Scribble at 2022-07-08 11:32:43 Last modified: 2022-07-08 12:43:07

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まだ Windows 11 はリリースされたばかりですし、Windows 10 もサポート期間は続きます。あせって Windows 11 にすることはないと思います。

あせって Windows 11 へアップグレードしなくても大丈夫です

結局、プロの情報資産管理者というレベルでソフトウェアの運用方針を設けたり、ソフトウェアの変更管理もしていない素人が、こういう適当な記事を乱造してるから多くの人が混乱するわけだよ。この記事で Windows 11 に焦ってアップ・グレードする必要はないと言ってる理由は、簡単に言えば「まだ Windows 10 が使えるから」というだけのことにすぎない。それはそうだろう。そんなことは、こんな記事を読まなくても多くの人が知ってることだ。でも、同じように多くの人が困っているのは、その変更について、(1) どういう条件で変更できるのか、(2) それがいつなのかをどうやって決めたらいいのか、という方針とか見通しが立てられないことにある。そして、何の資格も実績も経験も知識もない SEO の小手先テクニックしかないブログ書き風情には、そういう方針や見通しを立てるだけの学識も経験も技術も、そしてそういうことを伝えてこそ多くの人は納得するのだという、読んでいる人のことを考えるという誠実さもないのだ。

敢えて言うが、こんなものが何百億ページと公開されようと、人類の知恵や叡智なんて 1mm も進展しない。ゴミが無数に積み上げられようと、そんなものが「集合知」になるなんて御伽噺はありえない。ゼロは無限に足してもゼロなのだ。むろん、そういう「コンテンツ」とやらが負の整数であることが自明なら、それを無数に足し合わせた結果は中学生でも分かる。

ということで、まともなアドバイスとはどういうものか、この手のオンライン・ゴロツキに代わってプロがちゃんと説明しよう。まず、上記のように「焦る」とかそんなどうでもいい主観的な言葉でこの手の作業を考えたり議論してはいけない。相手はしょせん機械であり、機械で動くソフトウェアの話である。こちらが焦ろうと焦るまいと結果は何も変わらない。ここで前提として幾つかの事実を出しておくと、

・Windows 10 は、2015年7月29日にリリースされた基本ソフトウェア(OS)である。

・OS はパソコンでアプリケーションを利用する際に必須のソフトウェアである。

・Microsoft Windows に限らず OS は一定の期間を経ると改定されている。(逆に言えば、アップ・グレードできない OS など使ってはいけない。)

・OS のアップ・グレードは、ハードウェアの要件があって対応するパソコンが限られる。

・OS のアップ・グレードは、多くの場合に対応期限がある。(「無期限」とは「未定」の言い換えにすぎない。提供する企業の都合でどうとでも変わる。)

・OS にはサポートの期限がある。(セキュリティだけのアップデートは少し先まで続く場合もあるが、正式なサポートが切れた後は何年も続いたりしない。)

・Windows 11 は、2021年10月5日にリリースされた、Windows 10 の後継となる基本ソフトウェア(OS)である。

・Windows 11 へのアップ・グレードは無償である。(もちろんインターネット接続は必要。)

・Windows 10 のサポートは2025年10月14日までとされている。

・Windows 11 へのアップ・グレードは、いまのところいつまで(無償で)可能なのかは分からない。(Microsoft の "Upgrade to Windows 11: FAQ" というページでも、アップ・グレードの期限については言及されておらず、公式にも期限がまだ社内ですら設定されていないと思われる。)

