Scribble at 2021-12-05 12:33:33 Last modified: 2021-12-05 12:37:04

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まず最初の目標は30,000語というのが目安だと思います。大学院を出ているような人であれば、おおよそ120,000語という数も紹介されている場合があります。すると、学術書に出てくる語彙は100,000語とまでは行かなくても、学術書を書いている著者と議論するのであれば、もっとたくさんの語彙が必要でしょう。日本の平均的な成人でも40,000語を知っているわけですから、せめてそれくらいの語彙をもっていなくては、みなさんの周辺で生活している人たちよりも少ない言葉しか知らずに生活することになります。

英語の勉強について

いま僕が所有している Merriam-Webster の辞書は三冊あって、左から収録語数が5万、7.5万、そして10万となっている。いま手元に置いて常用しているのは右端の大型で、これは収録語数という理由だけではなく、単に老眼でも何とか字が読めるからだ。小さい辞書、とりわけ真ん中の小型辞書は収録語数が7.5万あるのにページ数やサイズが左端の小型辞書と同じであり、それはつまり語義だけを収録していて例文が殆どないという事情があるため、やや使い辛くて、いまでは使っていない。

さて、当サイトで掲載している英語の勉強に関する雑文の中に、上記のような文を書いた。日本で英語の勉強を指南する参考書や通俗本の多くは、現実に必要な語彙数という話題を軽視している。それこそ日本人として僕らが運用している言葉の数に置き換えて考えてみたら、英語の単語集に掲載されているような数だけで足りるわけがないと分かる筈だ。そして、日本語に複数の言葉を連結した熟語があるのと同じく、英語にもイディオムとか phrasal verbs というものがあって、ひとまとまりの表現で特別な意味をもつ場合があるため、単純に個々の単語を覚えていればいいというものではない。よって、僕が思うにはアメリカやイギリスで最低でも大学を卒業したていどの学歴があって、年収10万ドルくらいの所得がある職業(これでも今やアメリカでは「中の下」だろう)に就いている人々の生活で使われている表現の数(単語の数の単純な合計ではなく)を数えたら、たぶん120,000~150,000語くらいだろうと思う。

つまり、何が言いたいかというと、上記の大型辞書に掲載されている〈全ての単語〉を覚えたとしても、それだけでは足りないのである。しかし、こんなことを書くと意欲が減退する人がいるという、教育とか教育心理学のような分野でまことしやかに言われてきた俗説みたいなものがあるせいで、誰もこういうことを紹介したり議論しようとしない。そして、こういっては気の毒だが松本享氏や松本道弘氏のような、胡散臭い精神論で英語や勉強や交渉やコミュニケーションを語るような人々の大上段に構えた議論でしか、日本人が漠然と思っている英語の「レベル」が非常にていどの低いものでしかないという現実を思い知る方法がないという実情がある。実際、よく見かける事例だが、太陽系の惑星を英語で言えるていどのことで、日本では「英語ができる」とか「英語に詳しい」などと(口先だけでの話だとはいえ)称賛されるというレベルなのだ。(もちろん、これはアメリカでは幼稚園児のレベルである。)

いまやっている NHK の朝ドラにも関わる話題として、あまり言いたくないことだが、戦後の日本の英語教育や英語の啓発活動とかテレビやラジオを使った教育講座の類は、はっきり言って趣味的でレベルの低いものでしかない。会社で勉強させられる人々ですら、中国や東南アジアで学んでいる人たちのような切実さがまるでなく、こういうことを続けていても国内で不勉強な者どうしの内輪褒めで満足するような人が増えるばかりである。若い人々には、ぜひ既存の英語教育は無視して、たとえば MMORPG のようなオンライン・ゲームでネイティブと直にやりとりする機会をたくさん作ってもらいたい。効果的な学習方法を採用している英会話教室などでは、既に何十年も前からやっていることだが、「英語でやりとりするしかない」という状況を無理に作り出さない限り、使えるレベルの言語、つまりは生きるための言葉なんて習得できるわけがないのだ。そもそも、言語なり言葉とは人が生きるために成立したものであって、哲学論文を書いたり映画を制作するために人類が身につけ継承してきたわけではないのだ。

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