Scribble at 2022-02-01 12:41:24 Last modified: 2022-02-01 13:40:48

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上記は萩原宏氏による『電気計算機通論』の第1巻である(ちなみに「おぎわら」の「荻」と混同して「おぎわら」と読む人がいるようだが、「はぎわら」だ。この話題だけをネタに色々とブログ記事を書いている人がいるらしい)。これと第2巻を見つけて、合計で1,000円ほどだった。しかし、後で調べると第3巻があって、この第3巻はアマゾンで30,000円を超えるプレミアがついているため、ちょっと手が出ない。しかし、これら2冊だけでも十分に通読する価値がある。目次をざっと眺めるだけでも、いま刊行されている論理回路などの大半の教科書を超えるレベルで解説されているからだ。

本書の初版が僕の生まれた翌年(1969年)であるから、僕が生きてきた時間を通してコンピュータの根本にかかわる知識については、その学術的な内容だけではなく、教科書の書き方や水準ですら、何の進展も進歩も改善もなかったと言っても暴言には当たるまい。しかし、これは金太郎あめのように同じようなテキストを書き続けたり書き始めるプロパーに問題があるというよりも、すでにあるこうした優れたテキストを出版社なり学界として「育てる」とか「継承する」という発想がなく、とにかく何千部かを印刷・発行してオフセット印刷の版が摩耗した頃には、単純に表層替えして所定の内容を書いて売り出せば学生が買ってくれるという甘えがあるのだ。

なお、著者の萩原氏について調べると、本の奥付には京大工学部の教授としか書かれていないが、退官された後には京都情報大学院大学(JRの新快速で京都までやってくると車窓から見える専門学校と同系列の教育機関だ)の初代学長を務められたという。もともとは学部を卒業して NHK にいた人なのだな。

https://museum.ipsj.or.jp/pioneer/hagiwa.html

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