ソフトウェアの変更管理という実務で考えると、もちろん変更することはリスクの一つであり、これまでにも OS やアプリケーションのアップデートでパソコンの動作に悪影響があったり、使えなくなるアプリケーションが出てきたりした。したがって、リリース直後の状況で多くのユーザが実際にアップ・グレードしてみて悪影響があるのかないのか、多くの事例が出てこない段階でのアップ・グレードは控えた方がいい。とりわけ、大半のユーザはアップ・グレードしようとするソフトウェアのソースコードを解析したり、テスト環境を用意したりなどしていないのだから、なおさらだ。僕らが何かの開発案件で外注のベンダーからプログラムを納品してもらった際に実施する「受け入れテスト(検収試験)」のようなことは、知識としても技術としても環境としてもやらないだろうし、できないだろう。納品されたプログラムのように、設計から挙動や出力内容・レスポンスに至るまで、受け入れる方が最初から仕様なり基準を持っていて自力で受け入れの可否を決められるなら、他社がどうであるかという比較そのものができないのだから、逆に言えば自分たちでプログラムを検収するかどうかを決めるしかないのである。Windows のアップ・グレードについても、大手や上場企業の情報システムを預かっている部署とか、それらの企業と取り引きしている事業者であれば、自前のテスト環境を持っていて、特定の業務で特定のアプリケーションだけをインストールしている、特定のメーカーのパソコンだけを使っているという、かなり特殊で固定の前提があれば、自力で OS のアップ・グレードについて影響を事前に調べて、特に問題がなさそうであれば自分たちの基準でアップ・グレードする時期を計画できるかもしれない。

なんにせよ、Windows 10 から Windows 11 にアップ・グレードすることが目的であれば、一つの指標は明らかに Windows 10 のサポートが切れる2025年10月14日である。そして、2021年後半や2022年中ごろ(いまこうして書いている時期)という段階で、Windows 11 へのアップ・グレードをするべきかどうかの判断を下すために、そうした大企業の情シスでもなければ体系的な変更管理のポリシーを持っているわけでもない、多くの一般ユーザが参考にできる考え方とは何であろうか。本来、このような話題を扱うときには、この話をしなくてはいけない。そうでなくては、2025年10月14日までのいつなら焦る必要がなく、いつ以降なら焦らなくてはいけないのか、そんな感覚的なことだけが理由では誰にもはっきりと何も言えないからである。

一つの分かりやすい基準は、メーカーから発売されるパソコンのスペックである。メーカーのパソコンは、もちろん大半が OS を最初からインストールしており、Windows 10 をプレインストールしたパソコンが新製品として発売されなくなり、新製品が全て Windows 11 をプレインストールするようになれば、それはつまり Windows 11 の動作要件を満たすハードウェアでパソコンを組み立てるフローが各メーカーの工場で確立しており、安定して製造し始めていることを意味している。これは、おおむね不可逆の現象であり、メーカーが古いバージョンの Windows で新製品を組み立てるフローに戻した事例などない。これを調べるには、メーカーのサイトへ行って全ての製品の OS を調べる必要などなく、製品を検索するだけでいい。Windows 11 をプレインストールしたパソコンしか提供していないなら、そもそも検索条件として Windows 10 は選べないからだ。そして、2022年7月8日の時点で言えば、たとえば Dell Technologies のサイトでは Windows 11 のパソコンしか検索できないので、もうこの条件を満たしていると言える。もちろん、新商品が全て Windows 11 を組み込んで動作できるように発売されるようになったからといって、〈あなたの使っている〉パソコンを Windows 11 にアップ・グレードして正常に動作するとは限らない。しかし、少なくとも動作要件を満たす部品とソフトウェアでパソコンを組み立てたら、製品として出荷できるていどに安定しているという参考にはなる。

次に、あなたがメーカー製のパソコンを使っているなら、もちろん購入したメーカーの公式サイトで Windows 11 についての動作検証が報告されているかどうかを調べることである。たとえば Dell Technologies のサイト(Dell の宣伝ではない)には「文書番号: 000187485(Windows 11へのアップグレードがテスト済みのDell PC)」と呼ばれるサポート情報のページがあり、既に発売されている製品についての動作検証が報告されている。こういう情報があって大きな問題が報告されていなければ、原則としていつでもアップ・グレードしてよいと考えていいだろう。なお、「自作パソコンはどうすればいいのか」とか「BTO のマシンはどうするのか」という質問については、敢えて答えない。自作や BTO でパソコンを購入している時点で、特殊な環境で運用していることは納得済みだろうと思うからだ。好き勝手に部品を選んでおいて、後から特殊な条件での利用もサポートしろというのは、自作パソコンや BTO のパソコンを使う資格のない、自意識でハイ・スペックなマシンを使っているだけのヘタレであろう。そういう人々は、是非ともリスクがあると知ったうえでアップ・グレードしてみて、痛い目に遭うなりして経験を積むとよいであろう。

