Scribble at 2021-10-13 16:47:11 Last modified: 2021-10-13 16:53:30

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職場、家庭、地域社会などあらゆる場面で、人はリーダーシップの問題に直面します。では、どうすれば理論を身につけて実践にうつせるのか? いままでのやり方を反省し、持論を構築したい人のための画期的入門書。

金井寿宏『リーダーシップ入門』(日本経済新聞出版、2005)

本書は、腰を据えて読んだ方がいいというタイプの入門書だ。リーダーシップについての学び方という助走段階の話からして60ページ近くまでかかるし、そもそもリーダーシップについての「入門」とは何かという議論が冒頭の30ページを埋めているため、気軽に何か得ようとする動機で手にとった人の8割くらいは、この第1章を読み終えずに放り出してしまうだろう。内容は充実していてカスタマー・レビューも良好なコメントが多いけれど、途中で放り出した人ほどカスタマー・レビューにいちいちコメントなんて書かないため、現実の売れ行きと recommendation システムでの〈生存バイアス的に偏った評価〉が食い違うのも当然のことだろうと思う。

もちろん「使う本」を意図して書かれているため、使えるものはなんでも紹介しているという総覧的な内容で、はっきり言えば著者自身の見識がどうであれ資料集として使うという割り切り方をしている人も多いようだ(そういう点だけで高い評価をアマゾンのカスタマー・レビューで与えている、それなりに正直なレビュアーもいる)。よって、本書はざっと通読して古本屋へ渡すようなものではないのかもしれないが、逆に僕はこういう本こそさっさと売り払ってしまおうと思う。なぜなら、こういう資料的な価値〈しかない〉書物なら、必要に応じて後から幾らでも誰かが同じような目的で書いた本でも足りるからだ。ウェルチはこう言いました、ミンツバーグはどう議論しましたという〈事実〉の記録を手短に要約してくれるような本であれば、はっきり言って修士課程レベルの学識があれば誰でも書ける(実際、僕も著者と同じ神戸大学で PhD の学生だった頃に、その手の総覧的なレポートであるサーベイ論文というのを書いていた)。確かに、本書には多くの研究者や経営者との交流という経験にもとづいた記述もあるため、それらは学生だと書けない話ではあろう。しかし、しょせんそれらは属人的な人間関係だけで成立する「お話」にすぎないと切って捨てることもできる。

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