何冊も買い込んで適当に眺めるというのは、何かを習得しようと始めるときに一番やってはいけないことだ。教科書や参考書を一つ選んだら、何であろうとそれをざっとでもいいから通読することの方が大切だし効果的だからだ。学習意欲がある人であればなおさら、面白そうな類書や関連本などを書店で見かけると、ついあれもこれもと手元に置いておこうとして、中途半端な通読ならまだしも積読になってしまう。これでは殆ど無意味だ。

まれに、背表紙でも目に付くところにあるという事実だけで、積読にも意味があり、何かのインスピレーションに寄与するかもしれないと言う人はいる。しかし、はっきり言って「妄想」という別名のセレンディピティばかりを過大評価するような人に限って堅実でまじめな勉強を怠り、そのセレンディピティというチャンスを有効に受け止めて活用するべき素養や学識をもっていないのだ。人が進化論や相対性理論を発達障害か何かの原因で偶然に思いついたところで、そんなのは闇に消えるだけだ。そして闇に消えたところで、人類の叡智の進展が100年ほど遅れたからといって、それが何だというのか。そんな偶然が人類の歴史において何度かあったというだけで、それを受け止めるための宇宙背景放射の観測機みたいなものをあらゆる国のあらゆる教育機関や精神科の医療室に据え付けるとでもいうのか。そんなことを期待して人類の資源を大半が浪費になることが分かっていて配分する方が、頭がどうかしているとしか思えない。

ということで、英文法書の話から相当な逸脱をしているけれど、最初の一冊としてはお勧めできるし、既に何冊か読んだ後に参考ていどで通読するのもよいと思う。それに、税込みでも2,500円に満たないから、類書と比較すれば気軽に買えるのは確かだろう(尤も、初刷の販売部数を最初から当て込んで大量に契約していれば単価が安くなるのは当たり前なので、別に「良心的」という評価には値しない筈だが)。

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