三つ目として、Windows 11 の動作要件も適合していて、メーカーのサイトでも動作が検証されているマシンをあなたが使っているとして、アップ・グレードするべきかどうかをどう決めたらいいのかという点については、こんなことを問うこと自体が愚問であると言っておく。やみくもにアップ・グレードして不具合が出ると困るから慎重にというなら分かるが、その場合でも不具合があるのかどうか、これまでに説明したような情報が既に揃っているのであれば、その時点からアップ・グレードして何の問題もないわけである。それが「焦って」いることになるかどうかなど、誰が勝手に決められるだろう。要するに、アップ・グレードするための条件として何も懸念が残っていないのであれば、後は「いつやるか」という日時を自分の生活や仕事などの事情に合わせて自分で調整するだけのことでしかない。おおむね、Windows 11 へのアップ・グレードに要する時間はパソコンのスペックやインターネット回線の速度などによって色々と異なるが、遅い事例でも2時間ていどとなっている。僕が会社と自宅で使っている2台のデスクトップ・マシンでは、おおよそ1時間ていどだったと思う。Windows 10 から Windows 11 への移行では、特にアプリケーションのライセンスを入力しなおすとか、データをどこかへ退避しておくとか、そんな必要はない。また、OS そのものがまともに動作しなくなるといった事故も殆ど報告されていないので、使っている周辺機器を全て外しておいて、改めて接続するときに Windows 11 用のドライバがあるかどうかを確認してみて動作を検証すればいいていどだ。もし周辺機器のドライバが Windows 11 に対応しておらず動作しなくなって、生活なり仕事に重大な影響がある場合は、もちろんアップ・グレードして10日以内は Windows 10 をリストアして巻き戻せるため(そんな対応状況は事前に調べておくべきだとは思うが)、いったん戻してもよいだろう。必要な周辺機器のドライバが用意されない状況が続くようであれば、もちろん Windows 11 へのアップ・グレードを暫く見合わせるというのも一つの選択だ。

ともあれ、以上で述べたように、自分の使っている環境について知っておくことと、どのアプリケーションやどの周辺機器が使えなくなると困るという、道具ごとの重要性を評価しておいて、Windows 11 への対応状況をアプリケーションや周辺機器のドライバについても調べておくのがよい。そうしたうえで、自分の使い方という特別な(かもしれない)条件でアップ・グレードして何か悪影響が出た場合に、どのアプリケーションや周辺機器が動かなくても容認できるのか、あるいは容認できないのかを決めておくことである。

こういう話をするときに、多くの書き手は、問題なければそのままで良いという意見を無批判に維持しているものだ。確かに、そういう方針で大昔に実装されたアーキテクチャのソフトウェアとか情報システムを延々とメンテナンスし続ける金融機関や自治体や軍隊が多いのは、どこの国でも似たようなものであろう。いまの環境で新しいアプリケーション(それはアップ・グレードした後の Windows に最適化して開発されているかもしれない)をどんどんインストールするわけでもなく、あるいは新しい OS に対応するドライバが提供されているとは限らない周辺機器を使い続けるのであれば、いま問題なく使えている OS を使い続けて何が悪いのかというわけである。しかし、それは OS が有償だった頃にアップ・グレードしないと言っていた人々の言い訳を、異なる状況でも言っているだけのことである。OS をアップ・グレードすることに、ドライバやアプリケーションの動作という点で懸念がないのであれば、完全に一から書き直したわけでもない OS にアップ・グレードすれば、少なからず旧版での問題が改善していたり、それなりに有用かもしれない新しい機能が組み込まれていると期待できる。そして、アップ・グレードできる条件が揃っている限りは、そのパソコンを使い続けるなら OS をアップ・グレードしておかなければ、そのうちアプリケーションが旧版の OS に対応しなくなってくる。問題がなさそうなら、アップ・グレードはセキュリティ・パッチの適用と同じく、できるときにやっておくのが望ましい。逆に、アップ・グレードしてもしなくても問題がないなら、どうしてアップ・グレードを先延ばしにする必要があるのか、逆にその理由を聞きたいくらいである。要するに、面倒臭いだけではないのか。

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