Scribble at 2024-04-06 10:06:33 Last modified: 2024-04-06 11:55:39

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行動で利き手を使い分ける「クロスドミナンス」を脳内科医がすすめる理由とは?

僕がクロス・ドミナント(両利きの矯正右利き)であることは、プロフィールで何年も前から公表している事実だ。いまさら隠すことでもないし、いまでも「躾」と称して左利きの子供を矯正している家庭もあろう。あるいは、逆に通俗的な「左脳・右脳」みたいな話に感化されて、左利きの子供は芸術家になるなどという妄想を抱くどころか、なぜか「有能な」芸術家になるという錯覚まで起こす親もいるようだ。そして、同じ程度に凡庸な我が家では、昭和の時代だと左利きに対する偏見というものが強く残っていたため、当然のように右手で箸を扱い、右手で書くことを躾けられたわけである。ただ、単純に右利きになったわけではなく、マウスも両手で使えるし、箸は両方で扱えるし、野球も両投げ両打ちである(字も両手で書けるが、わざわざ左で書こうとは思わない)。あらゆる行為を両手でやれるわけではないが、単に矯正して右利きになったというだけではなく、必要に応じて左利きの人としても振る舞える(右腕が五十肩だったときは左手でマウスを使っていた)ことから、クロスドミナントであろうと思う。

ちなみに、僕が通俗的な理解では「文系」と思われている哲学と、「理系」と思われている科学との「両利き」であるかのように誤解されやすい「科学哲学」という分野を専攻しているのは、こんな身体的な理由によるわけではない。それに、僕は哲学者として科学哲学という特定の分野にコミットしているだけであって、「哲学者と科学者の中間」などという意味不明な立場にはない。まぁもっとも、身体的な理由で哲学をする人がいないかと言えば、一部の現象学者のように肉体フェチという動機で哲学をやっているような連中もいるようだがね。ちなみに、PHILSCI.INFO の方でこう書くと侮蔑ないしは冷笑しているように誤解されるのだが、必ずしもそうではない(ということは、大抵は冷笑しているわけだが)。たとえば、僕の関西大学時代の先輩である三村さんもプロレスという肉体芸術(あるいは肉体演芸と侮蔑する人もいるわけだが)の大好きな現象学者だが、あれは或る意味では「正しい」現象学の使い方なんだろうと思う。

些事はともかくとして、上記の講談社の記事などを見ると、何の業績があるのかも不明な人間に「左利きを育てる」などと言わせている。こういう記事は、医者が語っていようと非科学的としか言いようがないクズ記事である(言っておくが、医学博士は科学者じゃないからね)。この講談社という会社は、最近ではフィフィなんていうインチキ外人にネトウヨ発言をさせてみたり、「右傾化」というよりも「ネトウヨ化」あるいは炎上商法なのかもしれないが、胡散臭い記事を続々と自社のメディア・サイトでバラ撒いている。出版社として、かなり信用度が下がってきており、僕がときどき購入している講談社ブルーバックスや講談社学術文庫のタイトル選定などについても、それなりに注意しておかないといけないのではないかと思う。なぜなら、たいていの日本の巨大企業というものは社長一人が変質させるわけではないからだ。つまり、日本の大多数の巨大企業は生え抜きが経営陣となるため、仮にバカが社長になったとして、それはバカが生え抜きで昇進していけたということを意味するのだから、要するに会社全体が下から腐っていった結果なのである。ということは、一部のメディアだけがネトウヨなり炎上商法で耳目を集めるような真似をやっているだけだとは限らず、同じような思考や方針は別の事業や部署でも共有されている可能性があり、そのうち講談社ブルーバックスにも陰謀論や ID を語る本が登場したり、水に話しかける心理学の本が登場する可能性だってあろう。

ともかく、脳神経科学、いわんや脳の内科医ごときが現実の人間の能力や才能について確たることなんて言えないというのが、正確かつ良心的な医者としての節度であろう。かような、実験したら少しは何か結果が違ったというていどの非常に弱い証拠しか無いにもかかわらず、右利きか左利きかという一点で何かが決定的に有利になったり不利になったりするなどという世迷言を語るのは、それこそ子供の発育やお受験などという親の心配や不安につけこむ詐欺師の振る舞いである。

さて、これに加えて、子供の利き手を親が矯正することは、文字通り「強制」であれば虐待になりえる。その影響として、Gemini に尋ねてみると、(1) 強いストレス:矯正は子供にとって大きな負担となり、不安や恐怖、自己否定感につながる可能性があります、(2) 自己肯定感の低下:自分の特性を否定されたと感じ、自己肯定感が低下する可能性があります、(3) 学習障害:脳の発達に影響を与え、学習障害や吃音などの問題を引き起こす可能性があります、(4) 親子関係の悪化:矯正を強制することで、親子関係が悪化する可能性があります、という妥当な回答が示された。

https://lefthander-consulting.org/english/information/problem/

また、ドイツのレフティーズの団体では、特に (3) の脳への影響を警告している。言っておくが、左利きを右利きに矯正すると「天才が凡人になってしまう」という話ではないので、逆に左利きあるいは利き手というものにおかしな妄想をしないことだ。そして、左利きへの偏見がまさしく偏見であることは確かだが、だからといって右利きへの矯正が子供の虐待に当たるかというと、そこまで規制している例はないらしいということも事実である。

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