Scribble at 2022-07-17 17:23:54 Last modified: 2022-07-17 17:41:58
このご時世、本社が地方へ移転することもある中で、社員が本社や支社から遠く離れた場所に安く家を買って住むという事例も増えているようだ。もちろん、僕のように零細ベンチャーの社員ともなれば資産など貯まるわけもなく、いまのところは、このまま賃貸のマンションに住み続けるしかないのだろう。
上記のような移住促進施策というのは、そういう状況に置かれていると表面的には面白そうに見えるが、僕はまじめに調べようとは思っていない。というか、以前に調べたことがあるのだけれど、こうした施策に応募できる条件は、だいたいどこの自治体も、(1) 40歳以下、(2) 子供がいる、(3) 年収1,000万円以上(6% 計算で期待される住民税額)、といったところで、都会の50代の夫婦が移住するなんてことは最初から眼中にない。貧乏だから安く住みたいというジジイやババアは来るなというわけだ。税収が期待できないくたばり損ないは、現在の住民だけでとっくに間に合ってるということらしい。敢えて酷い言い方をしたが、こういう移住施策というのは、ありていに言えばそういうことでしかない。
そして、いまどき年収が1,000万円で子供を育てる教育費が賄える40歳以下の世帯と言えば、上場企業に勤めていて「ロハス」とか「田舎で休日だけのパン屋をやりたい」みたいなことを言ってるような連中くらいのものである(もちろん、上場企業の社員であってもスーパーとか営業代理店などの業種だと、そんな年収なんて部長でももらえない)。したがって、多くの自治体では想定していないと思うが、そういうでかい会社で鼻くそを食いながらでも貯金ができるような甘い連中が移住したところで、早ければ数年で(そんなところに住みながらでも更に貯金できるのだから)「子供を慶応や駒場に入れる」とか言いつつ都会へ戻ってゆくのは目に見えている。実際、都会から地方への移住なんて行政の補助や紹介がなくても大昔からそれぞれ個人がやってるわけで、その大半がどうなったのか調べたら、こんな施策が家の問題だけで長期にわたって安定的に解決するなんて錯覚だと分かるはずだ。
いまどきの若者が描く漫画やアニメ作品ですら、「東京から引っ越してきた人物」という設定が記号として一定の意味や重要性をもつのだから、こういう移住が現在でも珍しく、そしてその成果として何か地方で劇的なことが起きていると報道されたためしもないという事実さえ知っていれば、これが単なる一時的なセコイ税収対策か、あるいは効果の乏しいパブリシティ狙いの打ち上げ花火的なキャンペーンでしかなく、場合によっては地域社会に無用な(恐れのある)混乱を持ち込むだけだという可能性あろう。田舎が嫌で都会へ出てゆくようなメンタリティの人々と同じような人たち(その多くは、もともと地方から東京に出てきて就職したのだろうから)が、自分の生まれ育った土地での体験など忘れて、生活費や住宅費が安いというだけで再び田舎へ(いくら自分の地元とは違う土地だとは言え)移住してくるとは思えない。ということは、田舎へ移住する人たちの大半は、要するに田舎暮らしの経験がないわけだから、大半が成功するわけがないのである。