Scribble at 2023-03-26 10:49:38 Last modified: 2023-03-26 10:53:17

添付画像

図書館から借りて、朝倉健太郎氏の『刃物の金属組織学 身近な刃物・日本刀・隕鉄 驚きの真実』(アグネ承風社、2018)という、どのフレーズが本当のタイトルなのかよく分からない本を読んでいる。刃物について、それなりに体系立った構成で書かれた興味深い本であり、それなりに金属学や無機化学の知見を取り入れたり、刃物業界の成果も取り入れてあって、剃刀についても色々と書かれていて面白い。

ただ、剃刀についてだけ関心がある者として読むと、どうしても大風呂敷を広げ過ぎて記述が浅いと思えるところが多く、体系的な構成であるがゆえの(そしてページ数が幾らでも増やせるわけではない印刷物であるからこその)限界も感じる。たとえば、第12章では包丁造りの体験という話が掲載されていて、ちょっと趣旨が分からないのだが(金属組織の議論を煮詰める内容にすれば、個々の話題をもう少し掘り下げて記述したり解説できるのに、余計な話題を盛り込むから内容が浅くなるのだ)、包丁を作る工程の中で、もちろん研ぐという作業についても書かれている。そして、「最終的に手研ぎで仕上げていく.研ぎすぎた包丁は元に戻せないので緊張する場面である」と書かれているが、そんなことはない。研ぎ直すと刃の大きさが小さくなってしまうために、商品としてはサイズが適正でなくなるだけの話であり、研ぎ直しできなくなるなんてことはありえないだろう。こういう点も、丁寧に説明しなければ極論や嘘を書いていることになってしまう。

  1. もっと新しいノート <<
  2. >> もっと古いノート

冒頭に戻る


※ 以下の SNS 共有ボタンは JavaScript を使っておらず、ボタンを押すまでは SNS サイトと全く通信しません。

Twitter Facebook