Scribble at 2022-07-27 10:28:38 Last modified: 2022-07-27 12:08:20

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アルツハイマー病

ドイツのアロイス・アルツハイマーが発見した「アルツハイマー病」は、これによる症状としては幾つかあるが、もっとも深刻なのは認知症の症状だ。年齢が上がると指数関数的に患者が増えて、現在ではアメリカ合衆国の死亡原因で第7位となっている。家族性(遺伝性)と孤発性とに大別はされているが、孤発性として起きる最大の要因である加齢は誰にでも起きることなので、この区別に大きな意味はない。また、食習慣や喫煙などとの関わりも調べられているが、確たる結論は出ていない。

アルツハイマー型の認知症が起きる病理としては、脳でアミロイドβ(Aβ)が蓄積することという現象がおおよそわかっているが、その現象が起きる原因としては、現在も幾つかの仮説が競合している。したがって正確な原因もわかっていないため、治療法も存在しない。有効な仮説としては、脳アミロイドと呼ばれているゴミのような物質が脳に蓄積するという「アミロイド・カスケード仮説」、それからアセチルコリン、感染症、アルミニウム、インスリン分解酵素など幾つかの競合仮説があるようだが、いまのところ有力なのはアミロイド・カスケード仮説であるという。

ところで、ここ数年ほど Hacker News ではアミロイド・カスケード仮説は間違っているという記事へのリンクが何度か投稿されている。なんでも、アミロイドβの一つを同定したシルヴァン・レスネという研究者が、実験結果の画像を Photoshop で何年ものあいだ改変していたという。ただ、レスネが同定したアミロイドβはアルツハイマー型認知症との強い関連性をもつと考えられるタイプのアミロイドβとは異なるものであり、レスネの研究で不正があったとしても、アルツハイマー病の原因に関してアミロイド・カスケード仮説が依然として有力であることに変わりはない。実際、アルツハイマー病の研究者の多くは、アミロイド・カスケード仮説を支持しつつ、同時にレスネの研究はこの仮説にとって重要ではないと考えているようだ。

"The readers of Mr. Piller’s article are given the strong impression that the pursuit of Aβ-targeted therapies for Alzheimer’s, which I agree has been frustratingly negative and expensive, was somehow ignited and/or fueled by the 2006 Nature paper. Readers must know that this is simply untrue and that decades of human genetics and murine models from many labs had led many drug developers to conclude that Aβ was a highly plausible target." (Karen Hsiao Ashe, comment on: https://www.alzforum.org/news/community-news/sylvain-lesne-who-found-av56-accused-image-manipulation)

要するに、アルツハイマー病について強い関連性がないと考えられる方のアミロイドβについて書かれた研究論文に不正があったという理由で、アミロイド・カスケード仮説そのものを否定する人々がいるという話である。

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