Scribble at 2026-06-10 21:54:54 Last modified: 2026-06-10 21:57:36
これまで圏論のテキスト(の翻訳)から通俗本にいたるまで、色々な圏論の本をまとめて批評してきたわけだが、先日も YouTube で圏論のレクチャーを公開していたバルトシュ・ミレフスキの解説が翻訳されていた。ただし、このレクチャーの元になっている記事が彼のブログに現れたのは10年以上も前の話であり、英語で技術情報をフォロー・アップしていれば誰でも知っているように、欧米では圏論なんてとっくに話題としては終わっている。要するに、圏論(これだけなんども変換してるのに、どうして Microsoft IME は第一候補に「県論」なんていう意味不明な言葉を出してくるのか)を学ぶに適した職能の人(端的に言えばクラスや API あるいはネットワークを設計するレベルのアーキテクト級のエンジニア)は学べばいいというだけにすぎないのだ。ごくふつうのプログラマやコーダが圏論を勉強することは無駄ではないにしても、それは彼らが(昇進するなりして)アーキテクト級のエンジニアになる素養をもつために役に立つのであって、大半のエンジニアは、どう考えても圏論を勉強する暇があるなら情報セキュリティやアルゴリズムや手持ちの言語がサポートしているライブラリの仕様を勉強するべきなのだ。
ということなので、これからプログラマなりウェブのエンジニアなりを目指す諸君に老婆心として言わせてもらえば、こういう「出版社が捏造するブーム」に乗せられてはいけない。このような、マスタベーション・マーケティングと言ってもいいような偽の話題作りは、多くの人をお金と時間と労力の浪費に向かわせる、はっきり言って社会・文化的なレベルで評価するところの「犯罪」である(もちろん、ミレフスキ氏を非難する意図はない)。
あと、啓発するにしても適正なやりかたというものがあるわけで、かなり前にも書いたが、加藤文元氏の『はじめての圏論』みたいな主旨のよく分からない構成(冒頭の数十ページを使って背景を説明すると称しつつ、えんえんと公約数の話をしている)になっている通俗本などをありがたがっているようではいけないのである。