Scribble at 2023-03-05 15:57:43 Last modified: 2023-03-06 09:10:43

刑事法学では基礎知識の類だが、刑罰には一般予防効果と特別予防効果というものが想定されている。これは想定であって、実際にそういう効果があると社会科学として証明されたり実証されているわけではない。

まず特別予防効果から説明すると、罪状を法廷で裁決された人物に刑罰を加えることにより、その人物が再び罪を犯さないようにする効力があるという想定のことだ。これに対して一般予防効果は個々の刑罰を加える人物に対してではなく、これこれの罪にはこれこれの刑罰が加えられると法令で定め、実際にその事例を報道したり広報することで期待される、国民全般に対する牽制のことである。これらはどちらも、頭の中で想像する限りでは何らかの効果があると思い描けるには違いないが、実際にそんな効果があるのか、そしてどれくらいの効果があるのかは、はっきり言って理論と言えるようなものは皆無であると言える。なぜなら、そのような効果を認知科学のレベルで分析したりモデルとして提示している刑法学者なんて、古今東西を見渡しても誰一人いないからである。要するに、大学生が学ぶ刑事法学の教科書の一部分に「ファンタジー小説」が書かれている非常に珍しい事例というわけだ。

こういうことが延々と続いていて殆どの法律学者が不思議にも思わないし疑いもせず、ましてや大規模な実験も実証もしないのであるから、科学哲学者であるわれわれにこういう酷い侮蔑を書かれても当然のことであろう。できもしない、証拠もないことを東大出版会や有斐閣といった大手の出版社から出ている大学の教科書に一世紀くらいに渡って書き続けているのだから、あたりまえである。

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