Scribble at 2022-12-07 14:49:14 Last modified: 2022-12-11 11:51:53

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月曜日に届いた剃刀を使い始めた。DORCO という韓国の老舗メーカーが製造する替刃を使った「Kazakiri」というブランドの西洋剃刀である。30枚の替刃がセットになっていて2,000円ていどで手に入る。それ以外のシェービング用品は、これから集めてゆくこととしたい。差し当たりはドン・キホーテで特売していたシェービング・ムースを買ってきて、実際に何度か髭を剃った。まだ使い始めて間もないため、正直なところ頬や鼻の下を頻繁に切ってしまうのだが、剃っているときの緊張感がありながらも心地よい感触が一つの魅力なのだろうとは思った。

もちろん、剃り方については調べている。というか、オンラインには殆ど情報がないという事実を知った。「西洋剃刀 使い方」のようなキーワードで検索しても、だいたい出てくるのは理容師じゃない一般人の記事である (*)。shaveready.blog.jp(SHAVE READY !)のような詳しいブログは珍しいが、ここも8年くらい前には更新が止まってしまった(ちなみに「理容師」を自称する人間が記事について「素人に容易く扱える道具ではない。」などとつまらないコメントを書いているが、馬鹿なのか? 西洋剃刀は取り扱いに理容師免許が必須の業務用機器でも医療機器でもねーよ)。

加えて、オンラインのリソースどころか参考になる本すら無いと言ってよい。いちばんの理由は、やはりユーザが圧倒的に少ないからだ。理髪店で剃ってもらった経験がある人は多いと思うが、自分で日本剃刀や西洋剃刀で髭を手入れしている人は少ない。メンズタイムス(mens-times.jp)の調査によると、髭を剃るためのアイテムとして使っている割合は、電動シェーバが約50%、T字剃刀が約40%、そして日本剃刀と西洋剃刀の合計が約5%となっている(それ以外は、毛抜きやトリマーや脱毛ムースなど)。併用する人もいるとは思うが、日本剃刀と西洋剃刀のユーザが圧倒的に少ないという事実は変わらないだろう。よって、いわゆる男性エステの話題としても商売として展開することが難しい。

そして、僕が思うに二つ目の事情として理容師が情報を開示したがらないからではないか。たまに剃刀の使い方を簡単にブログ記事などへ書く人はいるようだが、体系的な知識としてまとめたり公表する人は殆どいない。例外は、「カミソリ倶楽部」(www.kamisoriclub.co.jp)くらいだろうか。もちろん剃刀でのシェービングも理容師の業務の一つであり、理容師は国家資格の保有者であるから、簡単に素人に真似されても困るという切実な理由があるのかもしれない。美容師については国家資格のテキストや問題集が販売されているけれど、理容師については専門学校で使っているテキストがメルカリで売られているような事例を除けば、ほぼ一般人には手に入らない(かつては理容師の国家試験テキストも一般書として販売されていたことがあったようだ)。

理容師のシェービング技術に関する本が少ない(というか、一般向けの本としては皆無と言っていい)理由には他の事情もあると考えられる。2018年に美容師と理容師の区別をしていた規制が緩和されて、一方の免許を持っていれば他方の免許が取得しやすくなった。よって、どちらかの勉強をすれば他の資格が取りやすい。これに加えて、近年は少子化の影響や若者が美容室の方を選ぶ傾向が増えていて、理容室の経営が立ち行かなくなっているという背景もあるため、美容師の資格を優先して取得しようとする人の方が多いのではないか。よって美容師の数も増えていて競争が更に激しくなるのだから、テクニックをやたらと公開するのは損だと考える人が多くても不思議ではない。今年で創業90年を迎えたというフェザー(大阪に本社がある)のサイトで配布されてる剃刀の使い方とかいう PDF も見たけど、タオルで温めるとか自社製品を用意するとか書いた後に、肝心の剃り方については「剃る」としか書いてないんだよ。バカにしてるのかな。

ただ、シェービングについては美容・理容の業界の話だけでは片付かないという変化もある。それが、医療的な脱毛処理の登場である。幾つかの方法があって一時的に毛を減らすだけの場合もあるが、医療的に毛根をレーザーで焼いてしまう方法だと、2年ていどの通院で20万円くらいの費用がかかるが、6割くらいの毛根で毛が二度と生えなくなる永久脱毛になる。もちろん火傷などのリスクもあるし20万円を出すかという理由で、広く普及するまでには至っていないわけだが(加えて、毛根をレーザーで焼く処置が酷く痛いらしい。麻酔を使うと更にお金がかかる)、シェービングで稼いでいるような男性用のエステ・サロンだと危機感をもって当然だ。それこそシェービングの情報なんて公表している場合ではないと考えても仕方のないところである。

なので、僕の性分として専門学校用のテキストとかを手に入れてまとまった記事として公開したくなるんだよね。陸奥圓明流でも北斗神拳でも言えるけど、公表してみて実際におまえらこれだけの修練はできるのかと問う方が、説得力があると思う。実際、『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』(増田俊也、新潮社、2011)を読んだ時にも感じたことだが、木村政彦が取り組んだという伝説が表すように、あまりにもクレイジーで逆に読んでて笑ってしまうほどのハードな訓練を紹介してもらった方が、彼の凄さを実感できた(本当の話なのかどうかは、格闘技や武道の場合はどうでもいいのだ)。手順とか方法を書いてもらったくらいで、そう簡単に同じことはできないものだよ。科学哲学の勉強でも英語でも数学でもシステム開発でもタイポグラフィでも MMORPG のレベリングでも、あるいは北斗神拳でもそうだろうけど、基本の予復習や鍛錬が大切だと僕が何度も強調してるのは、それが理由だ。

* mens-beauty12.com のような、誤字脱字だらけで文章そのものも機械翻訳と中国人業者の中間くらいの品質しかない、とても日本人が書いたとは思えない稚拙なブログも多数ある。もちろん、こういうのは記事の最後に並んでいるアフィリエイト先の商品へ誘導するのが目的の SEO しか考えてない、ただの文字列だ。書いてる本人は髭すら剃ったことがない小僧(並みの知性の人間)だろう。

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