Scribble at 2024-10-09 07:54:10 Last modified: unmodified

弊社の個人情報取り扱いに関する連絡先に、「滋賀県情報通信業企業立地事務局」の「田村」という人物を名乗る送信元から、たびたび滋賀県に企業誘致する旨のメールが届く。実際には、港区の「株式会社シャノン」というところが送信しているメールであり、"@smktg.jp" などという意味不明なドメインも、この会社の所有だ。こういう場合、滋賀県に問い合わせて「本当にこの会社に企業誘致の営業活動を委託しているのか」と照会することはできるし、なにか社会正義を実現したい暇人であればやってもいい。

でも、たいていの法人というものは、そんなことしない。「黙殺」がベスト・プラクティスだ。よって、何度もメールを受信して同じ文字列を 0.02 秒ほど視認するだけでも、企業の部長としては時間の無駄遣いであるからして、そろそろメール・ソフトのフィルタリングで「ゴミ箱行き」の設定を加えた。

そもそも、弊社の "privacy@" というユーザ部をもつメール・アカウントは、法令が要求する苦情窓口のために運用しているわけで、企業誘致の営業メールを受信するためではない。そういう出鱈目なことをやっている時点で、この会社(「港区」とは言っても、どうせキャバ嬢が住んでるようなマンションの一角で派遣やクラウド・ワーカーを使って適当な名簿でメールをバラ撒いてる自称ネット・ベンチャーであろう)の素性は想像に難くないわけだが、後学のために敢えて弊社の措置や社名を公表した次第だ。

そろそろ何年も前から計画はあるので、この電子メールというテクノロジーや運用についての論説も書いておきたいのだが(もちろん pros vs. cons も含めて)、こういう実務を続けていると萎えてくるのも事実だ。既にプライベートでは殆ど誰とも電子メールで(いや、それどころか葉書や手紙ですら)やりとりしなくなったし、法人の多くは請求書などの送付に電子化を導入しているけれど、その通知にいつまでも電子メールを使うのはどうなのよという気がする。なぜなら、一般的な運用だと電子メールは経路上で通信が暗号化されていないため、実は封書を郵便で配達してもらうよりも情報の脆弱性が高いからだ。こんなの、ISP や NX の技術者が局内のデータをすくい取っていれば、いくらでも中身を閲覧できる。しかるに、たとえば Amazon.co.jp から GMail へ受信する場合のように、自動で TLS を使ってくれるような仕組みを使うことが望ましく、今後は SPF のような送信元の確認も合わせて普及していくであろう。

結局、いくらチャットや他のメッセージング・サービスが普及しようと、これらの致命的な欠点である「島宇宙化」によって、早い話が原理的に(あるいは「ビジネス・モデルとして」と言ってもいいだろう)電子メールのようなツールにはなり得ないわけで、たとえ全てのチャットやメッセージング・サービスが他の全ての競合の API に対応するような状況へ至ったとしても、それだけで電子メールと同等の普及が進むかと言えば、それはないだろう。なぜなら、わざわざ業界全体でそんなことをしてまで、やっと電子メールと同じ状況へ至るようなインセンティブが各社にないからだ。ChatWork と Slack、Slack と Discord、Discord と LINE などで自由にメッセージをやりとりできたからといって、それがなんだというのか。やはり依然として、LINE の相手には 10MB の添付ファイルを送れないだろうし、Discord から ChatWork へ会議の中継ビデオを送信したりはできないであろう。それらのサービスが、あたりまえだが競合とは差別化されているのであるから、そういうスペックまで同じになってしまえば、そもそも使い分ける意味がなくなってしまう。

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