2018年01月19日に初出の投稿

Last modified: 2018-01-19

奇妙に思われるかもしれないが、マウスの速度は他人が初めて使うと全く対応できないくらいの速さで設定してあるのに、ホイールの速さは逆に遅く設定している。コントロールパネルの「マウス」アイコンで表示される設定画面には、「垂直スクロール」の速度(つまり標準的な動作あたりの移動量)を設定するスライダーがあって、これを僕はかなり遅めの「5」にしている。これは自分でも原因が分からないのだが(恐らく生理的な条件なので、「理由」ではなかろう)、ポインタの平面的な動きは非常に素早くても気にならないのに、画面に表示されるテキストや画像のスクロールが速いと目が回る。簡単に言えば乗り物酔いの感じに近くなって、画面を眺めていられなくなる。

ということで、いまこうしてテキストを入力したり、マウスでポインタを動かしながら観察してみると、なるほどテキストは自分で入力しているのだから、何が表示されているのか正確に見ていないといけないのは当たり前だが、他方でマウスのポインタはポインタそのものの軌跡を目で追いかけているわけではないということが分かる。そうではなく、ポインタをどこに移動させたいかという目標地点しか見ていないのだ。実際、たとえばポインタが画面の中央付近にあったとして、そこから右上端にある通知領域(僕は Windows のタスクバーを macOS と同じく上辺に表示しているので、タスクトレイ、または通知領域は右上にある) のアイコンのどれかをクリックするときに、直線的にポインタを動かすのではなく、まず最初の場所あたりでポインタを振り回すようにわざと円を描いて動かしたり、目当ての場所付近に動かしてからわざとギザギザに揺するような動かし方をして、ポインタがそこにあるという感触をつかんでから目当ての箇所に当てていることが多い。つまり、最後に目当ての箇所へ正確にポインタを当てるまでの間は、ポインタが視界の範囲に「ある」とだけ分かっていればよいのであり、ポインタの正確な場所など殆どどうでもよいという扱い方をしているので、どれほど動きが速くてもよいのだろう。

さて、これを良し悪しの問題として議論できるだろうか。こんな習慣がついていると目が疲れるだけで良くないという生理的な事情があるなら、即座にやめてしまうべきなのだろう。これまではともかく、既に老眼となって数年が経過している状況では、いたずらに眼の筋肉を酷使するようなことをするのは馬鹿げている。もちろん、実際に試してみたところ、ポインタを目当ての場所まで直線的に、つまり上記で説明したような「遊び」と言ってよい無駄な動きなしに移動させるという手の動作が、逆に何か心理的な負担になったり疲れるというわけでもない(では、そもそもどうしてこんな無駄な動きをさせてまでポインタの速度を大きく引き上げる必要があるのだろう)。となると、冒頭で垂直スクロールの設定には生理的な「原因」しかないだろうと推定したが、逆に平面的な挙動の設定については、原因というよりも「理由」、つまり何らかの動機が過剰な動かし方を求めているのではないかと思えてくる。

もちろん、そのような動機がなんであれ、生理的な条件である肉体を無駄に酷使してまで対応しなくてはいけない欲求だと言い得る根拠がなければ、やはり生理的な条件を優先する方がよく、正当な根拠もなしに単なるやせ我慢のように厳しい条件に身を置くのは無駄である。しかし、ポインタの速度を落としてみる機会は何度かあったのだが、皮肉なことに生理的な事情で難しいのも事実だった。ポインタの動きが遅くなると、逆にイライラして相当な苦痛を感じるからだ。Windows 95 を使っていた頃のパソコンでは、ポインタを画面の端から端まで動かすには、マウスをマウスパッドの上で何度か滑らせ直さないといけなかったという経験がある。初めてマウスという機器を使ったときに、僕はそういう経験を新鮮に感じたのも事実だが、やがて慣れてくると「なんて不合理で面倒臭い方法なんだろう」と呆れてしまった。それ以来、ポインタの速度が標準的な他人のパソコンに触れたり、新しいパソコンを買って初めてログインした時に、どうしても「これは(まだ)僕が使う機械ではないな」と強く思う。言ってみればポインタはユーザの手の動きの延長であって、モニター上のバーチャルな手でもあるのだが、それと同時に(もちろん現実の腕にも言えることだが)僕らが何をしたがっているかという意図だとか願望を実現する方法でもあり、そういう願望の強さが速度の設定に反映されているとすれば、これを単に遅くすればいいというわけにもいかない。願望そのものを減らすわけにはいかないからだ。

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